第六話 ゆかり は どれい を ゲット した ! ▽
衝撃の事実を知って2日が経った。オジサンに、「急に言われても困る、2日後にしろ」と言われたので今日が運命の日だ。ボクは新しい奴隷ができるのが待ちきれない。と言う訳なので、学校が終わり次第、早速お店に来ちゃった。
「こんちゃー!アップルパイちょーだい!」
「本当に来たのか、坊主。アップルパイなー焼くまで待っててくれよ。焼いている間にでも会っとくか?」
「うん!早く会わせてー!」
「じゃあ、奥に来い。アイツは研究室から離れたがらないからな」
そう言うと、オジサンは先に奥に行ってしまった。ボクはわくわくしながら後を付いて行く。中に入ると、下に行く階段が一つあるだけだった。研究室が地下にあるのはわかったけど、オジサンの部屋も地下にあるのかな?疑問に思いながらボク達は階段を降りていく。
降りた先には、ドアが一つあるだけだった。しかし、中からとても美味しそうな匂いがする。この甘い香りは…チョコレートの香りだ!今、チョコレートを使ったスイーツを作っているようだ。これはナイスタイミングだ、流石ボク。
「この先に息子がいるぜ。俺は商売に戻らないといけねぇからな。大体1時間ぐらいしたら来いよ、パイが焼きあがってるだろうからな」
「わかったー!オジサンありがとー♪」
オジサンが階段を再び上がって行くのを見送った後、ボクは魅惑の香りがするドアを開けた。それはもう、思いっきり。
「一体なんのお菓子作ってるのー!?」
「いきなりドアを開けてそれかよ!」
開けた瞬間に強くなる香り。とても、心地がいい。これが…天国!?早速ボクはこの香りの元へと走って行く。前世のボクの力を使えば、ほら一瞬で着いちゃった!
「ってか速すぎるだろ、アンタ!一体なんなんだよ!」
何かボクの奴隷(予定)が騒いでいた気がするけど、スイーツにしか目が入らないボクには聞こえない。おおーもしやこれは、新商品になる予定のものかな?チョコレート色をした、ロールケーキを発見!中にバナナがあるね。バナナとチョコレートの組み合わせは王道だ!トッピングにはイチゴとクッキーが乗っかってる。うん、これは美味しそうだ!いただきまーす♪
「んみゅー!美味しいなー!」
「勝手に食べんなよ!というか、アンタが親父が言ってた「血糖値がヤバい坊主」かよ…確かにこれはヤバい」
ロールケーキの中にあるクリームはチョコクリームだが、それほど甘くない。ただ、バナナと甘さといい具合になっているので、不満はない。この男、中々使える。ただ、騒がしいのが難点だけど、部屋に閉じ込めて作らせとけば騒音なんて気にならないよね。
「って、人の話を聞けよ!」
「うるさいな」
あまりにもうるさいので、思わず全盛期並みの殺気を向けてしまった。あっ、と思ったときには遅く、哀れな奴隷(予定)は殺気に耐えられず気絶してしまっていた。ケーキを食べる邪魔をしたからと言って、一般人に殺気を向けるなんて、ちょっと大人気ないかな。あ、今のボク子供だったよ。なら、全然大丈夫だよね!ごめんね!
彼が寝ていると話も聞けないので、ボクは冷蔵庫の中に置いてあった、作りだめしていたと思われるスイーツ達を平らげることにした。何日置いていたのか知らないけど、ボクの胃袋なら平気だよね。ボクはこの世界の空気以外に弱点はないからね。うまうまー。
「うぅ…一体なんだったんだ…」
時計を見てみると、未だ30分しか経っていなかった。キミは30分も寝ていたのかい?この世界の人間はみんな脆弱だね。ボクの世界の人なんて、ボクが殺気を出したら嬉々として飛び掛かって来たよ。それに、冷蔵庫においてあったスイーツ全部食べちゃったよ。ケーキ類以外にもクッキーや和菓子などのバリエーションも豊富だったし、ボクとしては大変満足だけどね!
「ああーっ!?俺の試作品が全部食べられてるー!?」
「ごめんね♪」
「謝る気ゼロだろアンタ!!どうしてくれるんだ!俺は紙になんてまとめないで勘で作ってるんだよ!アンタが食べた分のアイディアが全部水の泡じゃねぇか!!」
んー、だったら何かあった時の為に記録しておくべきだったね。これを自業自得って言うんだよ。まあ、悪かったとは思っているけど、ボクがここでマーライオンになったってキミの作品は戻ってこないんだけどね。
「ねえキミ、ボクの為にケーキ、作りなよ」
「はぁ!?何言ってんだアンタ!いい加減に…」
「作 り な よ っ て 言 っ て る ん だ け ど ?」
ここで、気絶しない程度の殺気を送ってみる。前世のボクはこうやって部下…じゃなくて奴隷を従えてきたんだー。数億年の経験の賜物だよー?これをたかが数十年しか生きていない一般人が回避できるわけないよね。
顔を真っ青にしたボクの奴隷(予定)は、素晴らしい程のスライディング土下座をかました。おおーこれがジャパニーズ土下座かー。良いもの見れたなー。確か土下座って申し訳ない気持ちを表すために平伏して許しを請うんだっけ?
「申し訳ありませんでしたー!是非この俺に作らせてください!」
「そうこなくっちゃね♪」
その後はオジサンとお喋りをしながら、焼きたてのアップルパイを思う存分味わった。味は互角だね。ただ、顔馴染みであるオジサンを奴隷にするのは忍びないから、初対面な息子クンの方を奴隷にしておいて良かったかな。
こうしてボクは、ケーキを作る手足となる奴隷をゲットした。これから彼は、お店の新作ケーキを開発しつつ、ボクの為にケーキを作り続ける。それこそ、ボクが彼の作品に飽きるまでね。ただ、彼に「ボクに早々飽きさせようとか思わないでよ?どうなるか、わかってるよね?」と言えば、顔を真っ白にしながら「お任せください!」と言っていたのでしばらくは大丈夫だろう。本当に、ボクは良い奴隷をゲットしたなー。
ゆかり は どれい を ゲット した ! ▽
タイトル通り、縁くんが奴隷を得た話です。
哀れな奴隷(確定)の名前すら出ていない…縁くんにとって彼は名前を知る価値もないのでしょう…哀れすぎる。
彼の事は密かに「ツッコミキング」とでも呼んであげてください。
活動報告を更新しました。宜しければご覧ください。