再会と再教育宣言!?
翌朝、トイレに行きたくなりまだ寝ているアンジェリカを起こさないようにベッドから抜け出す。
また床に転がって大きなイビキをかきながら大の字に寝ているトーマスさんを乗り越え宿屋の通路と部屋を仕切っている扉の下に二つ折りで挟めて有った羊皮紙を発見した。
「ん? なんだろう……」
ゆっくりと持ち上げて開けば、まだイビキ以外は静かな部屋かさりと羊皮紙の乾いた音が響く。
さっと中身を確認した私は、素早く服を着替えて、ブーツを履くと、なるべく音を立てないように気を付けて部屋を抜け出す。
人肌が離れて起きたサクラがパタパタと羽をバタつかせこちらへ飛んできたのでいつも通り肩へと乗せた。
まだ日が昇り始めた空は薄暗く少しずつ朝焼けが空を染めていく。
羊皮紙に指定された場所までやってくると人影がこちらへと歩いてくる。
「お捜ししておりました、よくご無事で」
「うん、私もまたロンダークさんに会えて嬉しいよ」
服はボロボロだけど、ロンダークさんの元気そうな姿に笑みが溢れる。
「私もです」
「しかしこの祭りでよく私を見つけられたね」
ただでさえ人であふれる王都、しかも祭りの間は商人たちも、それを買うために王都へ出て来た人でごった返している。
はじめにロンダークさんと落ち合う約束をしていた街とは違う王都で人ひとりみつけだすのは大変だったと思う。
「えぇ、シオル様のグラスタが王都へ案内してくれましたよ」
「えっ!? グラスタどこ!?」
先の戦闘で離れ離れになってしまった愛馬の名前に食いつく。
「すぐに会えますよ。 それよりも……」
「へ? って痛でぇー!」
怪我をしている脇腹を的確に見抜き筋張った大きな手でグワシッと鷲掴まれて持ち上げられ悲鳴を上げた。
「やっぱりお怪我を」
「痛いっロンダークさん痛いって!」
「えぇ、ここに居ていいですよ」
「違うわぁー!」
ジタバタしていると、首筋にポタリと水滴が落ちてきた。
「ロンダークさん?」
「私が付いていながら殿下にこのようなお怪我させてしまい申し訳ありませんでした」
まるで私が生きているのを全身で確かめようとするように抱きしめられる。
「うん心配かけたね」
声を殺して泣いているロンダークさんの背中を撫でる。
「もう二度とこのようなお怪我はさせません」
「うん」
「レイナス王城に戻りましたらこのロンダーク、シオル様がどんな敵と相対しても怪我などされぬほど鍛え直させていただきます」
顔を上げたロンダークの顔に涙はなく、真っ黒い良い笑顔を浮かべていた。




