8日目、午前の部2
罹患者の台詞参考にTESシリーズのシェオゴラスお爺ちゃんの台詞聞いてるけどなんなのこれ(真顔)
一期一会のトゥルットゥー!
あと珍しく文月ちゃんが仕事します
DAM!と施設内に7.62mm弾独特の銃声が響いた。
火災警報が作動、撒水が開始されゆっくりと防火扉が開いていく。
振り替えって熊野はのしろに言った。
「よし、目を瞑ってしっかり私の手を掴んで走れるね?」
のしろはコクりと頷いて、目を瞑る。
無論助けてやる義理はないが、子供が居ると言う事は大きなアドバンテージになる。
それに喚かない子供だ、喚き次第見捨てるが。
文月がダクトを通って降りてきたので、予備のタブレットを経由して私の使っていたタブレットに電話をかける。
鳴り響く着信音に罹患者が寄りだすが、酒匂だけが動かない。
「やむを得ん、駆け抜けて車に走ろう」
一挙に部屋を飛び出して走り、防火扉の前で陣取る酒匂に近づく。
一瞬酒匂は躊躇う様な挙動を見せ、大きく狼狽えた。
無論此方が躊躇ってやる義理などない、階段を駆け上がり入り口の偽装ロッカーを閉めた。
足音に反応したのか下から大量の足音が聞こえてくる。
小屋を飛び出して辺りを見回すと、罹患者の姿は見えない。
正確に言うと黒焦げで足が無い操縦士や患者らしい罹患者がオスプレイの残骸から蠢いている程度だ。
「よし乗れ!」
行きと同じ車に乗り込んで、我々はその場を離れた。
ー
以上が四時間前のあらましだ、だが我々に問題が生まれた。
"ここどこ?"
そう、迷子である。
と言うのも車の燃料が尽きたのだ、良く良く考えれば昨日は完全にエンジンを切ってなかった。
そのため燃料が無為に消費されたのだ。
私があまり寝れなかったので、"九州で独占的権益を貪る某私鉄"のバス停のベンチに腰かけて目を瞑る。
正直、九州に暮らしていて良かった。
このバス停のダイヤは一日三本だが、チラシに書かれているのは昭和40年代後半である。
「すやぁ」
「よく寝れますねぇ」
文月の呆れたような声と共に、横で寝ている猫をふと見る。
人に慣れてる様子だが、近くに村落があるのだろうか?
我々の居るバス停は錆びれていたが、村なり町なり有るなら幸いだ。
低空を駆けていく空自のRF-4EJの馬鹿馬鹿しい位の轟音と共に、目を開けて辺りを見回す。
「人懐っこい奴だが、近くに人が住んでるのかねぇ」
「農家にでも可愛がられてたんでしょうか」
文月も同意見らしく、少し進んだところで国道と別れていた事実上の獣道と化した県道を見てみる。
だが見晴らしを見るに、数キロは何にも無いようだ。
人の身長で見渡せる視界に影も形も無いことを見るに、ホントに1~4軒があるかないかというところなのだろう。
そう考え、どうするか意見を聞いてみる。
「どうやらこの先数キロは無いっぽいけど、進むか?少なくともあいつらは居なさそうだな」
文月はしばし地面を調べ、慌てて首を横に振った。
「やばいです、ごく最近通った痕跡がありますよ」
熊野は首を傾げて尋ねた。
「なんで分かるんだ、私にはさっぱり」
文月は足跡と、草を折った跡、そして蜘蛛の巣を破いた痕跡を指差した。
「足跡に角がたってます、風化すれば丸くなるし、歩幅を見るに数人単位で通った誰かが居るようです」
「「凄いなあ」」
「まあ、仕事が仕事ですから」
文月は若干照れくさそうに言った。
結論は出た、このまま直進して国道を進む。
子供を抱えて対人戦なんか出来ないし武器もない、そもそも揉め事を回避したい。
いつ裏切って襲って来るか分からん肉袋より、明確な敵対者であるお腐り肉袋のがある意味信用できる。
従って我々は国道を進むことにした。
ー
進むこと約四時間、あまり大きくない市街が見えた。
それでも罹患者は出たらしく、放置された自動車が町への入り口を塞いでいる。
すると文月がまた足元を指差した。
「トラバサミですよ、それも擬装付きの」
紙袋と新聞紙が組み合わせた擬装付きのトラバサミがそこにあった。
罹患者相手に擬装が必要とは思えない、これは要するに"そう言う"目的なのだろう。
「...自衛の為かもな」
「牽制ですか」
「うん、見せ金みたいな感じがする」
適当な小枝でトラバサミを作動させ、無力化する。
噛ませた小枝が綺麗にザックリいった事に恐怖しつつ、通りを進む。
罹患者の気配や、焼け跡、物音がしない。
すると、突如放送が流れた。
『午後12時となりました~、現在小学校には六人ほど残っておりま~す』
若い女性の声だ、しかし罹患者の物音がそんなにしない。
普通音源に向かっていくだろう、もしかして小学校に殺到しているのだろうか。
だとするならこれは極めて素晴らしい、この隙にパクれるだけパクって出来れば車もパクってどっかに行こう、と言うか地図を貰っていこう。
「待って」
のしろが文月に言った、文月が振り向くと、のしろは「トイレ」と言い、熊野は呆れた顔で言う。
「トイレって、そこら辺でしといてよ全く」
「ロリでスカとか最低ですね」
「なにそれ」
のしろが首を傾げ尋ね、熊野はため息混じりに「そこら辺にトイレあるでしょ」と目の前のコンビニを指差した。
コンビニの窓は無事であるが、商品は殆ど残ってない。
ということは誰か達がここまで遠征してきたのか、一人が持っていけると思えない。
もしくはパニックを聞いた連中の買い占めかな。
「文月、近くで見張っといて」
「はいはい」
ロリに興味などない、あんなバタ臭そうなロリはどうでもよい。
コンビニ前で辺りを伺いつつ、終わるのを待つ。
すると掻き消される悲鳴がトイレから聞こえた。
何が起きたのか覗くと、文月がのしろの口許を押さえていた。
記憶が正しいなら彼女にそっちのケはないはずだ、ゆっくり近づいてみると文月とのしろの二人が青ざめた顔をしていた。
「うわッ...」
そこにあったのは、顔を剥がれて死んでいる子供の死体だった。
次回辺りから新たな罹患者、つまりチラホラ出ていた道具を扱える罹患者の敵が出てきます。




