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1日目、午前の部2

こんな作品に最高評価しなくていいから(建前)

もっとしろ(本音)



駅構内はまだ平穏な日常に見えた。

ただ構内の電光掲示板には[博多・小倉方面運転中止]と書かれており、放送が流れる。


『えー、あー。鳥栖駅に於いて人身事故があり現在長崎本線は運転休止となっております。

誠にご迷惑をおかけいたしますが、御理解ご協力をお願いいたします。』


上ずった声で伝えられるメッセージに、危機感を抱いて急いで家からの最寄駅に着く列車へとびのる。

到着したばかりの車内もまだ平和と安定の、つい先日までは卓淳出来ていた世界であった。


「ん?病院の方から煙上がってる。」

「ケーサツ多いな」


乗客が口々に窓を見る。

車掌が閉扉のアナウンスを流し、扉が閉ざされて電車は動き始める。

車内は乗車率31%程の空きが多少目立ち、取り敢えず座席へ座る。

ガスタービンエンジンの様な爆音を立て、地鳴りの如く響く心臓の衝撃を抑えようと冷静に思考を開始する。

その結果私はネットで検索でもする事にした。


114:ローカル名無しさん

病院燃えてるー!!!!???


115:ローカル名無しさん

キチガイ暴れまくりンゴ、と言うかなんだあいつら?


116:ローカル名無しさん

チョ○ 井戸 毒 生きる為 仕方なかった


117:ローカル名無しさん

>>116

これはいけない。


便所の落書きを探した自分が馬鹿でした。

そう思うしかないくだらない書き込みの中に、幾つか情報の原石があった。


364:ローカル名無しさん

10~20のヘリコプターが海上に向かって飛行中。

偵察らしいヘリは何機か飛んでる。


どうやら本格的に事態が悪化しているのがわかった。

もっとも聞きたくも見たくも無かったが。

そんな刻一刻と悪化しているのが分かる掲示板に気を取られていると、電車は最寄駅に到着した。


「んだよッ!うるセーなア!・・・アー・・・ハハァー!!シネシネシネ!!」


突如乗客の1人が奇声を上げ、急いで電車から逃げる。

急いでいたので足音が響き、奇声を上げながらその乗客は追ってきた。


『ドアが閉まりまーす』


そんな事をつゆ知らない車掌は、慣れた動作で閉扉のボタンを押した。

バァンッ!と大きな物が打ち付けられる音が響く。

顔面を血まみれにした乗客が尻餅をついて倒れ、電車は発車を始める。


「助かったぁ・・・」


安堵で息を吐き、急いで駅を出ようと走る。

自分が乗ってきた上りのホームはまだ平穏だったが、下りのホームから何名かの乗客や駅員達が走ってくる。

相当慌てた様子で、何名かは血を滴らせており原因は容易に予想できた。


「うわっ!なにをするー!!」

「二日市まデ460円になりまァす~っ」


改札では窓口から初老の男に噛み付く駅員が居り、真横をすり抜ける様に逃げ出す。

改札を抜けると今度は中学生達が慌てふためきながら逃げ惑っており、悲鳴を後ろに駅を出る。


「何が起きてんだ?」

「さぁ?」


パトカーから警官が二人現れ、急いで階段を駆け上がり駅へと走る。


「ちょっとそこの人!なんか知らないかぁ!」

「わわわ、分かりませんよぉ!」


声をかけてきた警官が呆れ返っていると、追ってきたらしい謎の通り魔が階段を跳んで追ってくる。

無論着地に失敗し、両足を複雑骨折したがそれでも這いずって追い縋ろうとする。

警官が慌てて近くと、対象を変えたのか警官に噛み付いた。


「ぎゃあああ!いてっ!いだだ!離せ!離せ!!」

「おいこら!離さんか!!」


悲鳴と怒声を振り切って家へと走る。

家の近くの公園では病院への途中で見た、ジープの様な見た目をした車両が横転していた。

木の真横には自衛隊の小銃と、小高く盛られた土、小銃にかけられた66式鉄帽(ヘルメット)があった。

ジープの様な車両の後部には血溜まりがあり、けが人でも載せていた様であった。


「なにが起きてんだよ一体・・・」


無論そんな事誰も知らないし、俺TUEE虹小説でも無いので女神も神も助けに来ない。


「ファッキンジーザスクライスト!!」


幼少期に言われるがまま洗礼を受けた事を思いだし、ふと口から言葉が出た。

神様なんて存在しない、そう思いながら家の扉を開ける。

・・・・・・開ける?鍵は閉めたっけ?

言われてみれば鍵は閉め忘れた様な気がする。

と言うことは今この家は割と危険なのか?

いやいや勝手に他人の家屋に入るやつなんているのか?

でも、だが、うむむむ。


「うっ動かないで!!」


後ろから女性の声がした、若い女性の声だ。

私は静かに両手を頭につけ、そっと跪く。


「あなた何しにきたの!噛まれた?」

「何しにって、帰宅だよ、ここ私の家だぞ。」

「えっ?」


驚いた声が聞こえ、ゆっくりと振り向く。

振り向いた先にいたのは迷彩服を着て、私に小銃を向ける女性であった。

髪は黒色で短く、ショートヘアと言うべき髪型で、

胸はそれなりに自己主張をするが下品さを感じるほどではなく、胸元に[一等陸士:文月]と書かれていた。

挿絵(By みてみん)

「だ、誰だあんた。」


戸惑いが声にまで影響して上ずった声になりながら言った。

外からはパトカーのサイレンと救急車の音が聞こえ始め、車の騒音が減り始めた様に思えた。

女性の何かは、1LDKの私の部屋に鎮座するパソコンを指差して言った。


「じゃあ、あれの壁紙が何か答えて、つけてみなさい。貴方の家なら当てれるはずでしよ。」

「あぁ、それなら問題ないよ。

壁紙はガング○フォンのヤークトパンターだ。黒いチューリップつきの。」


そう言いながらパスコードを解除して、パソコンを起動する。

ヘリコプターの胴体に脚を付けた様なロボットが壁紙にデカデカと写っており、真横に縦文字で[ユーラシアンコンフリクト]と書かれてある。


「本当に家主さんだった・・・・あわわ・・・」


汗を浮かべて小銃を慌てて下げると、女性自衛官らしきその怪しい不審な侵入者は言った。


「えっと、話を聞いて貰えます?」

「早く言え放りだしたいんだよ私は。」


正直こんな状態で侵入してくる奴の言葉なんぞ問答無用で追い出すのが一番ゆえ、イライラしながら言った。

どう説明するか回っていなさそうな頭を全力全開させながら自衛官風の侵入者は言った。


「外の・・・おかしな人達がいるって、知ってますよね?その様子じゃ・・・」


それを言われて、慌てて彼は鍵を閉めた。

戻ってくるとその侵入者は話を続ける。


「最初は何か、近くで暴動が起きたって聞いたんです・・・・・


ー3時間前、自衛隊第四師団第66普通科連隊駐屯地


彼女の名は文月と言う入隊して二年の女性自衛官である。

何かある訳でもなく幼少を過ごした彼女は正義感で入隊し、特技は射撃で射撃競技会に出場もしたが彼女は自衛官と言う国営土方に嫌気を抱いている。

入って数日せず、教導で彼女の正義感は雨散霧消し手当目当てに二年と半年間の兵役(くぎょう)を耐え抜いてやると決意した。

最初は首都の第一施設団に居たものの再編によって転任、補充により第10施設団から66普連に移された。

当時は対中情勢深刻な悪化により九州が戦場になる危険性が前例の無い兵科転換を起こさせた。

関東の部隊から一分隊を抽出された為彼女は九州に飛ばされた。

その日、彼女は徹夜の当直勤務を終えて惰眠を貪っていた。

度々自衛官達、特に"意識低い系陸士"の界隈でボロクソに言われる当直警衛勤務を終えた為ゆっくりしていこう、

そう彼女は寝台にパンツとシャツでゴロゴロと寝転びながら「なんでJ隊入ったんだ私ィ」と愚痴を零しながら暇を楽しんでいた。

最近は嫌なことが多く、うんざりとしていたのだ。

この前は班長が「おれタバコ吸って来るから戻るまでにこの階層全部掃除しろよー」とか無理を振るし、

そもそも当直警衛勤務も休暇の予定をずらされて入れられたので凄く不快だった、

そして1番憂鬱なのは来週は体力テストと称して山へ強制連行され野蛮人以下の生活を送られされるのだ。


「うわああああ、私物三点顎紐どこおお」


枕を顔に押し付けてゴロゴロと寝返りをうっている姿は恥も外聞もあったものではない。

来週のテストに備えて購入した私物の顎紐が無事失踪したのだ、

自衛隊では2点紐と4点紐があるが割と不評が多く、度々三点顎紐を購入する自衛官が多く見られる。

するとそんな彼女の部屋の戸をノックする音が聞こえ、彼女は嫌そうな心を顔に出さない様にしながら作業服へ着替えて扉を開ける。


「はぁ、なにか。」


扉を開けた先に居たのは同じ班の岡崎と言う自衛官であった。

ニキビが頬に自己主張を力強くする若手の二等陸士だ。


「班長が今日全員外出禁止、皆に伝えろって言ってましたァ。」

「エッ、なんでぇ。」


外出禁止は度々罰則として出たりするが、個人に対してであり連帯責任に飛躍するのは早々ない。

確かに先月営舎の裏で酒盛りした連中が野良猫に襲われ無事警務隊に外出禁止にされたが、それくらいだ。

それ故に彼女は驚いて理由を聞いた。


「知りませんよ、上からのお達しらしいんすけどヨグワガンニャイ。」

「えぇ...」


適当に返され呆れと困惑していると、岡崎の襟を掴んで班長が現れた。


「「げぇっ」」


さっさと気づかない振りして扉を閉めようという彼女の思惑を正面突破して、班長は言った。


「おい二人とも、なんかすごい事になったぞ。

出動待機、実弾支給だ。」

「「実弾!?」」


出動と言うだけで大事なのはわかるが、それに実弾と言う言葉が追加されると尚更驚愕させられる。

彼女は慌てて鉄帽(ヘルメット)を着用し、弾倉(マガジン)を入れるベルトポーチのついたベルトを巻き、急いで自身の班へ走った。


ー現在



「ちょっと待て、なんでそれならアンタがココにいるんだ?」

「・・・・・それが。」


わたしの問いに、目を逸らし深呼吸をして言った。


「逃げたんです。そこの公園、見ました?」

「ジープみたいな奴と、その鉄砲みてーなのを突き刺してその上にヘルメットつけた様なのがあったな。」

「・・・・・撃ったんです、わたしが。」

「え」


衝撃の発言に、またも声が震え声へ変わった。


ー30分前、病院最寄駅付近の地下道


地下道への入り口に土嚢が積まれ、入り口に小銃を持った自衛官が立つ。

その近くに旧ジープを止めると、彼女は見張りの自衛官に尋ねた。


「本管は?!」

「この下ですが、現在撤収の準備中です!」


(本管:本部管理、本管中隊とも言う、要するに司令部とかの人達。)

指を指してそう言う自衛官は、近くにいた仲間を呼び彼女の旧ジープの荷台と、同じく停車していた73式トラックから負傷者を運ぶ。

彼女は報告にいく班長を見送ると、自身の運転していた旧ジープの荷台でうめき声を上げる岡崎の姿に手を握って励ましていた。

地下道から手を貸され、脚を負傷した自衛官がトラックへ乗せられる。

彼女は何故救急車もパトカーも来ないのか疑問に思っていた。

そして何故、地下道にいる筈の衛生科(衛生兵)が来ないか苛立っていた。


「えぇい、わたしが呼んでくるよ。」


地下道の階段を駆け下り、彼女は唖然とした。

地下道には大量の負傷者たちがすし詰となっており、呻き声に満ち満ちていた。


「あの、班長。

負傷者の後送は・・・?」


彼女は班長を見つけ、尋ねる。

班長は壁にもたれ掛かりながら、座り込む。


「後送できるのは軽傷者のみって事だ、民間の医療機関も混乱してて対応ができないそうだ。」

「そんな、一体・・・」

「本隊も高速道路で渋滞に巻き込まれた所を暴徒みたいな連中に襲われたそうだ。

68普通科連隊も38キロの地点で足止め食らっているらしいし、他の連中は博多と鹿児島市の暴動に対応しなきゃいかんそうだ。」


無線機を操作している自衛官が神妙な面持ちで連隊長に報告する声が聞こえた。


「第2中隊は市街北方で渋滞に足留めされてます、第三中隊は中隊本部を小学校に設置して設営作業中。

第4中隊は現在暴徒の攻撃を受けて交戦中ですが戦況不明、連絡がつきません。

67連隊や玖珠の戦車大隊は現在佐賀県と大分県を移動しています」

「師団司令部からは?健軍の西部方面司令部からは情報が来てないのか?」

「駄目です、情報が錯綜してます、それに電波法で広帯域通信が使用不可能なんです」


後ろからは衛生科と他の自衛官が言い争う声が聞こえる。


「おい移送だ、すぐにトラックへのせろ。」

「バカ言え、動かせない重傷者はどうすんだよ!」

「俺が知るかよ!!」


皆苛立っている、

そして彼女も苛立っていた。

自分の班のメンバーで後輩が負傷し、適切な医療機関へ連れて行かなきゃいけないのだと。


「自分は・・・・収容してくれる病院を探します!」

「・・・そうか、そウか・・・」


一体何がどうなっているのか、全くわからないまま彼女は旧ジープを走らせた。



文月メイが一応ヒロインです、意識低い系陸士さんです。

三点顎紐とかの話しはリアルJ隊の人から聞きました。

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