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7日目、午前の部2

台風で見るもの無さそうな読者の皆様お久しぶりでございます。


「え?」


熊野達の第一声はそれだった、あまりに似つかわしく無さすぎたのだ。

その少女は縁側で三毛猫と戯れていそうな雰囲気をしており、あまりにこの施設と合わなかった。

一礼し、博士に誰か尋ねた。

博士は首を傾げつつ「私の娘だが?」と言い、少女は「酒匂のしろです」とお辞儀をした。

自己紹介をし、熊野は「よくまあここに連れてこれましたね」と言った。


「あぁ、先週までは俺が預かる決まりだったから」


そう酒匂が少し不快そうに言う。


「お父さん来てもいつも仕事だったのに、いきなり来いって言うんだもん」


少女は外の状態を知らない様だった。


「てことは騒乱になる前に来させたのか」

「あぁ、母親の方はカザフスタンだからな...」

「外国かあ、どうなってんだろな」


ふと口をついて出た言葉に、酒匂がギロリと睨みを飛ばす。

文月は咳払いして「ともかく匿ってくれてありがとうございます」と礼を述べた。

酒匂博士はあんまり好ましくないように「まあな」と言い、のしろはニッコリ笑って「いいよいいよ」と言った。

背丈から推察するにのしろは7歳程度だった。


「伝えてないんですね、外のこと」


熊野の呟きに、酒匂は胸元のポケットから煙草を取り出しながら言う。


「伝えてもな、NHKも昨日から放送してない」

「昨日までやってたのか」


熊野は意外だったので、思わず笑った。

酒匂は「一昨日位までは安定しつつあった」と言い、灰皿に灰を落としながら「だが横田基地から奴等がな」と不快そうに言った。

どうやら在日米軍がやらかし、東京はぐちゃぐちゃらしい。

酒匂は煙を吐き出して椅子から立ち上がり、二人に向けて言う。


「じゃとりあえず身体を綺麗にしてこい、そっちにちゃんと清拭出来る様してっから、ついでに少し除染してこい」



清拭と除染を終えて、割り当てられた部屋に入る。

使われた痕跡を感じないベットや机は元々空いていた事を語っている。

前居住者が居ないことにホッとしつつ、誰も使わないと余っていたタブレットPCを起動する。

自分のは破片か何かで防水用のパックが破れ、壊れてしまった。


「殆ど繋がらないなあ」


大手SNSは殆ど不通になっている、サーバーが死んだと言うより電線が寸断されたか、原発や火力発電所が停止して電力が止まったからだろう。

まあワンモア福一の精神で放置されたら困るからやむを得ない、仕方ない。

繋がるのは一部だけで、大手掲示板も死んでいる。

だが繋がる一部掲示板はかなり、どうでもいい雑談が多い。

最もこれは必然だろう、リアルで気軽に雑談出来る環境ではないし、ガス抜きと言う物だ。

人間一人では生きられないって名言だな。


「何処に逃げるべきかねぇ」


風向き予報を考えるに北九州方面は内部被曝が嫌なので除外、店主のオッサンの話だと長崎もアレなので除外。

熊本県や大分は自衛隊が多いが噂であるがかなり強引な軍政下、ともあれ検討の余地はある。

鹿児島方面はいくらなんでも遠すぎるし、熊本県を通ることになる、人目につかない道とかどう考えても八甲田山2018になる、嫌だぞ間抜けな二重帝国軍みたく山越えなんて!(*)

(*:第一次大戦で二重帝国は軍で山を越えようとして数十万人程を喪失している)


「まあ、ここに身を落ち着けるべきだよな」


これから数日は舞い上がった汚染物質がゆっくり降下してくるだろう。

放射線物質とか良く分からないが大体二週間もすれば、落ち着く筈だ。

きっと、Maybe...。


次回から新たな章、Apocryphas Now です、

ゾンビと言えば閉鎖環境のパニック。

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