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神子

「はぁ……そろそろ泣き止まんか鬱陶しい」


 ロンダークが双太陽神の元へ……来世へ続く輪廻転生への旅路へ見送った私は暫く泣き続けました。


 しかたなくない? だって止まらないんだもん。


「グズっ……鬱陶しいって酷くないですか? 久しぶりに会えたのにロブルバーグ様が冷たい」


 ティッシュペーパーが存在しないため持っていたハンカチで鼻をかみ、汚れた面を内側に折り込み仕舞う。


「全く、身体は立派になっても中身はさほど変わっておられんとはの」


 現在私達はロブルバーグ様直々の案内で教皇の私的スペースにある一室に来ていた。


 アンティークな飴色の猫脚テーブルには真っ白なテーブルクロスが掛けられ、私とロブルバーグ様、そして先程手を握ってくれた白髪の少年が同席している。


 ちなみにリヒャエルとクロードはエレナ大司教と一緒に少し離れた席に居るものの、警戒は解いていないようだ。


「それはロブルバーグ様も一緒ですよ、仮にも他国の王太子に手刀を落とすとかどんだけですか?」


 恨みがましいと視線で訴えてみるもロブルバーグ様はどこ吹く風、全く答えた様子がない。


「ふふっ、やっぱり幼い頃の記憶は健在のようだの」


 ニヤリと笑ったロブルバーグ様にため息をつく。


「ふふふっ、噂通り本当にレイナス王国の王太子殿下は双太陽神に愛されておられるのですね」


 それまで私とロブルバーグ様の会話をニコニコと見守っていた少年が話しかけてきたが、誰この人?


 ヘルプミー! ロブルバーグ様へ紹介してと促す視線を出す。


「あー、教え子じゃからの。 セイン様、こちらレイナス王国のシオル様、こちらセイン様、当代双太陽神教神子君(とうだいそうたいようしんきょうみこぎみ)であらせられる」


「…………はい!?」


 ミコって神子? ってことは噂の双太陽神の実子の末裔? 教皇のロブルバーグ様がお仕えする存在じゃないの!


 ロブルバーグ様の説明にあんぐりと唖然としてしまった私は悪くない。


 なんでそんな統一宗教のトップが和気あいあいと私の隣でのんきにお茶してるのよ。


「まぁ落ち着け、おぬしがなかなか、なっかなか会いに来ないからひたすらおぬしの幼き日の奇行やら何やらを面白可笑しく話して聞かせただけじゃよ」


「奇行ってそんなにおかしな事しませんけど」


「嘘付け、寝返りして間もない普通の赤子はベビーベッドから脱走もせんし、ステンドグラスを値切ったりせんわ」


 うぅ、それを言われると否定しきれない。 だって転生者なんだからその時点で普通じゃないかもな。


「それに『新しき種』を連れておられる様子、最強の守護者に護られておられる」


 そうやってセイン様か視線を向けたのは、私の肩の上で午睡を貪る真紅の愛竜サクラ。


「『新しき種』とはなんですか?」


 セイン様の言葉にロブルバーグ様が問いかけてくれた。


「『新しき種』とはときおり現れる新種の生物ですね、そのほとんどはもともとこの世界に産まれ落ちるはずだった魂が手違いで他の異界で産まれてしまった者だと言われていますね」


 セイン様の説明を聞きながら無意識にトカゲを思い出すサクラの尻尾を撫でた。


 ってことはサクラは私と同じ異世界転生者の一人なのだろう。


「『新しき種』は何かしらの女神の祝福を頂いているらしいので、その肩の……」


「あぁ、サクラだ」


「サクラ殿も役割を頂いている可能性がありますね」


 不思議竜は私が思っていたよりも奥が深い獣だったようです。


 

 

 


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