表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/176

うなれ!戦鎚(せんつい)

 上体を低くして腕を振らずに一歩一歩地面に靴底を食い込ませ、乱闘に突入する。


 真正面から殴りあいをしたところでこの脳筋たちはびくともしないだろう。


 鎧を纏いフル装備の騎士たちは後回しにして、防具なしで参戦している騎士たちから刈っていく事にした。


 ガシャガシャと身に付けた甲冑が音を立てているため隠密には向かないけれど、音がなるのはプレートアーマーも同じなので気にしない。


 やはりプレートアーマーよりも軽く、関節への固定が緩いぶん動作一つ一つの自由度が高い。


 取っ組み合いをしている騎士の背後へ回り込み軸足の膝裏に蹴りをいれる。


「うわっ!?」


「なんだ!?」  


 バランスを崩して倒れこむ騎士に巻き込まれるかたちで取っ組み合いをしていた騎士を巻き添えに地面に沈む。


「えっ!? うわ!」  


 そのまま勢いで後ろにいた騎士の服を掴み前方にいる騎士へと投げつけると巻き込まれて数人が玉突き事故を起こしたように転んだ。


 足をすくい、投げつけ、一本背負いの要領で地面に投げつける。


「弱いわ貴様ら! ちゃんと鍛練してるんでしょうね! うりゃぁああ!」


 飛び上がり眼前のプレートアーマー組のフルフェイスの頭上に一撃ずつトンカチをぶつける。


 ガンっ、ギンっ、ガツンと金属音が響き、その直後絶叫してのたうち回る。


 本気で当ててはいないし平たい面にしたから貫通するようなことはないけれど、フルフェイスの中にはさぞ盛大に打撃音が反響していることだろう。 


「うわぁー、殿下満面の笑顔じゃないですか、えげつない」


「殿下もしっかり脳筋ですよね、生き生きしてますよ」


 そんな声が側近達から聞こえてきた。 


 私地獄耳なんだよね。

 

「怯むな! 殿下を潰せー」


 やはり深紅の甲冑は目立つため囮にはうってつけのようで、誰かの煽動(せんどう)する声に一斉にこちらへと標的が定まった。


「ちょっ、まっ」


「かかれー!」


 制止の声を書き消す時の声を上げてこちらへと押し寄せる騎士たちに顔がひきつる。


「うわぁー、待った待った!」


 一気に劣勢になってしまったので、一時撤退を試みる。


「あー! 殿下が逃げたー!」


「追えー!」


 ひぃぃ、大分人数は減ったがそれでもまだ二十人以上の屈強な男たちが鬼気迫る勢いで後ろから追ってくる。

  

 そんな私の両脇をすり抜けるように二つの人影が走り抜ける。


「全く我が国の近衛は戦闘となると見境がなくて困りますね」


「訓練とはいえ自国の王太子を本気で狩りにいくとか近衛としてありえねぇからね」


 模擬刀片手にクロードとリヒャエルが数人を瞬時に地に沈める。


「クロード! リヒャエル!」 


「防具のない連中は私たちが御引き受けいたしますので殿下はフルプレート組を御願いします」


「そうそう、早く倒さないとアンジェリカ様とお会いする時間が無くなってしまいますよ?」


 へらっと軽い調子でリヒャエルが言った言葉に目を見開いた。


「えっ!? アンジェが来るなんて聞いてないんですけど!」


 身体を反転しフルプレートを纏った騎士に斬りかかる。


 立て続けに二人程フルフェイスの死角からトンカチを食らわせた。


「あれ? 言ってませんでしたか?」


「聞いてない!」


「それはすいません」


 たいして悪いとも思って居ないようにへらへらとリヒャエルが答えた。


「アンジェリカ様ならキャロライン様と観戦されておられますよ」


 クロードの言葉にキャロラインが避難している場所を探して視線を走らせる。


「隙あり!」


「殿下危ない!」


 アンジェリカの姿を見つけて出来た隙に途端に首筋に痛みを感じ私の意識は暗転した。 

 


   

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ