四日目、朝の部2
人生つらい。
少なくとも妹どうやって育てるんだ本当、でもJ隊給料クソだしアークソ...
アパートは少なくとも築15年はあるように見えた。
元々壁は白かったらしいが色褪せて無機質なコンクリートの鼠色がいくつか垣間見えている。
そんなアパートの二階の一室が私の部屋であった、文月は隣である。
他の住民は居ないらしい。
「夜間外出は禁止されてます、気を付けてくださいね」
そう言うと胡散臭い男は鍵を渡して去っていった。
「...疲れた」
部屋は殺風景な和室で、箪笥等はあるが生活の雰囲気が無かった。
恐らく元々空き家だったのだろう。
リュックを下ろして布団に横たわり、少なくとも恐怖が無いことが嬉しかった。
ー
全てが始まったのは5月のあの日、病院に行った時だ。
何故かは知らないが証券取引所が開かず、延期と言われて思わず中指をおっ立てたあの日の翌日。
考えてみるともうすでにあの時点で罹患者たちは間近に迫っていたんだ。
東証が開かなかった理由はいまは分かる、機材トラブルだなんて言ってたが恐らくその時点で東京は罹患者たちが覆っていたのだろう。
そもそも先週のNY証券取引所の異様な売りの多さ、恐らくこれも関連付けている、耳の早い連中がコネで政治家や軍、情報のリークをしたんだろう。
「考えてみるとギリギリだった」
遅くても早くても死んでた、正確に言うと死に損なって歩いて人を襲ってた。
だがそれでも分からないのはこの妙に見かける自衛隊だ、政治家は命令を出したのか?もしかしてクーデター?。
まあしたところで状況は変わらないだろうし、長いものには巻かれておく。
生命の危険が出てきたらその限りではないが。
「...見捨てるべきだったのかな」
文月を見捨てて、学校に残っていたら良かったのでは?。
と思いはしたが多分敷島とか言うあの人が"事故死"させてきそうだ、あの時は正直困惑していたが、頭の中身は日常と完全に変わってはいなかった。
ちっぽけだけど正義感があった。
いまは知らん。
「...風呂はいれるかな」
給湯器はちゃんと動いている。
水からは少し潮の香りがした、まあ真水そのままより海水とか混ぜ物して濾過した方が良いよなあ。
と思ったが貯水してるところが潮の影響を諸に食らってるだけか、管理しきれていないんだし。
ともあれ風呂だ風呂だ風呂だ風呂だ!。
ー
浴槽に浸かって手と足をうんと伸ばす。
今まで肩を張りすぎていた為一気に弛緩していくのが良く分かった。
飛行機墜ちるしヘリで降りたらわんこそばだし全くなんで生き残れたんだ、正直何度か死んだと思った。
問題はこれからも続くと言うクソッタレな理由なんだが。
罹患者達が人間と同じく生きれるなら水辺の奴等は少なくとも20日は生命を存続させれると言うことにある。
都市圏の奴等は共食いやらしたりすると優に一ヶ月は罹患者達がウロウロする餓鬼畜生道が続く事を意味する。
更に問題は社会の不安定化人心の荒廃治安低迷政治・経済不安定財政共産主義よりレッド。
うん。
これ日本詰んでるね、いやあ国家の崩壊ってこうも早いんだな、なんか一年は経った気がするけど4日なんだよね。
正確に言うと一ヶ月二ヶ月前くらいから居そうだけど大規模罹患でこうなるとは。
「...人心の荒廃」
学校での蛮行、軍閥の形成、内戦。
他国からの侵略、不安定な社会、極右極左対等。
何か考えると色々不安要素が多い、狂犬と猛犬は首輪の有る無しだけど中央政府の首輪の無い暴力装置となってるし。
正直、此方も怖い。
これから夏が来る、私はどうするべきなんだろうか。
「あー、現実から逃げたい...夢にならないかな」
その一言はこの状況が夢であって欲しいと言う意味か、それともPTSDと言うあり得る難敵に対しての予想でもあった。
気が強いと言う訳ではない、頭は利潤計算は多少出来る、知識は白蟻めいて色々食い散らかしたから雑多。
身体を鍛えていると言うわけでなし、高い所は昔蒲田行進曲めいた階段からの落下以来苦手、やたらに足の多いのと無いやつも苦手。
そんな彼はただただ、生きたい。
とは思っていたが正直これからの人生と言う物に希望は無かった。
ただそれはそうでも死んだとして東京に居るらしい文月の彼氏に申し訳なくはあったのであわよくばそれで何かこうコネとかで安寧を確保できないかと言う汚い思考もあった。
情けは人の為ならずと言う諺をしみじみ噛み締めつつ、熊野は自分でもあまり楽観的とは思えない将来を考えるのをやめて風呂に集中し、平和を味わう事にした。
不謹慎だの申し訳ないだのと言う綺麗事は熊野にはない、どんなに美辞麗句で飾ろうとも人間の快楽は俗世的なのと生物本能的の二つである。
「自分より不幸だったり弱い奴を見ると愉悦は善意の仮面を被って施しと言う自由意思決定権の剥奪をするんだよ」
それが巧言令色に飾り立てて表した熊野の深層に有る思考である。
二文字で言うとクズである、彼はこの間にも罹患者に喰われたり暴徒に無法の限りを尽くされる人が居ることを知っている、
そしてそれでなお「私は多少恵まれている」と言う満足感に逃げることが出来る愉悦もあった。
だが無意識であり意識することはない、そこまでクズになりきれないどっち付かずだからである。
もっともこの人格はずかずか入り込んでじろじろ見ていくとプライバシーのない行いをした村社会で過ごした幼少のせいとも言える。
「...て言うかなに言われるんだ私は」
明日何を言われるのかと戦々恐々ではあるが、彼は少なくとも銃殺とかではないことは分かっているつもりである。
それなら即決すれば良いからだし、外から見る景色は少なくとも薄皮一枚位は理性があった。
八ツ橋の皮ほど厚く無かったが...。
ー
風呂を終えて一眠りすることに決めた熊野はビーズ枕にイライラしつつ目を閉じる。
安心して目を閉じれる幸せ、それは宝石類の山より甘美な誘惑。
心から充足感を抱き締めて彼は昼寝をすることした。
熊野は友人2名作者をアドバンスド召喚して製作したキャラクターです。
主人公の思想はニーチェの影響が強いと言えますが、彼多分人間自体嫌ってるんだと思います。
だから多分箍が外れると人を見捨てたりするし間接的殺人も厭わなそうな感じに...。
でも彼失う物って文月位しか無いんですよ、HOI的に言うと平和補正外れないフランス、
艦豚的に言うなら強制甲で最初の夏イベトリプルダイソンつき、
でも人間自体嫌ってる節があるし文月を安全引換券としてるから本気でキレる要因は薄い。
つまるところ熊野は本質的にアレで社会に適合出来んクズと言う事である。
初期の案では北朝鮮の土台人候補を売り渡して暮らしてる(在日朝鮮人の個人情報転売)と言うクズどころか売国奴でしたし。
この設定は別作品で別のキャラクターに使い回したい位クズ過ぎるのでおきにきり。




