完売御礼!
この度無事にシオルの曾孫が主人公の「美しい生き物は受け付けません!」が完結いたしましたので、こちらの連載を再開したいと思います。
よろしくお願い致します。
わらわらと集まりだしたお客さんに緊張しているのを悟られないように深く息を吸い込み、ニッコリと笑顔を向ける。
「さてここに私の手にありますこのお皿! 歪みがなく美しい曲線でしょう?」
私は手に持った皿を集まったお客さんに見えやすいように持ち上げる。
「なんだ、ただの売り込みか」
前列のお客さんの一部が帰っていく姿に内心冷や汗を流しつつ、平静を装いながら続ける。
「さてさてここに取り出すのはなんの変哲もないただの棒です、良いですか? よっ!」
右手に持った棒の尖らせた先を皿の高台の畳付、フチに引っ掛けた。
お皿にひっかけた棒を、下からみて時計回りに少し勢いをつけてフチから棒が外れないように回していく。
棒の先を回すイメージで手首の力を抜き、菜箸で卵をとくように、お皿のフチに沿って棒の先でシャカシャカと高台内に円を描く。
回転がついたのを確認して棒を止めると、斜めになった高台中心のへこんだ部分に自然と棒がはまり安定して回りだした。
よし、成功!
「おー! あんな細い棒の上で皿が回ってる!」
自分たちの方に皿が飛んでくるのではと不安そうに見守っていたお客さんたちから拍手と歓声が上がる。
「うちのお皿は良く回るでしょう。 職人が一枚一枚丁寧に作り上げた美しい曲線を描いたお皿は良く回るんです」
回したままの皿を落とさないように注意しながら、もう一本用意してあった棒にも皿を引っ掛けて手際よく回す。
「わぁ! ふたつに増えた!」
いつの間にか大人たちの前には私よりも小さな子供達が集まりだした。
小さな歓声をあげる子供達の視線に、回転に勢いがついた皿を上空に跳ね上げた。
回転して宙に浮く皿を見た子供達はワッと歓声をあげると落ちる落ちると騒ぎ出した。
落ちてきた皿の底を棒でかすめ、受け止めると再度勢いをつけ直した。
もう片方も投げ上げて受け止めると大きな歓声が上がり、それを聞いたお客さんが店の前に増えていく。
今度は回転したままの棒を手のひらに乗せて重心を取りながら、今にも落としそうな感じでフラフラ歩く。
側によればキャイキャイと盛り上がって子供達が近くで見ていたらしい親元へ逃げていくと、その手を引っ張って連れてきた。
重心を取るのにコツはいるけど、この技は見た目に比べ全く難しくない。
さて問題は次だ、フラフラして見せながら足元を確保した私は自分の上に何もないのを確認して、回転に勢いを付けてそのまま真上に民家の屋根を超すくらいの高さに投げ上げ、また棒でキャッチする。
わあっ! っと上がった歓声と囃し立てる口笛と拍手に今度はタイミングをズラして両手の皿を投げ上げて今度はキャッチしたタイミングでほんの少し投げ上げて皿を二枚とも手で受ける。
「さぁみなさんも一緒にお皿を回して見ませんか?」
一礼すれば、母親からお金をせしめた子供達が詰めかけてきた。
ついでに覗いていく母親達が布を手にしていたので「やっぱり美しい方はどんな布でもお似合いですね」と営業をかければ飛ぶように売れていった。
お酒が入って真っ赤になっている酔っぱらいのおっちゃん達も奥さんや恋人、娘さん、子供さんにお土産として商品を買ってくれたので、無事に完売することができた。
その後子供達に請われるままに、回し方を教えたり、宿に併設された酒場で売上にホクホク顔の酒に呑まれたトーマスさんに絡まれながら過ぎていった。




