友の元へ
ナターシャ姫と一緒に流されたと乳母はドラグーン王国へ向かう支流で遺体で見つかった。
支流の川の流れが穏やかになっている中洲に打ち上げられており、中洲付近で魚を獲り生計を立てていた漁師が発見したようだ。
残念ながら遺体は既に埋葬されており、身に着けていた衣服や装飾品が遺族へと返された。
もしかしたら同じように流れ着いているのではないかと草の根を分けるようにして捜したが、思うように捜索は捗らず、ナターシャ姫を見つけられずにいる。
「くそっ、これだけ捜し回ってもみつからないかぁ」
「やはり我々だけでは、これ以上ナターシャ姫の捜索は困難です、一度カストル二世陛下かアールベルト殿下に連絡を取られたほうが良いかもしれませんね……」
ギラム一派に乗っ取られたままになっている王城についての連絡は既にアールベルトに届いているだろう。
しかし王妃様の死とナターシャ姫の行方については一番詳しいのは間違いなくレイナス王国から来ている自分たちだ。
「そうだな、ナターシャ姫を捜すにももっと人手が欲しい……ロンダーク、今前線はどうなっているかわかるか?」
「伝え聞いた情報ですと、あまり戦果は芳しくない様子ですね、ドラグーン王国に寝返った貴族もいたようです。 前線の様子が伝わるまでに時間もかかりますから」
どうやら両国の攻防は一進一退を繰り返しているようだ。
「一度連絡をとろう、王妃様の埋葬やナターシャ姫の行方、王城の様子など心労もあるだろうから」
「そうですね、ではすぐに伝令をーー」
「行くよロンダーク!」
「ーー自分から他国の戦場の最前線に行く王子様がありますか!」
素早く騎乗して手綱を握り締め、馬の腹を足で挟み込み、軽く合図を出して茶色い地面が露出した大地を駆け出す。
すぐ様私を追い掛けてロンダークが馬に飛び乗り追従し始めた。
「どちらに行かれるおつもりですか!?」
どうやら騎馬で走り出した私達に気が付いたらしいゼスト殿と騎士達が追ってくる。
「カストル二世陛下のところへ!」
出立から最小限の野営や休息を挟み馬を駆ること一昼夜、レイス王国軍の陣地と思われる街にたどり着いた。
どうやらレイス王国軍はこの街を補給の拠点にしているようで、単騎駆で迫る私達に拠点防衛を任されていたらしい兵の誰何がとぶ。
「何者か!」
「私はゼスト・ハスティウス、レイナス王国軍近衛騎士を拝命している。 急ぎカストル二世陛下へお取り次ぎ願いたい!」
ロンダークとゼスト殿が協議した結果私の名前はふせる事になりました。
今は他の騎士達と同じ軍服を纏い、めだつ赤髪を布で覆い隠してある。
「レイナス王国の近衛騎士がなにようか!」
「王都にてギラム・ギゼーナ右将軍謀反!」
「なっ!? すっ、少し待たれよ」
そう言って街内部へ走り込んで行った兵が中から連れてきたのは、覚えがある甘い香りのする紳士だった。