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5日目、午前の部2

たのしいしがいちさんぽ


人の気配が絶え、割れた窓ガラスが散乱している住宅街を抜けると大きな国道に出た。

目標地点まであと300mちょっと、開発されている商店やガソリンスタンド、コンビニがある国道に出て長崎方面に進路を変える。


「ここら辺はそんなに荒れてませんね」


回りを見てみると長距離トラックが乗り捨てられたり、乗用車が玉突き事故をしている位だ。


「道路側だけだよ、ガソリンスタンドとか見てみろ」


ガソリンスタンドを見てみると、大火に包まれていたようで黒い遺体があちこちにある。

殆どは燃える罹患者に飛びかかったり掴まれたようで、揉み合った形跡がある。


「うわっ」


コンビニでも窓ガラス突き破って救急車が突っ込んでおり、開いた後部ドアが車内の惨状を伝えている。

スーパーマーケットの駐車場は殆ど車両が無く、表から見るとシャッターが入り口以外開いていない。


「あれ、既に掃討したんですか」

「あー、ここは深夜に奴等が暴れ狂ってたんで開いてなかったからだね」

「はぁ」


入り口近くに横向きで止めて、銃座が入り口を睨む。

隊員達は小銃手二名が先に降りて、続いて小銃手の援護で全員が降車する。

相互援護をしながら入り口左右に隊員が張り付き、TARの側面に着けたタクティカルライトを点けて突入する。


「やはり人が入っていないようだ、略奪もされてない」


青葉はそう言うと、全員に警戒するように伝えて確認をとる。

レジカウンターの呼び鈴をリズミカルに鳴らして出てくるのを待つが、物音1つしない。


「よし、安全だ。

しかし暗いな...電気のボタン何れだ?霧島!熊野、ちょっと点けてきて」


熊野は安全なら文句無いので、トラック等の車庫と在庫の倉庫がある方向に向かう。

霧島は「これだよ」と言って熊野より前を早歩きで進む、さっさと終わらせて帰りたいのだ。

すると微かに運動靴らしき足音が聞こえ、片手を上げて熊野は耳を澄ます。


「仮に出てきても問題...」


霧島は心音センサーに気づいて全員を備えるよう具申し、鈴谷が霧島を援護するため霧島からみて右翼から進出する。

心音は在庫のある倉庫からしており、霧島と鈴谷がハンドサインで互いを援護しながらカッティングパイと言う監視方法で突入する。

センサーは鈴谷から見て前方にあり、霧島が何時でも撃てるように備えながら呼び掛ける。


「誰だ、大丈夫、ででくるんだ」


ごそっと音を立てて、ダンボールの影から若い男が出てきた。

そばかすのある若い男は、自衛隊ではない迷彩をしていたが被ってるヘルメットはアメリカのM2ヘルメットで、

首にかけている暗視ゴーグルは西側の物だった。

そして彼の持っているライフル、それはK2自動小銃、韓国の良作小銃だ。

韓国軍である。


「ア...HELP...HELP」


慣れない英語で両手を上げて、その若い韓国兵は身ぶり手振りで助けを乞う。

鈴谷は携帯式翻訳機を使い事情を説明してほしいと文章にし、韓国兵は頷いて事情を書く。


「どうして韓国兵が居るんだ?」

「はぁ、釜山から避難したがここも罹患者まみれで飢えていたそうです。」


彼らは日本は島国で罹患者を封じ込めていると言う噂に全てを賭けて脱出したが、手遅れだったらしい。

鈴谷は仲間が居るか尋ねるが、彼は首を振って分からないと伝える、探索していたところ罹患者に襲われ油断していた彼らは潰滅したらしい。

逃げ切った彼は昨夜ここに逃げ込んだらしい。 

 

「と言うことは一昨日辺りにはもう来ていたのか...とりあえず君も荷物を運ぶのを手伝ってくれ、保護する」


首を縦に振って彼は安堵したのかため息を吐く。

その時だった、銃座で暇をもて余していた畝傍が慌てて報告してきたのだ。


『やばいです、罹患者が音を辿ってここら辺に...』

『了解!直ちに移動する』


乾麺を掻き入れてちゃっかり菓子も確保した韓国兵と、慌てて飲料水とレトルト食品を確保した熊野は車両に戻る。

道路上に韓国兵だったらしい罹患者達が数体うろうろとしており、銃剣を装着したK2を持ってふらふらと覚束ない足取りで此方に来ていた。


「次は?」

「次は病院だ、医薬品確保だよ」


何か窓の外を見た後ぶつぶつと独り言ちている韓国兵を荷台に移し(座席が装具により幅がないので)、LAVはゆっくりと速度を絞って走り出す。

すると、道路に妙な痕跡があった。

熊野はそれに気づいて尋ねる。


「キャタピラ痕ですかね、戦車でも通ったんですか?」

「俺たち89式も73式も装備してねぇぞ、おかしいな...」

「...戦車とか出ないと良いなあ」


不安を感じながら、熊野は病院に到着した。

三階建ての中規模な病院で、駐車場に救急車が横転してあり、正面玄関には輸送警備車が乗り捨てられている。

三階や二階に焼けた焦げあとが見え、何が起きたかは察せれた。


「うわあ行きたくねえ」

「お前も行くんだよ、れりごー!」

「泣きてえ」


渋々熊野は医療箱を取り出す。

無菌包帯や麻酔等々を入れる為だ。

降車すると見慣れない装甲車両が止まっているのが見えた、青を基調としたデジタル迷彩。

03式装甲車、中国の車両だ。


「...先客居ますね、これ」


車内には誰も居らず、車内には寝台があり血の跡がある。

恐いらしく着いてきた韓国兵が雨の中の子犬のような瞳で「帰ろう」と訴えているが、残念ながら帰れない。

病院と言うこの状況では核爆心地(グラウンドゼロ)に、彼は足を踏み入れた。


イメージとしては大字から佐世保辺り。

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