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6日目、開戦の部

中国側「ここで勝たなきゃ待ってる家族が」

日本側「ここで勝たなきゃ同胞が」


行き違いから進む日中戦争。


SHAAAAと言う砲弾が風を切る音が聞こえ、数Mの煙と破裂音が響く。

眠りについていた自衛官達が飛び起き嵐もすぐに上着を羽織って指揮所に現れた。

嵐はすぐに砲迫レーダー(砲弾を探知できるレーダー)を装備した沖合いの護衛艦に連絡を取る。


「状況は?」


嵐がそう尋ねると護衛艦側から仔細な分析が届いた。

"砲弾は89mmから155mm、弾着から推測するに規模は増強小隊規模(6ないし5)"。

問題は家屋に邪魔されて火点の特定が出来なかった、仕返ししてやるにも位置が分からない。

そして目下最大の問題はパニックになった群衆である。


「クソッタレこれだから嫌なんだ!何もしない癖しやがって面倒事を俺達(ぐんたい)に押し付ける!」


嵐にとって日本も民衆も中国人もどうでもよかった、生きるためにより良い環境を作りたかった。

故に中国兵との停戦さえ考慮していたが、こうなっては戦うしかない。

展開した狙撃兵からの『敵接近、戦車中隊規模。歩兵連隊規模。ヘリコプター18を認む』を聞き、すかさず対応策を命令することにした。



熊野は弾着の衝撃波で目が覚めた。

数分の砲撃の間布団を被ってヒビの入ったガラスが砕けても良いようにしていたが、銃声が聞こえるようになって砲撃は来ないと確信した。

準備砲撃からの歩兵突撃、戦争の基本だ。


「文月!大丈夫か!」

「え、えぇ生きてます」


玄関ドアを開けて文月も出てきた。

戦闘地域に最早用はない、こうなっては逃げの一手あるのみ。

アパートの階段を駆け下りると赤い星に電撃のマークが描かれた90式戦車と、その後ろに乗った自衛官達が通っていく。

文月は「港に向かうんですか?」と尋ね、熊野は少し考え、山に潜って朝を待とうと言った。

実は熊野はこっそり車両から狙撃銃用8倍照準眼鏡をくすねている。

故にこれで高見の見物とする気なのだ。


「前々から思ってましたけど熊野さん貴方畜生ですね」


文月は生き意地強い熊野にあきれてそう言うと、熊野は何食わぬ顔で「俺はノンポリだからどっちが勝とうと興味ない」と言い切る。

すると二人は微かに聞こえるジェット機の音を聞いて慌てて伏せる。

数秒して海の方から大きな轟音が聞こえた。


「あぁ護衛艦が...」


海の方が赤黒い炎に照らされ、爆発が見える。



日中の戦力差は歩兵で3:1、戦車や装甲車は10:1と言う本来なら絶望的な差であった。

だが指揮系統は陸海空の三軍残党故にばらばらで、再編成は万全でなかった。

それは軍隊ではなく、ただ一つの希望にすがり付く群衆だった。

彼らは「日本は島国だから罹患者を封じ込め、安全地帯を作った」と言うデマを信じて青島や海南島で彼等の信号を待っている家族たちのために必死だった。

沖縄や奄美大島等でも大規模に軍事衝突が発生し皮肉にも人類同士で遠隔地を潰しあっていたのだ。

カナダはアメリカから来る難民を無差別に射殺し、インドはチベット等から流入する罹患者と難民を核で焼き払った。

アイルランドやアイスランド、アゾレスもすぐに難民流入により罹患が吹き荒れた。

それは戦争と言う高尚な物でなく、糸を掴もうと他者を蹴り落とす亡者たちの争いだった。



市街外縁は激しい銃撃戦の舞台になっていた。

飛び行く二勢力の曳光弾は暗い市街地を彩っており、青葉達冬戦教も惜しまず投入された。

沖合いでは神風特攻をしかける中国UAVを迎撃しようとCIWSが唸りをあげて弾丸を撒き散らし、

海面すれすれを這って近づき横滑りしながら突入する雷撃機のような動きをするUAVにより流れ弾が飛び散る。


「来い支那畜生!」


MINIMIを腰だめで構え、ランボーのように射撃する青葉が叫ぶ。

すると戦車特有のエンジン音が聞こえ、青葉は現れた中国の96式戦車にギョッとした。

奴等戦車揚陸艦まで持ってきたのか?!

その戦車は人民解放軍が罹患者に"天安門式解決法"が有効だと気付いて持ってきたものだった。

戦車二両は重火器を装備していない前線にいる寄せ集め雑用部隊を突破したが、嵐が虎の子として持っていた戦車小隊や対戦車火器を有する防護具装備部隊となると苦戦した。

対赤外線装備も含む彼らに夜戦を挑んで勝てるのは早々居ない。

世が世なら対人戦闘装備として次世代を担えた彼らだ、熱狂的犠牲攻撃以外で彼らを打ち倒すのは難しかった。

だが大軍に確たる用兵なんぞ必要ない、大軍は大軍であるだけで戦略的に優勢であり、それこそが罹患者が拡大した理由だ。

そしてこの騒ぎに、油を注がれた。



トンネル出口に近づいた熊野は突如の爆発に驚いて転けた。

文月はとっさに伏せており、同じようにこっそり抜け出したらしい飯屋の店主と子供も居た、図太い。

熊野は音のした方を見ると、トンネルを塞いでいたバリケードがゆっくりと倒れていく。

なんだ中国さんの新手か?熊野はそう考えたがそっちならよかったと本気で後悔した。

トンネルを颯爽と飛び出した寝台列車、中村が撃たれたあの寝台列車が出てきた。

罹患者を強引な形で戦場に突っ込ませやがったあいつら!!



中国は二個師団くらい、

韓国は一個旅団ほどが日本に来ちゃってます。

ですが韓国軍の場合無警戒に市街地に入ってしまい罹患者だらけになりました。

長崎県の辺りにドクト級二番艦ジェジュが座礁してたり。

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