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第五話 待ってて、キミを高潔なボクの奴隷にしてあげるからね!

 『舞白学園』に入学して1年ほど経ったある日のこと。ボクは今日も今日とて「甘味屋やめんか」へ走る。この甘味屋は、ボクにとって天国のような場所だ。一度死んで天国すら見れなかったボクが言っていいものかわからないけど。この甘味屋のネーミングセンスにボクは脱帽したよ!まるでボクに「甘味を食べるのをやめんか」って言っている気がしてね、勿論気のせいだと思うことにしたよ。ボクは甘味を食べるために世界征服をしたからね!今更辞めるなんてボクに死んでくれと言っているようなものだよ。


「こんちゃー!ケーキちょーだい!」

「坊主、また来たのかよ…店側が言うのはアレだが、もう来るのやめた方が良いぞ」


 ここの店主のオジサンはパティシェでもあって、自分で作った甘味を販売している。顔は強面なくせに味は繊細なんだよねー。ギャップ萌えってものかな?え、違う?オジサンはボクが毎日甘味を食べに来るたびに「もう来るな」と言ってくる。結局お金払えば甘味を出してくれるが、来させないようにする理由がわからない。ボクの顔から疑問を察したオジサンは、ボクに言った。


「こんな若い頃から甘いもんばっか食ってると将来危ないぞ」

「だいじょーぶ!ボクは病気になんてならないよ!」


 オジサンはただ甘味を売り続ければいいのに、わざわざ顧客の心配をしてくれるようだ。普通、心配なんてしないよね?だって、所詮他人の問題だもん。オジサンは凄くイイ人、とボクの記憶にインプットしておこう。オジサンは、ボクが自信満々に答えたのに対して呆れたのか諦めたのか、ため息を吐いてショーケースからケーキを出した。おお、今日も美味しそうだ…じゅるり。


「ほらよ、今日のケーキだぜ。アーモンドチーズケーキだ」

「わぁー!今日も美味しそうだね!いただきまーす!」

「オイ坊主、先に金払えー!!」


 おぉー美味しい!アーモンドとチーズがとてもいい具合にマッチしている!やっぱりこの店のケーキは美味しいなぁ。

 もぐもぐと食べ続けるボクは、お金を払っていないことを思いだして懐から黒色のカードを取り出し、オジサンに渡す。母親がボクにケーキ用のカードを作ってくれたのだ!この時ばかりは思いっきり抱き付いちゃったよ。ここの人って感謝やお礼に抱きつかないんだね。ボクの世界固有の文化なのかな?んー、でも会うたびに頬にキスする文化の国もあるみたいだから、この国だけかな?

 

 オジサンからカードを返してもらい、ボクはケーキを食べながら今日会ったことを話す。黙々と食べるより暇そうなオジサン相手とお喋りした方が良いよね!


「今日はねー、席替えで銀髪の女の子が隣になったんだー。銀髪って白に近いでしょ?だからボク、銀髪好きなんだけど、その女の子が「やった。やっぱり髪を見てる」って呟いているのを聞いて、鳥肌が立ったよー」

「おーモテてるじゃねぇか、坊主。まあ、ちょっと性格がアレだけどな」


 そうだねー性格がアレだね、と同意すればオジサンも同意するように頷く。あの女の子はボクのこと知っているみたいだったけど、ボクは知らないんだよね。自己紹介し合わないとボクは知り合いだって認めないよー。ボクが悶々と考えていると、オジサンがそういえば、と口を開いた。


「同じ子かは知らねぇが、銀髪の嬢ちゃんが店に来たな。ケーキは買って行ったんだが、何か他にも目的があったようにも見えたな…なんだったんだ?」

「ケーキ買ったのに他に目的があるってどうやってわかったの?」

「いや、店の奥をわかりやすくチラチラ見られていたらわかるだろ」


 わかりやすいねー。何かありますって言っているようなものだよねー。オジサン店の奥にイケナイものでも隠してるのかなー?暴いちゃうぞー!ギラリと光ったボクの目を見て危険を察知したらしいオジサンは慌てて言った。


「別にイケナイものなんてねぇぞ?ただ…」

「ただ?」

「奥には息子が新しいスイーツを作るべく、日々研究に勤しんでいるんだ」

「オジサン息子いたの!?結婚すらしてないモテない男だとばっかり…」

「おいテメェそりゃ失礼だろ!」


 キレたオジサンに頭をぐりぐりされた……痛い。どうやらあの女の子がチラチラ見ていた先にはオジサンの息子クンがいるようだ。1年以上通っているボクは店の奥はオジサンの小さな居室があるとばかり思っていたのに、あの子は人がいるってどうやって気付いたのだろうか?もしかして、息子クンに会ったことがあるのかな?


「いや、アイツはここ3年くらいずっと籠りっぱなしでな、会えるわけないんだよ」

「噂の引きこもりってやつかなー?」

「おい、坊主が今食ってるそのケーキもアイツの研究の産物だぜ」

「ホント!?会わせてよ、その人に!ボクこの人のスイーツ大好き!」

「……作ってるのは俺なんだが…」


 

 ボクは気色悪い銀髪の女の子のことなんか世界の果てへ飛ばし、オジサンに優秀な息子クンに会えないかお願いし続け、オジサンが渋々了承したのはそれから2時間後のことであった。オジサン結構渋った。でもボクがケーキを5種類食べて、6種類目に手を付けようしたら慌てて止められて、了承された。「了承するから、もう食べるな!」って言われたけど、オジサン、店の人だよねー。


 それにしても、ボクの好みが凝縮されているここのスイーツの考案者に会えるなんて光栄だよ。是非ともボクのために永遠にケーキを作って欲しいものだね。待ってて見知らぬ研究者、キミを高潔なボクの奴隷にしてあげるからね!



縁くん、ドS発言です。縁くんは自分を「高潔な」と言っている辺り、自信家なのがわかりますね。


没ネタですが、当初はケーキの店主(オジサン)を攻略対象にする予定でした。ですが、オジサン狙いの攻略者っているんでしょうかね…?

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