10日目、たのしい調査兵団の部2
神州、秋津の名前は陸軍輸送艦あきつ丸神州丸の二隻から引用。
白鷹と不知火は第9戦隊艦船から引用。
山彦、暁、鶴見は何かの艦艇だったと思うよ、基本的に艦艇から引用していますので。
ショッピングモールの屋外駐車場に到着したとき、熊野は流れ星を見つけた。
「お、流れ星だ」
遠く大陸の方に飛んでいく流れ星、彼が本当はそれが何であったかを知ることは当分先である。
一行の車列は停車し、これから向かう伏魔殿を良く目に焼き付けている。
地上四階立て、地下二階のこのショッピングモールはあまり出掛けない熊野でさえ行ったことがある。
「気を付けろ、多分居るぞ」
「誘導したんじゃないんですか」
熊野は聞いてみたが、言った白鷹は「ウヨサヨの屑と同じくついてこないのも居る」と返した。
確かに熊野の経験にも、誘導を無視した罹患者はいる。
それにただ単に引っ掛かって誘導されてない、なんてケースもあり得るだろう。
パニックの起こった際は開店時間だったのは、駐車場の並んだ車の数などで分かる。
「くそっ!居たぞ!」
赤色のタンクトップに半ズボンの若い女子高校生だった様子の罹患者が出てきた。
不知火が64式を構え、息を吐いて一発撃った。
メインエントラスから出てきた罹患者は、後頭部を大きく喪失して倒れた。
白鷹は「五分待つ、音に寄って出てくるだろう」と言い、銃列を展開して中に居た罹患者を待ち伏せる。
そして予想通りに罹患者が出てきた、だが出てきても噛みつく距離まで大分開いている。
何故か走らない様子の罹患者は、さながら作画の間に合ってないロボットアニメの雑魚のように倒れていく。
「...走りませんね」
「昨日辺りからそうなんだ、一部は走るんだがな」
白鷹はメモ帳を見ながら言った。
「なんですそれ」
「特に必要な物資の一覧だよ、香辛料や調味料とか医薬品」
三分ほどして、銃声が止んだ。
罹患者は明らかに出てこない、残るは未稼働の遺体。
ざっと30かそこらだろうか?終わった頃には不安感は少し薄れた、そう、撃てば死ぬ。
当たり前の摂理だ、どっかの国のライフル協会では無いが"銃は死んでも手放さないぞ!"、弾丸はすべてを解決する!。
少し希望が沸いてきた、確かに遅れは取ったが我々は事態を解決できる!
ー
メインエントラスに近付くと、自動ドアが開いた。
電気が未だに生きている、生鮮食品はまだまだ現役だろう。
しかし血痕等が残るモール内部を見るとそんな気も失せてしまう、廊下の曲がり角から見える倒れたベビーカーがどう言う惨状か考えたくないし、
嘗て誰かの腕だった肉がスマホと共に転がるような惨状を見て肉やマグロを食いたいと思えない。
特にきついのは臭いだ、既にパニックから6日か一週間を越えている常温保存された肉がどのような臭いを発しているか。
最早文字として五感として認識などしたくない。
「...ひでぇ」
誰かが呟く。
不知火は耐えきれず嘔吐し、神州は嫌そうな顔をした。
秋津は「うわぁ」と呟いたが、顔色を変えなかった。
こう言ったグロ肉スカルチノフ的光景は警察官のが耐性があるらしい。
メインエントラスを通りホールに入ると、白色のテントと救急車の簡易的医療設備があった。
警官隊が居たのか、弾痕に空薬莢、それに幾つかの遺体がある。
「まぁあァじぃ」
「ぎゃはハは」
血走った瞳で現代風の若者が二人、手首と足首を手錠で抑えられて拘束されている。
多分数人がかりで取り押さえたんだろう。
遺体袋も幾つか動いており、動いてない遺体袋は穴と血痕がある。
「始末しますか」
「弾薬の無駄だ、檻の中の獣にちょっかいかける子供が居るわけでもなし」
白鷹は館内地図を眺め、放送室に向かうと告げた。
「なんで放送室を?」
「関係ない別のところに音を出して引き寄せるんだ、囮になるだろ」
「銃も弾薬も有るのに?」
「一々サバイバルゲームのように撃ってられるか、常日頃は弾薬を惜しみ事あらば一撃必殺が日本の兵隊さんなの!」
後半はただの愚痴じゃないの?と思いつつ熊野は納得した。
確かに一々相手になんかしてられない、そらそうだ、数では絶対負けているんだから消耗戦なんかしてはいけない。
エスカレーターを完全武装した男たちが上ると言う極めてシュールレアリズム的な行為を大真面目に実行することに、秋津は苦笑した。
非常階段は疲れるし、エレベーターはいざというとき逃げれない。
管理用と思わしき通路を通ると、ダンボールが不自然に積まれたドアがあった。
ドアには"開けるな、死者がいる"と走り書きされたチラシがあり、どういう事か理解した。
「そう言えば、ここの生存者は居たんですか」
「俺の知ってる限りここが爆心地だ、逃げ出したはずだ」
前衛の神州はP225拳銃を構えながら言う。
そうだろうか?熊野はふと想像してみるが、居るなら屋上だと考えていたのでそれなら銃声を聞いて顔を出すと結論付けた。
目的地の放送室に到達し、館内地図を見ながら端末を弄りだす。
説明書が無いので直感と勘の導くままそれっぽくいじってみると、ちゃんと成功した。
Way Back Homeが流れだし、ちゃんと目的地から遠い服屋近隣にのみ流れている。
「こちらマザーグース1からスカル1へ、作戦第二段階発動」
『了解、お土産に期待』
「銀蝿するなよ?」
白鷹が車両部隊に連絡し当初の不安と裏腹に、作戦は次の段階に移る。
次は白鷹が警備室に入り、館内を管制し指揮をすることだ。
警備室に鍵をかけて無線を確認する。
『マザーグース1から全ユニット。
お財布握りしめてお買い物の時間だ、たのしいショッピングを始めるぞ』
「りょーかい!」
何だか楽しくなってきた。
そう思いながら熊野は、カートを用意した、楽でいい。
同じくカートを押す呆れた顔の神州と、そのカートに座ってVサインする不知火と言うカオスさで真面目に戦争ごっこをしようとは思えないが。
実は誕生日です、高評価いれて(がめつい)




