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元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?  作者: 紅葉ももな
思春期

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アンジェリカはサクラと友達になりたいのです。

 翌日、露店の手伝いが楽しみすぎて早く目が覚めた私はゆっくりと身体を起こすと、両腕を天井へと伸ばすようにして寝ている間に凝り固まってしまったらしい身体をほぐした。


 今日は露店を出す予定なので、指定された場所まで荷物を運び、借りることが出来た一画を掃除したり、売り物となる商品を並べたりと、仕事は盛り沢山だ。

 

 まだ太陽が登り始めたばかりなのか、窓の外は薄暗い。


 ふと視線の先が盛り上がっているように感じて、目を凝らせば段々と暗さに慣れてきた目が、小山の正体を映し出した。


 グガァーグゴォーと大きないびきをかきながら寝ているクマ……もといトーマスさんだ。


 しかし一体いつの間に帰ってきたのか一体いつ帰ってきたのか……ベッドまでたどり着けずに酔いつぶれたらしいトーマスさんが大の字になって眠っている。


「レオルおはよぅ〜」


 どうやら目が覚めたらしいアンジェリカは眠気の残る目を手の甲で擦り付けると舌足らずな発音で挨拶を告げてくれた。


 その姿がまるで子猫が前足で顔を洗っているように見えて可愛い。


「おはよう、トーマスさんベッドまでたどり着けなかったんだね」


 アンジェリカに木板を敷き詰めた床で潰れているトーマスさんを示す。


 

 

「はぁ、もう! お父さんったらお酒臭い!……ほら邪魔よ、じゃ〜ま!」


 薄手のストールを肩から羽織ったアンジェリカは容赦なく床で寝ているトーマスさんの腹部を踏みつけて、部屋の外へ出ていった。


 ぐえっと蛙みたいな声を出したトーマスさんを踏まないように部屋を出ると、アンジェリカと一緒に顔を洗うため、宿の水場として宿泊者が使用できる裏手の井戸にやって来た。


 井戸は既に他の宿泊者が集まっております、そこかしこで朝の挨拶を告げている。


 子供二人と言う事で先に来ていた大人の宿泊者が井戸から直接縄を引き上げて、私達の洗顔用の木桶に水を組んでくれた。


 キンキンに冷えた井戸水で顔を洗えば、かすかに残っていた眠気が、顔から滴る冷水と共に抜けていく。


 宿の食堂では事前に頼んでおけばかんたんな朝食を準備してくれるらしい。


 アンジェリカは慣れた様子で受付に立ち寄ると、宿屋の従業員が温かな湯気の立つトマト味のスープと焼き立てらしい温かなパンを受け取っている。


 アンジェリカにパンを持ってもらうように頼み、スープが入った木製の器が三つ載せられたお盆を受け取った。


「おっ、小さいのに偉いなぁ! こいつはおまけだ!」


「わぁ! ありがとうございます! オランジュ好きなんです」


 そう言ってオランジュの実を二つくれた。


 そっかぁアンジェリカ、オランジュ好きなんだ。 まぁ私から見るとオレンジにしか見えないんだけど国によって微妙に名前が違うらしい。


 南の国ではいちごをイーチェとよぶらしい。


 いちごで良いじゃん面倒くさい! 


 部屋に持ち帰り起きてきたサクラがテーブルの上のオランジュの周りをぐるぐるとまわっているため、実のヘタがなく少し凹んだ所から皮を剥いて一房分を差し出した。


 しきりに匂いを確認したあとパクリと咥える。


「キュイ!」


「もっと欲しいの? はいどうぞ」


 どうやらオランジュの実が気に入ったらしく私が皮を剥くよりもサクラ口の中に消えるほうが早い。 


 すると、私の横から剥かれたオランジュがサクラの前に差し出された。


「あれ、良いの? オランジュ好きだって……」


「良いの良いの! サクラ、オランジュ好きみたいだし」


 私のオランジュが無くなると、サクラはゆっくりと身体をアンジェリカの方に寄せていく。


「サクラ、触ったら噛まないかしら?」


「大丈夫だと思うけど、急に触れば驚くだろうから、そうだなぁ……」


 アンジェリカのオランジュを彼女の掌に載せてサクラの前に置いてみた。

 

 サクラは一瞬躊躇ったものの、オランジュの誘惑に勝てないようで、そろそろとアンジェリカの手に自分の身体を乗せると、短い両手を折り曲げて短めの尻尾を揺らしながらオランジュを咥えた。


 その様子が可愛いかったのか、アンジェリカが身悶えている。


「あっ……」


 サクラはよっぽどオランジュが気に入ったのか、アンジェリカの手のひらに付いた果汁をペロペロと舐めだした。


「ふっ……くっ、くすぐったい」


 動きたいけどサクラが両手に乗っているため動けないでいる。


「ほらサクラおいで」


 ヒョイっとピンク色の身体を持ち上げると、ホッとしたような残念がっているような複雑な顔をしたアンジェリカがテーブルに顔を伏せている。

 

「もっとサクラと遊びたい……」


「キュイ!」


 サクラの声は一声鳴くと、ツンとアンジェリカから顔を背けて私の肩の上に収まった。


「はぁ……私昔から動物とか大好きなのに、嫌われちゃうんだよね……なんでだろ」


 羨ましいと上目遣いに見上げるのも可愛く見えるから重症だな。

 

「サクラはいくら食べ物で釣っても気に食わない人に近付かないし、ましてや嫌いな人の手を舐めたりしないと思うよ?」


「本当!?」


 勢い良く立ち上がったアンジェリカに驚いたサクラが私の衿から服の中へ逃げ込んでしまった。  


「えっ、わっ! サクラごめんなさい」


 アンジェリカ……落ち着こうよ。


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