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8日目、午後の部3

市街脱出。

遅くなった理由はお空の戦場でふぎむにと遊んでたり、タンコフから大脱走したり、狂平等物質で往く銀河革命とかのせいです。


我々が家を出ようとしたその時、町中からPAMPAM!と爆竹が弾けるような音が聞こえた。


「銃声だ、軽い音だから奴等かな」


文月が耳を澄ませて言い、熊野は首を傾げて「違いがよくわからん」と言うと更に銃声が聞こえた。

今度はTATAM!と連発して聞こえ、間を置かずに大きく響くDODADADAM!と重たい銃声が聞こえる。

それは嵐達のような正規軍の、重たい銃声である事を理解し熊野は若干焦った声で言った。


「ヤバイぞ、軍隊かなんかが銃撃戦始めたぞ」


原因には幾つか心当たりがあるが、どれもこれも信用がならない。

最早軍隊ではなく群衆に崩壊しているような、そんな連中かもしれないからだ。

生きるためには人間それまでの栄光も誇りも棄てる、孤立した軍隊は特にそうだ。

だが霜月は安堵したような顔をしている、事態を知らないのだ。

と言うより分かっていない、自分の眼で見ていない以上信じたいのだ。


「文月、音で何か分かるか?」


熊野は尋ねてみるが、文月は不安げな表情をして言った。


「自衛隊も韓国軍も同じ5.56mm弾ですし、中国だってそんなに変わりません、でも間違いなく警察が使うものじゃないです。

明らかに12.7mmかDashK機関銃みたいな重たい銃声が混じってます、車両が居るかも」


言い終わると同時にBAM!と炸裂音が聞こえた、手榴弾かロケット砲?もしかしたら戦車か?!

熊野はとりあえず逃げる事を選択した、この状況でキブミーチョコレート!なんて言って助かると思えない。

しかしこれはチャンスだ、彼らが大騒ぎしたことで市街の連中はそいつらの方に...。

え、ちょっと待って連中が来たのって長崎で、この先に有るのって佐世保だよね?

で店主の話いわく長崎荒れ放題で軍は統制を崩してるはず。

熊野は喉元で引っ掛かるような違和感を感じていた、そしてそれが判明したとき合点がいった。


そう言えば9日前にイギリスの揚陸艦と部隊が演習参加で来てたよな。


「まさか今度はイギリス軍か?」

「あっ」


文月がそれを聞いて、思い出した。


「そう言えば一昨日にイギリス軍と共同演習をするって話がありました」


おいおい薩英戦争(2018~)かよ。

なんと言う無秩序だ!



教会に帰還し、直ちに車両を確保して逃げる事を全員に連絡する。

J-SECの輸送警備車の鍵を霜月が持っているので、それで逃げ出す予定だ。

素晴らしき国策企業の車両だけあって装甲がちゃんと有る、一応拳銃弾とかに耐えれる程度の装甲があるから数ミリの鉄板並みの固さはあるだろう。

数ミリの鉄板程度と思うかも知れないが人間がどうあがいても壊せない限度はこれくらいであるから充分だ。


「派手だな」


熊野は感覚が麻痺しかけており、他人事のように言った。

この一週間殆ど銃声が聞こえない日が無かった気がする、私何時からシリア国民やドネツク及びルガンスクの国民になったの?

しかしこの町で隠れていた子供たちはかなり怯えている、のしろも怯えているが足取りに関してはしっかりとしているのが分かる。

酒匂博士は緊急時の教育をしっかりしていたのだろう。


「あー、やりあってる」


先頭の秋月が国道の大通りを渡る寸前で止まり言った。

銃声は軽いPAPAPAM!と言う音が聞こえる、通りを路上駐車の窓ガラス越しに見てみるとまるで別の意味で日本と思えない光景だった。

分厚いスペツナズ用のシールドのような盾を構えた緊急対応部隊が市街で銃撃戦をしている。


「うわ装甲車だ」


ウォーリアIFVがM2機関銃の重たい銃声をバラ撒きながら建物を熱したナイフでバターを切るかの容易さで撃ち抜いていく。

続いて暗視ゴーグルやチェストリグに目一杯食料を積め、ACOGを装着したL85A2を構えた英国兵達が進む。


Dammit(ふざけんな)AOisHOT(作戦区域にて戦闘発生)!」

「|FuckAssholeCrazysこのイカれたクソヤローめ!」


何だか分からないが彼方さんかなり精神的に追い詰められていらっしゃる。

絶対交渉ができねぇわ、確実に。


「固まって一度に全力で走るしかないです」

「え、危なくない」


文月の言葉に秋月は気後れしたが、文月は「子供が動けなくなります」とハッキリ言った。

大人だけなら楽なのだが。

振り替えってのしろを見ると、既に靴を確認して走る用意をしている、生きることに忠実過ぎるぞこの子。


「今!」


一斉に飛び出るとウォーリアの砲搭と兵士が気付いた。


Jeez(くそったれ)FireFire(撃て撃て)!」


30mm機関砲がバースト射撃し、子供が一人直撃して脹ら脛から上が"消えた"。

その事を誰も口にしない、皆考えてる事は同じだ。

"自分じゃなくて良かった"


「この先の通りに車が」


その通りは霜月たちと最初に出会った場所だった。

しかし何処かに向かっていた武装した罹患者達が、数メートル左でこちらを見つけてしまった。

秋月が「援護する!」と言い、霜月が車両に走る。

四人からのMP5の掃射が舐めるように行われ、射線の間にある有りとあらゆる物をうち壊していく。


「おっかねぇ」


熊野は伏せてつぶやき、後ろからはウォーリァのエンジン音とキャタピラの音が聞こえる。

到達した霜月が輸送警備車を動かし、事態に気付いた罹患者が一気に前進する。


「乗れッ!」


そう言うと一斉に全員が乗り込み、輸送警備車が一気に速度をあげて前進する。

しかし進路上にイギリス兵が現れ、最早見定める事すらなく射撃を開始する。

軍用小銃の5.56mmNATO弾が輸送警備車を貫通し、熊野の耳元をVUUNと言う風を切る何かの音が通っていった。

幸い機関砲弾は飛んでこなかったが、熊野は視界がボヤけてみえ再びしっかり見えるようになると思わず声を上げた。

乗り込んだ子供の殆どは掃射により死亡した、偶々前列に居た熊野達以外。

文月にのしろが見ないようにするよう指示し、町を出て少ししたら遺体を下ろす事を確認する。

何てことだ・・・。



熊野はその日の終わりを、遺体を運び出す事に費やした。

正直にいって抵抗しか無い、熊野は何度か嘔吐と失神の危機を迎えつつそれを終えた。

殆ど文月がやって熊野は役に立たなかったが。

すると秋月が拳銃を取り出し、路肩に並べた遺体と最早手遅れの子供に向けた。

助かる見込みがありそうなのは一人しか無かったのだ。


「これで、ちゃんと死んだ」


全員に撃ち込んで、彼女は言った。

放っておいたら奴等になるかも知れないのだ、ならなくても喰われるのは忍びない。


「ちっ、近くには対馬があるのにな」


海を見ながら、思わず呟いた。

車内に戻るとヘッドホンを着けて霜月が無線機を弄ってる。


「繋がるの?」

「微かに何か聞こえるんだけどねぇ...あ、出来た」


のしろと話ながら、霜月は耳を済ます。

しかし二分しない内に、霜月は「聞かなきゃ良かった」とため息をついて言った。

ヘッドホンが外され、無線の音量があげられる。


《こちらは日本国陸上自衛隊、対馬警備隊。

我が方に既に避難民を受け入れる余裕なし、当方一昨日の避難民に罹患者が紛れており物的人的損害大なり。

我、既に市民を保護する能力無し。事後接近する船舶無警告で撃沈する。

|nextspeakEnglish《次は英語で放送します》...》


何てこった。


婦警と緊急対応部隊に挑むほど義理はないので戦いません、当たり前だよなぁ?。

なおイギリス軍が組織的に戦闘している理由はパニック直後に日本から逃げようとしたけど燃料無いから祖国に帰れず、

数日様子を見て水や食料を集めに来ているからです、要するに初期の混乱を逃げ切った幸運な連中です。

初期案ではYS演習で来ていたカナダ軍の予定でした。


因みに欧米は罹患者をNonDead(ノンデッド)、中国は不死者と呼んでます。

要するにアンデッドの改変です、そもそもアンデッド自体この世界では存在しないけどな!

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