どこもカツアゲは同じらしい。
「アンジェリカ!?」
「あれは、たしかシオル様と一緒にいた?」
「あぁ、私の命の恩人なんだ」
後を追って私とロンダークさんが走り始める。
脇腹に痛みは走るが、こんな時間に女の子一人で出歩くなんて危険すぎる。
しかもアンジェリカの目元に光って見えたのは涙だと思う。
「アンジェリカ!」
「来ないで!」
大声で名前を呼べば、拒否された。
「そんなわけに行くか!」
「いいからほうって置いて!」
私の制止を振り切るように細い路地へ飛び込んだアンジェリカを追って角に差し掛かると路地から悲鳴が上がり、ロンダークが腰に下げていた長剣を引き抜いた。
「アンジェリカ!」
「なんだぁ? この娘の連れかぁ」
アンジェリカを取り囲み拘束している男たちが五人、酒を飲んでいるのか顔を赤らめている。
「あぁそうだ。 その手を放してくれ」
「いやぁこの嬢ちゃんが突然ぶつかってきてなぁ、この通りこいつが大怪我をおっちまった」
ニヤつきながらそう言った男が仲間の男を指し示すとわざとらしく腕を押さえて痛がってみせた。
「ふざけないで! 私がぶっかったのはあんたじゃムグムグ」
アンジェリカの反論を口をふさぐことで封じた。
「ロンダークさん、あれって怪我してるように見えます?」
「いえ、カツアゲのゴロツキでしょうね」
ですよねぇー、なんてわかりやすく古典的な……
「あんたらこのお嬢ちゃんの連れならしっかり慰謝料払ってくれるよな?」
アンジェリカはこちらに目を向けながら首を横に振っている。
「う~んロンダークさん、この場合いくらか渡したら穏便に済みます?」
「無理だと思いますよ。 渡せばすぐに有り金全部置いて行けとか始まりますよきっと」
ですよね~。
「何をコソコソ話してやがる! 出すのか出さねぇのかはっきりしやがれ」
コソコソと囁きあう私達の様子に男は苛立った様子で、怒鳴りつけてきた。
「はぁ、ロンダークさん。 もしもの時には制圧よろしく」
「はぁしかたありませんね」
私はロンダークさんから銀貨を一枚受取り男に近づくとニヤニヤと男が背後に周り私に手を伸ばしてきた。
私は直ぐに身体を低くして男の手を掻い潜るとロンダークさんが走り込むなりリーダーらしい男の腹に長剣の柄を叩きつけ手際よく地面に沈める。
私がアンジェリカを拘束している男を沈める間にあっという間に残り三人も戦闘不能にすると、男たちの衣服を器用に結びつけて逃げられないように拘束してしまった。
「アンジェリカ、大丈夫?」
地面に座り込んだアンジェリカの側にしゃがみこんで顔を覗き込む。
「うぅぅ~」
クシャリと歪んだ顔にあー、これは泣くなぁと思った途端にガシッと身体を拘束されて私にすがりついたアンジェリカがまるで火がついたように泣き出した。
「もう大丈夫だよ」
ポンポンと背中を撫でればさらに泣き声が大きくなる。
「シオル様、私は警備隊の者を呼んでまいります」
「あぁ、頼む」
ロンダークさんが私から離れたと思ったら、グワシッと胸元を掴まれた。
「シオルってなに!?」
いつの間にか泣き止んでいたらしいアンジェリカが私を睨みあげていた。




