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ドラグーン王国からの親書……

 国王陛下の執務室に入ると、応接用に用意されているソファーに座るように指示され、下座に腰を下ろす。


 キャロラインとリステリア母様とは晩餐でゆっくりと話をする約束をして一旦別れた。


 サクラは目を輝かせたキャロラインの元へ自分から行ったので任せた。


 侍女頭のリーゼさんや、私の世話をしていた侍女のミナリー、リズ、レーシャの三人娘は既に城を辞してそれぞれが婚家へと嫁いでしまっている。


 室内にはアルトバール父様と私、ロンダークさんが侍女に入れてもらった紅茶を飲みながらまったりしていた。


 レイナス王国の宰相兼リステリアお母様の兄であるシリウス伯父様が来ると、父様は侍女を下がらせて室内に四人だけが残る。


「さて、ロンダークからの知らせで概要は知っているが、当事者から話を聞きたい」


 それから私は学園で地下にあった遺跡に落ちたこと、サクラのこと、バジリスクがドラグーン王城を襲いクラインセルト陛下が亡くなり心を病んでしまったミリアーナ叔母様が王位を狙う暗殺者に狙われたこと、洗いざらい話した。


 私が話忘れているところや説明がうまく伝わらないところはロンダークさんが絶妙に補助してくれている。


「バジリスク、そんな伝説にしか残っていない怪物が実在した事にも驚きだが、クラインセルト殿が亡くなってからの動きが早すぎるな……」


「えぇ、お二人の話からすればミリアーナ様への追っ手が掛かっている間に我が国に届いたミリアーナ様の身柄を渡すように勧告する書類が届いたのも早すぎます」


「書類って?」


「あぁ、ドラグーン王国の公爵家からミリアーナを引き渡すように親書が来た。 元宰相カルロスと結託し先王クラインセルトを殺した大罪人を引き渡せと」


「なっ!?」


 あまりの内容にテーブルに両手を叩きつけて立ち上がる。 


 怒りに全身の血液が逆流するような錯覚が起きる。


「カルロス宰相は国主暗殺者と首謀者であるミリアーナを逃した罪で先日逆賊として処刑されたようだ」


 父様の言葉に最後に見たカルロスさんの姿が思い出される。


「し、使者に返答は?」


「ミリアーナ及びレイナス王国は無関係だと突っぱねた。しかし場合によってはドラグーン王国側から攻めてくる可能性も捨てきれないな」

 

 戦争……その言葉は前世のテレビや教科書で当たり前のように聞いていた筈なのに、日本にいる自分には関係のないものだと認識していた。


 しかしドラグーン王国側から攻められれば防衛戦にならざるを得ない。


 戦になれば多くの人の命が失われ、そして大切な者を守るために同じだけの命を奪う事になる。


「怖いか?」


「はい……ドラグーン王国から逃げる際に追っ手であった者達の命を奪いました、まだ彼等を斬りつけた嫌な感触と戦いの高揚感そして全てが終わった後に襲ってきた絶望感が残ってますから」


 目を瞑れば自分の命を守るために奪った命と相手の顔がまざまざと浮かび上がる。


「その感覚を大切にしてやれ、それが真っ当な感覚だ。 死なんて慣れるもんじゃない」 


「はい……」


 これから何事もなければ私はこの国を、レイナス王国を継ぐ事になる国や民を守るために多くの命を刈り取るだろうし、自分よりも強い相手に当たれば死ぬと言う現実も今回の帰国までの道のりで嫌というほど理解した。


 アンジェリカに出逢わなければ死んでいたもんな。


「あっ、話は変わりますが父様。 婚約させてください」 

 

「……はっ? 婚約ってどこのご令嬢だ? ドラグーン王国の貴族の令嬢か?」


 あまりに話題を変え過ぎたのかアルトバール父様もシリウス伯父様も鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。


「違うよアンジェリカって言うんだけどねすっごく可愛くて、ツンデレでぇ~」


「まてまて待て答えになってない」


「行商人のトーマスさんの一人娘で命の恩人なんだ!」


「……つまりシオル殿下は平民の娘を王太子妃として迎えたい。 と言うことですか?」


「うんそう!」


 確認するように聞いてくるシリウス伯父様にこれ以上ないくらい元気に返事をすれば、目の前の父様が深い深いため息をついた。


「男爵位の貴族の令嬢位ならまだしも平民って馬鹿かお前は!」


 アルトバール父様はガバッと顔を上げて怒鳴ってきた。


「いいじゃん愛してるんだから! 父様だって婚約者がいたのにリステリア母様と駆け落ち騒ぎまで起こして社交界を引っ掻き回して結婚に漕ぎ着けたって聞いたよ?」


「おっ、お前それをどこで!?」


「どこだって良いじゃん! なんなら侯爵家位の家に養女にしてもらえば良いんだし!」


「そう言う問題じゃない!」

 

 アルトバール父様と睨み合う私を見てロンダークさんがクスクスと笑った。


「陛下とシオル様はそっくりですね、さすが親子です。 陛下も先代とよくそのように睨み合って対立しておられましたが」


「うっ、とっ兎に角王太子の結婚や婚約はそう甘いもんじゃないんだよ!」


「絶対アンジェリカ以外を妻に迎えない!」


 睨み合う私とアルトバール父様の間シリウス伯父様が割り込んだ。


「はいはい、お二人とも落ち着いて。 シオル様はまだ幼い。 子供の言うことですから他に好きなご令嬢に心変わりなさるかもしれませんし」


「ふぅ、そうだな……よし、十八まで婚約者は決めずにいてやろう。 それまで変わらずアンジェリカ嬢を思っていて相手もお前を忘れなければ婚約の件考えてやる。 ただし他の女にふらついたら終わりだ。わかったか?」


「わかった。 あとアンジェリカの護衛に一人付けたから!」


「はぁ!?」


 その後もしばらく揉めました。



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