三日目、午後の部
更新が遅れたのはボストンで色々したりNATO兵としてCSATと戦争したりタチャンカ+114514点したりしてたからです。
ゆるしはこわぬ。
さあ殴れ
枕木のせいで揺れはする車内だが、辺りの光景はそれすら忘れさせてくれる。
それなりに人のいるこの周辺部は、いよいよ生存者が少数派らしい。
「あー」
何時しか駆け抜けていった特急列車が脱線している。
大阪や東京と違って本数は少ないがそれでも電車は通っている。
「ダメだ、一気に抜けてくれ」
「まじかよ」
土居の照準眼鏡による偵察は、食い散らかされた車掌や割れた窓から上半身が真っ二つされた乗客の姿があった。
御愁傷様と思いつつ速度を上げて真横をすり抜け、チラリと横目見てみる。
だが血の手形や捕捉した罹患者が窓を叩いている位で、生存者はいない。
「助けれる余裕は無いんだ、余計な事を考えるとあいつらみたいになるぞ」
中野はそう言って、後ろを見てみる。
微かだがこっちに向かっているご様子の危ない連中が見える。
「後ろからお客さんだ」
「うひゃあ、ずらずら居るよ...」
段々とだが規模増えてるだろ。
辟易しつつ増速して車は線路を駆けていった。
「俺この仕事辞めたくなったぜ」
「俺もー」
「私もー」
しかしこの自衛官ズはやけに達観していたが。
ー
車を走らせて38分、見晴らしの良い山の中で一時休憩とした。
中野は車内で「疲れたァ」と言って寝ているし、土居は車の上でのんびりとあぐらかきつつ回りを見ている。
今我々は目的地までの最終選択肢を迫られている。
当初通り高速入り口或いは梯子で近道、あるいは死にかけつつ一般道を行くコース。
ルート次第でバットエンド一直線しかねないから買ったばかりの予備知識なしエロゲのように選択肢は大事にしなくては。
「あー、クソ。
どーすっかね」
すると、トイレに行っていた筈の中村は血相を変えて走ってきた。
土居は64式を構えて照準眼鏡を覗いてみると、近くの小川にまで流れてきたらしいホトケのなかに罹患者が混じっていたようだ。
「あっやっべぇ!」
土居が車内に飛び込み、腹に軍靴を喰らった中野が「ゲフゥッ!」と悶絶する。
文月もなかに入ると中村の真横を狙撃銃の弾丸が掠める。
7.62mmを受けて頭から倒れる罹患者を無視しつつ、中村が飛び込んで乗り、急いでドアを閉めて出発する。
罹患者は窓をバンバンと叩いて、中野は状況を理解して思わずあとずさる。
全員乗ったのを確認して車を出すと、鉄橋に差し掛かる。
「うわっ」
思わずそんな呟きが漏れでた。
大きな市街地に通じる川は屍が漂う地獄になっているのだ。
どうやら市街地は大炎上していたらしく、黒焦げた屍が大量に流れている。
一か八か飛び込んで溺れ死んだのだろう。
「まるで地獄だな」
鉄橋を渡りきると、目的地に向かう鉄道の支線がある駅へ近づく。
無論腐っても日本最大の鉄道会社の本線の駅でもあり、快速停車駅なので罹患者もいる。
ただ私の家のある街みたいに大きくもない上に、恐らく混乱が始まる前に警察や消防団の組織が住民の屋内待機を厳命でもしたか、
或いは立て籠って罹患者を引き付けている連中でも居るのか数は少ない。
石を勢いよくぶん投げて陽動して、その隙にとんずらしよう。
「じゃ、石でも投げて気を逸らすんで少し待っててくれ」
「「「へーい」」」
ふて寝した中野以外が返事をして、投げやすそうな石を手に入れ線路の上をゆっくりと歩く。
駅員らしいのが改札前で健気にも客を待っているのか、立ち尽くしたりしている。
遠目から事情を知らずに見れば只の人気の少ない九州に腐るほどある過疎化駅だ。
「ふんッ!」
クワ◯の復活マウンドを再現したポーズで勢いよく民家の窓ガラスめがけて石を叩き込む。
無論盛大に砕け、線路の脇にある恐らく保全の用具入れに身を潜める。
車も静かに誘因されるのを待っており、目的地に向かう線路の罹患者三名の内駅員の一名とカレチの一名は離れた。
だがトレンチコートを着た着飾ったキザな男は、血痕がついた小説を読んでるらしく動かない。
社会と隔絶した不適合な生前を過ごしていたのがもろにわかる。
せめて死んだときくらい迷惑かけるなよ。
「なんだよあのクソヤロー」
こっそりと戻ると、土居に狙撃出来るか頼んでみる。
「できるが何のための誘導だと思ってるんだバカヤロー、言い出しっぺどうにかしろ」
「ひでェ」
虚しく追い返されたので、しょうがないからレールを使い回して作ったらしい駅の柱に八つ当たりをかねて投げつける。
流石に注意は引けたのか、向きは変わった。
だがテコでも動く気はなさそうだ。
「轢き逃げするわ...」
「最初からそれで良かったんじゃ」
真理を突いた文月の言葉に言い返せず、無言でアクセルを踏んで線路の上を突っ走る。
トレンチコートの罹患者は私たちの車をすら無視し、結局動くことはなかった。
生前の記憶が色濃く残っているとあんな罹患者すら生むらしい。
駅を過ぎ去り、黒煙の上がる田園風景を真横に車を運転する。
道中列車を見かけはしたが、特急列車だったらしい車両の窓にはたっぷりと血がついていた。
希望すら無いパンドラの箱を開封する気はないので過ぎ去り、トンネルに入る。
そしてトンネルを抜けた我々は、思わず口を開いてこう言った。
「やっぱり神様ってやつはクソヤローだ」
トレンチコートの罹患者のモデルは作者本人です。
罵っても文句がでないし規約違反にもならんからね。




