ちっちゃくておっきなせんそうごっこ
近くて遠い戦争ってタイトルにしようかとおもいましたが馬鹿馬鹿しくて子供っぽい理由ですのでこのタイトルにしました。
賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ。
ビスマルクはかつてそう語った。
過ちは繰返しませぬから。
原爆ドームだかの文章で誰かが書いた。
しかし僕から言わせてみれば、そんなもん嘘だ。
経験したって人間は学ばないんじゃないか?
そう逃避的思考を考えながら、若い学生はデトコードを二重で撒いた爆薬を設置した。
スイッチを押す寸前、彼は呟いた。
「この経験から学べるくらい生きん残れるのか?」
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アッツ近海を堂々と浮上して進むアメリカ海軍原子力潜水艦<アラバマ>は、あの日以来誰も彼もが神妙な面持ちでいる。
ハワイ近海でロシアの定時挑発を仕掛ける潜水艦ときゃははうふふの日常は、いまや互いに平文で話し合う関係になった。
基本戦闘艦艇は乗員以外を載せれない、規則云々ではなくスペースの問題だ。
従ってパニック以前に出港した軍艦、それに乗員の少ない天然ガス輸送船やタンカー、貨物船は罹患とは無縁であった。
最も民間船舶は漂流者を救助した際の罹患や、海賊の襲撃、そして何より燃料や食糧問題があり陸に上がっている。
軍艦の小型舟艇も同様に海賊になるか、海賊を締め上げてピンハネするか、諦めて陸に逃げる選択肢を選んだ。
しかし潜水艦はそのすべての選択肢から無縁でいられた、燃料棒再充填施設が必要になる暫くの間は水も空気にも困らないで暮らせる。
「艦長!EAMであります」
通信士官の言葉に、艦長は不機嫌そうに言った。
「言って良い冗談と悪い冗談があるぞ、我々はSACの|BFFA《デブでとろくてどんくさい不細工》なB-52ではない」
艦長はため息をついてそう言った。
EAMは正式にはEmergency Action Messageと呼称されるもので、基本NCCS(核兵器指揮統制システム)だ。
そしてそこから出るのは核攻撃命令だ。
いまさらワンモア広島長崎なんかなんの意味があるって言うんだ?
艦長の考えは原子力兵器運用の権限が与えられるだけの正常さで、極々全うな正論を心のなかで呟いた。
だかしかし、通信士官の表情はこの上なく悪いのを観て、それが事実であると気づいた。
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上院議員に、ある男がいた。
敬虔なるマッカーシズム及びフーバーの信奉者にして、黄色人種のニタニタ笑いとロシアの白熊、そしてアラブの髭どもを軽蔑して止まぬ男だった。
彼はアメリカの昨今発足、成長著しい右翼団体13の祝福の古参幹部だった。
彼はあの時、南部でレッドネック(白人肉体労働者)たちによって構成された民兵の会合のゲストだった。
いまや彼は、サクラメントで勝手に瓦解した(正確には西部諸州に敗北した)連邦政府の代わりに、アメリカ連合国を立ち上げている。
そして、アメリカ南部にある町があった。
名をケープカナベラル、宇宙開発基地にしてアメリカの衛星通信とアクセス可能な要所である。
彼はこの事態が憎き敵国が一致団結した結果だと信じている。
敵国が自国もろとも偉大なる合衆国に対しての攻撃をしたと心から信じている。
初期の混乱のなか、彼は盛んにこれが敵対勢力の攻撃だと叫んで抵抗運動を組織していった。
彼の行動の目的はさておき、事実彼の武装集団は生き残った。
アイオワ州を首都にして各所の州軍やレジスタンスを糾合して拡大しついに各所で人類の生存権を守り抜こうとしていた。
最も彼の言う人類は肌の白い者を言うのだが。
かくして自称大統領は、ある命令を下した。
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現内閣総理大臣、或いは臨時政府首班と日本で呼称される男は極めて極々全うなシビリアンの政治家である。
民主国家の、民主主義に恩義を感じ、地元を想う。
無能だが取り立てて悪いところはない、専門家の言うことを聞くことの出来る程度に人格的。
まさしく民主国家のトップに素晴らしい逸材である、総理大臣の浪費を重ねて98人目、いよいよ総理SSRピックアップガチャに勝利したといえる。
そんな彼は紆余曲折の末(田舎に帰省中パニック発生、石狩で孤立してた所を自衛隊が確保)にこの地位となった。
事実上の北海道の統治は知事の管轄で(国の介入は必要な稟議書と印鑑の亡失により中止された)あるため、残存自衛隊の最高指揮官程度の扱いで必要な要望を国の予備から引き出すための装置になっている。
が。
それを安穏と呼称出来る情勢である異状事態たる世界は彼に知らなくて良いことを知らせた。
西海岸の分離主義勢力以外に四分五裂したアメリカなる幻想の塊にして蜃気楼は、突如思い出したように道北に核をぶちこんだのである。
SLBM3発による同時攻撃で道北は壊滅した、そしてそれを聞きながらそれより驚愕する事実を彼は聞かされた。
脱出に成功した空幕長は、正当な権利たる報復核攻撃を提案した。
「バカな、我が国に核が有るわけ...アメリカのがあるか」
総理大臣は納得したが、空幕長は自慢げに言う。
「いえ、80年代物の水爆があるのです、バブルの遺産でありますが」
「なに?非核三原則があるじゃないか」
彼は米軍の核兵器持ち込み事態は苦々しく理解していたがこれは狂気的に思える。
なまじ現実味ある最もらしく、そして平然とそれを実行する軍人なる存在に。
それを恥じる処か嬉しげにその制服を着た気狂いは唆す。
「おやりになるのです閣下!大陸赤色中国は瓦解して内戦、ロスケのクマキチは烏合、台湾の恩知らずは臨終。
面倒な朝鮮のキチガイといつ裏切るか分からない半島国家、インドシナやインドネシアの土人も何も出来ません。
さぁ1945年の8月6日以来の屈辱を!!汚名を!!漱ごうではありませんかッ!!」
狂ってる!世界もコイツも!
「さぁご決断を!」
総理がどもりつつ、ある言葉を言った。
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太平洋沖を進む海上自衛隊戦略潜水艦あらしおは、北海道政府からの指令を受け取った。
艦長はそれを見ると、力強く握りつぶした。
「だからアメ公なんか信じちゃいけなかったんだ!」
そう言うと、発令所からマイクを手に取った。
《こちらは艦長である!ただいまより重大な命令と通達を行う。
先ほど幕僚本部より、稚内、天塩、音威子府がアメリカ軍による無断の核攻撃を受けた。
これに対し、当艦はアメリカ軍核戦力に対しての報復核攻撃を実施する!》
あらしおがそうしたように、三隻のSSB(戦略潜水艦)が全面攻撃を開始した。
一隻につき12発のセイルからSLBMが射出され、アメリカ軍主要施設に降り注ぐ。
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ムルマンスク近海のウラル級電子情報偵察艦の臨時ロシア政府司令部は、突如出現した輝点に驚愕していた。
四時間前、唐突なMRBMがグアムから日本に飛んでいき、突如太平洋沖の三ヶ所からSLBMがグアムやミサイルサイロに飛んでいる。
訳がわからないのは米本土からICBMが発射されていることだ。
ともかく応戦命令を出したが、米ロともに保有核攻撃戦力の1割に満たない。
中国軍が開戦時にアメリカの衛星にASATぶちこんでケスラーシンドロームを局所的に作ったし、ロシアの場合衛星通信中継施設が崩壊したのでサイロも施設要員も無事だが孤立している。
唖然。
その二文字しか彼らに道はなかった。
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小さくて大きな戦争ごっこは、互いの国土を熱い灰と炎で汚した。
ロシアはMIRVを条約無視で運用し、自国の手によって焼かれたアメリカ東海岸ではなく、中部と南部、そしてカナダ国境の近くを焼き払った。
西海岸の諸州自称"新カリフォルニア共和国"は、ただただ焼き払われる大地をロッキー山脈から見ていた。
アメリカ第七艦隊と第5空軍は、ある意味1945年以来のツケを支払う事となった。
彼らは冷戦時代に提供した核兵器によって焼かれる事になったのである。
ロシアはノヴォシビルスク等の中央アジア地域に手痛い攻撃を受けた。
しかし迎撃に対空核兵器を運用した彼らは欧州地域の喪失を辛うじて回避した。
小さくて大きな戦争は、使用した核兵器は多くて700メガトン少なくて200メガトンと言う非常に曖昧な記録で遺された。
だが熊野達がこの事を知るのは暫く後の話だ。
中国東北部は当時雨で汚染が日本に到達する頃には殆ど毒性が消え失せており(半減期)、アメリカに大量に叩き込まれたMIRVの汚染等はジェット気流でそもそも流れてこない。
斯くして東の小さな島国は、ある意味神風に救われた。
最も今度は誰にも祈られていないが。
現在のアメリカ解説。
なんで分裂してるかと言うと大統領が有事における憲法停止を宣言したのと、罹患者の脅威より連邦政府の暴走と言う現実的脅威(と当時は認識していた)のせいです。
因みに本文中にありますが東海岸はアメリカ軍の核攻撃で焦土です。
アメリカ合衆国(チャールストンを臨時首都と言い張るのなら)はウェストバージニアのホテル地下のシェルターを司令部に連邦正規軍を指揮しています。
ですが大統領といっても都市再開発長官ですのでとりあえずのお飾りに過ぎません。
ダラスを首都とするアメリカ連合国はヒューストン等も解放しました。
ですが過激派分離独立派閥である彼らにメキシコは本気で殺意を抱かれています。
新カリフォルニア共和国は日系と中国系の中心で構成されています。
元々反差別を自称する糞のフェミニストと右翼のバカ共を嫌って西に逃げており、連邦政府の憲法停止宣言によって彼らは独立を宣言しました。
カリフォルニア、ネバダ、ワシントン、オレゴン、アイダホが加盟している。
100年前の亡霊です、デトロイトを中心に独立を宣言したIWW(工場労働者の世界)です。
失業労働者の多い五大湖工業地帯に発生したこの共産アメリカは連合国と並び連邦政府と戦争をしています。
またカナダとも戦争をしています。
本当はNCRじゃなくて、ノートン二世朝アメリカ帝国(立憲君主)にしようかと思ってた。




