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6日目、もう一つの太陽の部

そういやこの作品あと少しで折り返しだってよ。(13日目で終わる)


騒ぎのあと、我々はトンネルへと隠れている。

野宿よりはいいし、何よりあの家は色々とまずい。

いまや二家庭ほどの罹患者のあの家の周りを彷徨いている。

出口からこっそり顔を覗かせつつ、外を見ている。

遠く雲の上を飛ぶ日中どっちかの戦闘機か何かの音以外、何も聞こえない。

戻ろうと出口に背を向けた時。




───眩い閃光が走った。




「え?」


文月は項垂れて下を見ていて、私も背を向けていた、直視しなくて幸いだった。

後ろを振り返ると、見事なキノコ雲が立ち上がろうとしている。

0.8秒して、私に文月が大声で言った。


「トンネルから出て眼を閉じ口開けて耳塞げ!!」


文月は以前施設科をしていた。

爆薬による衝撃波の波及効果等は腐るほど講習し、このあとを知っている。

言われるがままに熊野は従い、音の衝撃波と呼ぶべき轟音と揺れが襲った。

臓器を叩くような衝撃が全身を襲い、一分ほど熊野は身悶えした。

文月でさえ30秒近く悶えており、罹患者は音のした方向へふらりふらりと向かっていく。





挿絵(By みてみん)

初夏、攻撃目標03は地上より消滅した。


「遂にやりやがった、本当にやっちまいやがった」


衝撃波で屋根瓦が落ちていく音が聞こえる中、熊野は項垂れてそう言った。

あれが戦略核や戦域核ではなく、小型戦術核、できれば数メガトン程度であることを祈ろう。

まあ...風向きからして死の灰も黒い雨も関係無さそうだ、東の連中には悪いが。



我々は今晩を越すべく、道路を歩いて適当な家屋を物色...と言うか探していた。

家も罹患者も納屋も無い、山に入るのは恐すぎる。

二時間以上歩いた末、見つけたのは二台の乗用車だった。

良くある家庭用の、四人のりの箱型、例えて言うなら東ドイツのトラバントみたいな形だ。

最初は恐くて様子を伺っていたが、文月が誰も居ない事を確認した。

きっちり車体の下も確認し、近づいてみる。

一台は海岸沿いのガードレールに突っ込んでおり、もう一台はブレーキ痕からして長崎方面から来たらしい無傷な車だ。

ただ二台ともドアが開いており、罹患者だったらしい頭を割られた死体が残っている。

恐らく突っ込んだ車両の持ち主だろう、もう一台の持ち主は海岸沿いの浜辺に居た。

黒焦げの死体が2つ、ジェリ缶があるから恐らく自殺だ。


「拝借しよう、彼らはもう使わない」


このまま、安全な過去へと戻れたらどんなに幸せなのだろう。

眼を開けると、いつも通り朝の貨物列車の音と、小学生たちのランドセルが揺れる音と、鳥と、いつも通り飛ぶ陸自のヘリコプターの音。

テレビは下らないバラエティーを流してて、いつも通り国家間のグレートゲームをしていて、私は何処に投資するか足を組んで考える。


「何で俺ここでこんな事してんだろ」


なあ、マジで何でこんな事になったんだ。

空飛ぶスパゲティやルルイエの家主なり、円筒形の宇宙的大いなる種族なり、答えてくれよ。



明るいLED液晶画面が並ぶ米軍第七艦隊旗艦ブルーリッジのCICに、石垣島から偵察飛行中のRC-135の爆撃評定が入った。

曰く脱出した中国軍の六割は海上か空中で阻止され、上陸した四割もいんすますで三割以上を核で焼かれたのでこれで終わりだと言うことだ。


「しかし同盟国への核攻撃はバレたらまずいのでは?」

「いやぁ、私の受けた報告によると中国の仕業だねぇ」


特殊訓練を受けた軍人等は罹患者と化した場合恐ろしい力を発揮する。

あのままほったらかした場合、両軍四万八千名の正規兵全員が罹患者と化したかもしれない。

その為彼らは先手を打った。

沖縄から持ち出した戦術純粋水爆を搭載したF/A-18Eを何機か使い、核で滅却した。


「なるほど、敵国の攻撃なら仕方ないですな」


世界各国はいまだ混乱の淵にある。

無政府と化した国もある、だが中国もロシアも生きている、アメリカも。

北海道では日本政府が機能を限定的に取り戻しているし、ロシアは化学兵器を使い生存者を気にせず滅却していった。

そして各国の海軍はその閉鎖的さ故に生き残っていた、罹患者が荒れ狂う前に任務に旅立っていった者達。

このブルーリッジも日本で罹患者が現れそうなのでさっさと脱出した米艦隊の旗艦である。

まあ、陣容は薄くなっていたが...。

あの輝ける太平洋艦隊は空母<シャングリ・ラ>を失い(中国原潜数隻の待ち伏せ同時核攻撃)、駆逐艦二隻を罹患者に乗っ取られ、

ロングビーチ級三番艦<サクラメント>は中国の報復核で轟沈した。

またタイコンデロガ級の<デモイン>等は至近で炸裂した核で左舷融解、乗員急性放射線中毒で即死或いは蒸発と言う有り様だった。

いまや駆逐艦5巡洋艦2原潜4が第七艦隊である。

原潜だけは数ヵ月前から北極海の分厚い氷の下でイッカクとイチャコラしていたので乗員異常なしである。

提督代理の海軍大佐(臨時特進にて中将)は、外気温の数字を見て呟いた。


「しかし、少し冷える様になった」

「平均気温27度です提督代理、ただでさえ燃えてンのに核で更に燃やしたんですから」

「そらそうか」


今日も太陽も月も、顔を見せてくれやしない。


各国


ロシア「ノヴォシビルスクやシベリア、ウラル籠城」

中国「雲南やシーベイサンマの辺り、半島等で頑張ってる」

日本「北海道暮らし」

アメリカ「ロッキー山脈使って要塞陣地や、西海岸開拓農民万歳!」

カナダ「イエローケーキサイコー」

イギリス「だから難民はつまみだせと(ウィンザー城籠城)」

イタリア「アンツィオを中心に粘ろう(南北分裂)」

韓国「智異山に立て籠りとか歴史が皮肉過ぎる」

スイス「難民ウゼエエエ!!!」

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