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お転婆姫の襲撃

 どうやら立太子式の主役は忙しいらしく、その後少しして応接室で別れた。


 どうやら他の来賓が入城したらしく挨拶に行くらしい。


 ロンダークは静かに護衛についてきている。


 城内であればレイス王国側で各国の賓客の護衛につけた騎士が一緒であれば政務に関係ない王城の1階部分や庭園などなら自由に出入りできるそうなので、晩餐会までの間に庭園にあるお勧めの大きな湖に行ってみることにした。


 美しく整えられた庭園は春の陽射しが緑の木々の葉をすり抜け、光の筋がキラキラと輝いている。


 色とりどりの花たちが選定され美しく配置されていて、お勧めするだけのことはあるようだ。


 レイス王国はレイナス王国よりも気候が穏やかで過ごしやすい土地柄にある。

 

 しばらく庭園を散策していたら、湖の岸辺には先客が居たらしく、私とあまり歳が変わらなそうな青年が三人ほど集まっていた。


「アールベルト殿下に王太子は無理だろう」


「病弱な王太子なんて他国に付け入る隙を与えるだけだって」


 ボソボソと聞こえて聞こる声に、眉をひそめる。


 アールベルトの何をどう見れば病弱なんて話が出て来るのか。


 注意しようかと思った瞬間、ピンク色の塊が生け垣から飛び出して貴族の青年の背後に走り寄る。


「天誅」


 よく見ればピンク色の塊、ナターシャ姫が繰り出した飛び蹴りは青年の膝の裏に綺麗に決まり、バランスを崩した青年は助けようとした仲間を道連れに湖に沈んだ。


 もう一人の青年がナターシャ姫のドレスの背中を捕まえる。


 青年が落ちた二人に気を取られた隙をついて、正装を纏った少年が生け垣から走り出し、ナターシャ姫がしたように青年の背後にまわると膝の裏を蹴りつけた。


 青年がバランスを取るため咄嗟にナターシャ姫を放した隙に少年はナターシャ姫を回収すると、青年らが湖より上がって来るよりも早くナターシャ姫を抱き上げ退却していく。


「兄様を悪く言う人は、誰かが赦したとしても私が赦さないんだから!」


 可愛らしい声が捨て台詞とともに庭園に響き渡る。


「とんだお転婆姫だ」


 私はロンダークと湖に近づき、レイス王国の護衛騎士とともに青年らを水の中から引き上げる。


 ナターシャ姫について悪態をついていたので一瞬また水の中に沈めてやろうかと思ったけれど、流石に他国の貴族を沈める訳にはいかない。


「あっ、ありがとうございます」


 助け出された青年は私の正装に飾られたレイナス王国のエンブレムに気が付いたようでみるみるうちに顔が青ざめた。


「あまり我が友アールベルトを悪く言うのはやめたほうが良いね。ナターシャ姫ほど感情的に動くことは無いけれど、あまり気分が良いものではないね」


「あの、もしや聞いていらっしゃったのですか?」


「えぇ、貴方の発言からナターシャ姫の襲撃まで見させていただきましたよ」


 自国の王太子を他国の賓客の前で貶めるなど本来ならば不敬罪やら反逆罪やらに問われても仕方がない。


「彼等の身元は解りますか?」


 後ろにいるレイスの騎士に問いかければ、苦虫でも噛み潰したような顔で青年らを睨み頷いている為、彼等の処遇を任せることにした。


「何か証言が必要であれば、声を掛けてください。 私が見たままをお話いたしますので」


「ご協力感謝いたします」


 証人として立候補すれば深く頭を下げられた。

 


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