9日目、午前の部3
最終回まであと3.5日。
同じ時間軸で番外編を書いてみたいような
佐賀市に入ると、罹患者が一体現れた。
ブレザー等の格好を見るに、学生だったのだろう。
右腕がない女学生でやはり速度は早くない。
「お、出たぞ」
「点数幾つだ」
乗っていた自衛官たちが笑いながら照準眼鏡を着けたM1を構えた。
クリップが飛ぶ高音を出して、熊野を誤射した自衛官が横で双眼鏡を構えてる自衛官に尋ねた。
「点数はそうだな、のろまで脆そうだから一点だな」
「クソッ、ケチんなよなぁ」
熊野は暇そうにM3グリースガンを構えてる自衛官に聞いてみた。
「点数って何だ」
「文字通りの意味、集めて楽しいマイルって訳」
「ふーん、市街を突っ切るつもりなのか?」
それを聞くと質問された自衛官は大笑いして言った。
「連中は七割方封じ込めた、それ以外はアッチのほうに行ったよ」
「福岡方面?何でまた」
「どっかの馬鹿が福岡で救援やってるって噂してな、8日位前だ」
「残りの七割はどうやったんだ」
意味深に笑い、その自衛官は遠くからでも見えるサッカースタジアムを指さした。
「その内分かるぜ」
「封じ込めたのか」
またGAANと銃声が響き、罹患者が倒れる。
やはり反対車線は事故車と渋滞ばかりだ。
「こちらチェックメイトキング・ツー!チェックメイトキング・ツー!
ホワイトルーク。ホワイトルーク応答せよ。
救助者五名確保、子供1P2C2。
現在までの損害0、帰投中。送レ」
自衛官らしくないゆっくりした口調で無線を送っており、返答の無線は若すぎる声だった。
《こちらホワイトルーク。
了解。送レ》
「子供?」
秋月が首を傾げて言う。
「聞いて報告するなら馬鹿でも出来る、子供とはいえただ飯は許されん」
「そらそうだわなあ」
市内に入ると混乱の痕跡がそこかしこに転がっている、動かない死人が幾体もあり、適当に一塊にしてある。
空港に続く道は一本を残してトラックとコンテナを積み上げてバリケードにしており、残った一本は土嚢を積んだバンカーがある。
バンカーにはガスマスクを着用した警官や自衛官が見張っており、驚いた事に74式戦車が擬装網をかけておいてあった。
近くには雨合羽に漁網をくっ付け更に草木を着けてギリースーツをでっち上げた基地警備隊が見張っている。
ー
滑走路は幾つか大穴が空いている、中国軍機が一機突入してきて滑走路ぶっ壊したそうだ。
管制塔や格納庫、駐機されてた貨物便等は無傷で残ってるし、燃料もタップリある。
空いた大穴を畑に改造して、子供が作物を見ている。
若い女性等はオペレーターや調理担当に、子供は畑に鋤を打つ、青年らはフェンスの見廻りをする。
正規兵たちは物質捜索に市に入ったりするようであったが人員不足で10人に何人かは民兵らしい。
「すげぇ武装ヘリコプターだ」
誘導路には武装したCH-47が三機あり、見た目はベトナム戦争で運用されたバンバンバードことACH-47のごときである。
細かな武装は違っているが、20mmやハイドラロケット弾を吊り下げている。
他にもM42対空戦車やM16ミートチョッパーもあるが、どうみても古くさい。
「地球防衛軍って映画思い出すなあ」
「サンダ対ガイラだよ」
水冷式機関銃がさも当然の如くそこにあり、真面目に軍役についていらっしゃる。
あんなもん初代ゴジラや地球防衛軍の時代でさえ旧式扱いだろ、嘘だろオイ。
文月がやさぐれた顔で言う。
「トイレットペーパーとインク代が自腹で寝台も毛布もクソの自衛隊ですから...」
「ぶっちゃけ空港の寝台借りてるのがマシだよ...」
載っている自衛官達が皆気落ちしたような声と様子を見せる。
明らかに士気が低い、まあ高い給料ならともかく安月給でクビになる心配が無いけど危険手当ても安い軍隊ですらない自称合憲武装勢力だもんな。
こんなクソのごとき国と国民と腐った民主主義の為に命を省みず活動しろでも憲法的にアウトとか頭おかしいわ。
ー
防疫の為テントで衣服ごと薬剤をぶっかけられた。
お陰で全員真っ白だ、効果があるのか知らんが無いよりマシ程度に考えよう。
空港格納庫の1つは赤十字が書かれた大きな布がかけられており、医療関連だとわかった。
入って早々熊野達は民衆に囲まれ、身内の情報を知ってないか聞き出そうとした。
しかしその全てに知らないと答えると、気落ちして何処かへ戻っていった。
「情報化社会って崩れると脆いんだな」
港の方にしらね型護衛艦が浮いている、フィリピン海軍が購入した嚮導駆逐艦レイテだ。
確か来月だか再来月に引き渡しで今は公試とフィリピン軍人の習熟訓練中だと言う話だ、お陰でパニックにならずに済んだのだろう。
他にも掃海艇や輸送艇が幾つかと、米軍の給油艦がある。
なるほどだからヘリコプターを飛ばせたのか。
「すげー戦闘機だ」
日の丸が描かれたF-35Bが2機、まるで邪魔者のように格納庫に置かれている。
「飛べない鳥だよ、飛んでも意味無いがな!」
そう言いながら、大柄で体格の良い軍人らしい男が現れた。
顔の堀りが深く熊のごとき体躯をしている。
文月を見るとその男は暫し「誰だったっけ」と記憶の棚を開けながら粒やき、言った。
「あぁ思い出した文月か!」
「ど、どうも」
女学院の話を思い出した熊野は話題を反らす為にリュックに詰め込んだ医薬品を引き渡した。
「どうも、酒匂博士からの物です」
「あ、君が無線の...待て!派遣した連中はどうなった」
「離散したか死亡しました、博士も...」
その男は理解し、金剛一等陸佐と名乗った。
パニックに際して偶々佐賀市の地方協力隊本部に居たので空港臨時守備隊指揮官の任についたそうだ。
熊野は今まで思っていた疑問のひとつを尋ねてみた。
「ところで、えらく今回の事態で動きが早かったですね」
すると、周りを少し気にした声で衝撃的な一言を言った。
「クーデターだ、武装決起だよ。
東京の第一師団等が政府を転覆させちまいやがった」
は?
第一師団等の東部方面隊「もう政府なんて信じちゃダメ」
西部方面隊「各連隊各個に応戦!中央の指示?知るかクソッタレ!」
東北方面隊「ご臨終」
北部方面隊「戦車で皆轢き殺してやる!」
中部方面隊(静かに息を引き取る)
自衛艦隊「主力艦艇喪失、壊滅」
航空自衛隊「千歳などに集結して戦術機を再編、戦闘飛行隊再編中」




