妹が露出狂だと言う事実2
以前書いた「妹が露出狂だと言う事実」の続編ですが、まぁ前作見てなくても楽しめる内容にはしたつもりです。
前作以上に下ネタフィーバーしてますんで、苦手な方はご注意を。
セリフで振り返る前回のあらすじ。
「へっへっへ……え?」
「サンタクロース?」
「新感覚を求めて!」
……え?
何の事だか全く解らない?
……俺は解りたくない。
「お兄ちゃん、夜だよぉー!」
「……突然どうした?」
「今から服でも脱いで深夜徘徊でもしよう!」
「何っ? その『お兄ちゃん朝だよー、早く朝ごはん食べて学校行こ!』的なノリは!?」
……ウチは今、異常をきした空気の中にいる。
俺の名前は棚橋空也、大学1年19歳。
そして、俺の隣で目を輝かせながら上着を脱いでいるこのバカは妹の棚橋奈菜。
高校1年16歳。
奇しくも犯罪者(露出狂)だ。
……この物語は、真面目な兄と変態の妹がくりなす、とても残念でイタい物語である。
【妹の趣味】
俺の妹の趣味は露出(犯罪)だ。
この犯罪者の話によると、中1の頃から既に露出を嗜んでいたらしい。
俺がこの犯罪者の趣味(本性)を知ったのが去年のクリスマス。
それ以来、俺は再三に渡ってこの犯罪者に露出の自粛、もしくは警察への出頭を促したのだが、コイツは断固拒否。
今でも週3で深夜の町にくり出している。
「ねぇお兄ちゃん」
「……なんだ?」
「くり出している……って、何か違う意味にも取れてエロいよね」
「……は?」
「だから、くり出すって、いわゆる下の大豆的な、ぶっちゃけ性かn」
「はい自重ッ!!!」
【冬ゆえに】
「……じゃ、行ってきます!」
1月のとある深夜。
妹は両親にコンビニへ行くと言って外出。
この時点では、当たり前だが服は着てる。
……この時点でどれだけ止めても、この犯罪者はコンビニとだけ言って外へと出ていく。
実際はコンビニの他にも、近くの人通りの少ない路地裏にも用事があるくせに。
「……お前、いい加減にソレ止めないと、本当に襲われたり補導されたりすんぞ?」
玄関。
俺はコンビニに行く(と言う事にして)出掛ける妹に向かって、毎回毎回言ってる注意をする。
「……お兄ちゃん何言ってんの? 私はコンビニ行ってちょっと飲み物買ってくるだけだよ?」
そして毎回毎回とぼける妹。
「……本当にか?」
「本当だよ!」
「何買ってくるの?」
「飲み物だよ!」
「どこのコンビニ行くの?」
「向かいのファミマ!」
「オススメの脱ぎスポットは?」
「三丁目の路地裏! あそこは人通りも少ないし、街灯もあんまりない……あ」
「…………」
「…………」
【またしても】
翌日、夜遅く、バイト帰り。
「へっへっへ、さぁ見たいだけ見な……あ! あああぁぁぁ……(焦)」
近所の路地裏で、またしてもコート1枚を羽織っただけの、歩くワイセツ物と出くわした。
向こうも今度は一発で俺だと分かったらしく、えらくテンパっている。
「……よぉ変態」
「あああぁぁぁ……いや、あの、その、私は……へ、変なおばさんです!」
だっふんだ。
「……あ、もしもし警察ですか? あの、今露出狂に襲われてまして、はい。場所は三丁目の路地裏」
「お兄ちゃん、慈悲だよ! 私に慈悲を恵んでよっ!」
【公園】
「お前、いつもここで服脱いでたのか……」
「そう! 街灯ないし、夜は人もいないし!」
お縄につかせようとしたが、家族の慈悲って事で執行猶予期間を設けてやった俺様裁判官と歩くワイセツ物。
で、俺達はこの犯罪者が服を脱ぎ、隠してあるという公園までやって来た。
ちなみに普通の、滑り台やブランコのある小さな公園だ。
「……お前さ、コート1枚で寒くないのかよ?」
「慣れだよ、慣れ」
季節は冬。
しかも夜。
この犯罪者が着ているのは本当にコート1枚、裾はギリギリ下を隠しきれている程度の長さ。
だから走ると危ない。
それ以外は本当に何も身に付けてなく、下着はもちろん、靴や靴下すら履いていない。
本格的な露出狂だ。
「えっと、この草木の茂みの中に服を……」
公園の隅っこの茂み、草木をかき分け脱ぎ捨てた服を探す残念で残念な残念すぎる妹。
四つん這いになり、草木の中を慣れた手つきで進んで行く。
「……ったく」
四つん這い→つまり後ろからだと見えてしまうので、俺は仕方なく視線をそらす。
全く……本当になんでこんな人間に育ってしまったのだろうか、うちの妹は。
お兄ちゃん、悲しくて涙出てきちゃうよ。
「あれぇ? 確かこの辺りに……」
がさごそと背後の茂みから聞こえる、ある意味残念な音。
もしかして野外外出の度に毎回こんな事を?
そういや最近、自宅の風呂場が泥で汚れてたりするのは、コイツが原因か?
「ひゃうっ!」
「……ん? どうした?」
背後から聞こえた、妹(認めたくはないが)の悲鳴じみた声。
「いや……草の先っちょが私の先っちょに当たって……」
「……はぁ」
もうため息しか出ねぇよ。
【悲劇】
「今茂みの中を探したんですが、服は見つかりませんでした」
「……え?」
突然、さらっと。
茂みの中から出てきた妹が、一言こう言った。
妹の顔は何故か上気していた。
何で?
「え、おま、何? 服ないの?」
逆に普通に服着てる俺が焦る。
「うん。確かにここに服隠しといたんだけど、なんか無くなってた」
「えええぇぇぇッ!?」
何と……まあ。
「多分盗まれたんだと思うな。この辺ホームレスとか多いし」
「ちょ、お前何さらっと言ってんの? 何顔上気してんだよ、少しは焦れよっ!」
「いやぁ……何か、ねぇ」
「何かねぇ……じゃねぇよ! 何? お前下着とかも無いの!?」
「うん。服も下着も靴も全部ない」
「だったら尚更焦れよぉッ!」
【帰宅道】
「ひゃっ、アスファルト冷たっ!」
「そういやお前、今裸足だったか……」
まさかの盗難発生。
盗まれたのは露出狂の衣服。
犯罪者が犯罪者にやられたとか……。
で、仕方なく一旦家に帰る事にした俺と変態さん。
とりあえず変態を自宅外で待たせ、俺が先に家に入り、妹の衣服を家族にばれないよう持ち出し、外で待ってる妹へパス。
庭先で服着て、自宅内へ……この作戦で何とかこの場を切り抜ける。
「くしゅんっ、それに何か寒くなってきた……」
「お前、さっき慣れとか言ってなかったか?」
コート1枚の妹は身体を震わせ、くしゃみを連発。
「うぅ……これだから冬は嫌い……くしゅんっ」
「やっぱりバカだな、お前はバカだ。冬に脱ぐお前はバカだ」
冬の夜、気温は0度くらいだろうか?
ほぼ生誕時のスタイルで夜道を練り歩くとか、自殺行為。
「はぁ……うぅ……」
先程まで俺の隣を歩いていた変態さん。
が、今では俺の後ろの後ろ、一本の電柱に寄りかかり、俯いたまま動かない。
「……くしゅんっ」
「おいおい、大丈夫かよ……」
顔は先程までの上気とはうって変わって、真っ青。
コイツ……風邪引いたな。
「うぅ……ツラい」
「めっちゃフラフラしてるぞお前。バチでも当たったんだな」
仕方なく、妹のそばまで行く俺。
フラフラの妹の額に手を当て、熱を……って、
「お前これ結構あるぞ……ったく」
高熱。
これだからバカは。
俺は妹の前でかがみ、手を後ろに回す。
「何それ……もしかして服従のポーズ? くしゅんっ」
「お前本当に警察へ連れてくぞ……家までおぶってやる。乗れ」
「え……お兄ちゃんの背中……何か……嫌」
「じゃあタクシーで帰るか? 白黒の赤ランプ着きの」
「…………」
しばらくの沈黙の後、俺の背中におぶさってきた奈菜。
俺は背筋を伸ばし、後ろから妹のが見えないようの配慮をしつつ、手は妹の膝の辺りを持つ。
「どうお兄ちゃん?」
「……何が?」
「妹の胸がダイレクトで背中に当たっている感じは?」
「……次何か言ったら肥溜めにお前を捨てる」
【服の行方】
「…………」
俺はフリーズしていた。
家の近く、今路上ですれ違ったハゲのオッサン。
「…………」
今あのオッサン……
女物の服、着てた?
「あ、あの服……」
背中越しに呟く妹。
「今日、私が着てた服だ……」
「…………」
【そして……】
「お兄ちゃん」
「……何だよ」
あと少しで自宅。
背中で感じる妹の身体は冷たく、震えている。
自業自得。
「……やっぱりさ、こういう妹は嫌?」
「嫌」
即答。
「……はぁ」
「何だお前、俺が露出賛成とでも言うと思ったのか?」
「まぁ少しは」
「確かこの辺に牧場あったよな。肥溜めは……」
コイツ何だかんだで何気に元気だな。
「ノーお兄ちゃんっ! 肥溜めって……はっ!!」
「……どうした?」
「あ、あのね。いくらお兄ちゃんにそういう趣味があったとしても、風邪引いてる健気な妹を巻き込むのはどうかと……」
「は? どういう趣味だ?」
「え? だからスカt……」
「……初めてだ。初めて家族に対して殺意が沸いた」
【帰宅】
何とか無事に自宅到着。
俺は1人先に家に入り、何とか妹の衣類を家族にばれずに持ち出し、外へ。
玄関では、妹が家の外壁に寄りかかっていた。
「ほれ服、あとタオル。足汚れてんだから拭いて家上がれ変態」
俺はそう言って衣類とタオルを差し出す。
「ありがと……で、お兄ちゃん。足拭いて」
「……110」
「いや違うの、何か身体曲げると痛くて……ほら、今熱あるし!」
「……ったく」
下着、デニム、Tシャツ、上着と着た奈菜は玄関入口の段差に座り、泥で汚れた足を差し出す。
仕方ない。
俺は妹の前でしゃがみ、タオルで足を拭いていく。
「……せめて靴くらいは履こうぜ」
「何? 靴履いたら下着はいいの?」
「基本全部着るの」
全く……リアルうざい。
露出とか、本当に考えられない。
コイツに羞恥の心はないのか?
「……ふっ」
その時、奈菜が少し笑った。
あ、もしかして足くすぐったかったか?
もしくは普通にイカれたか、脳が。
「……お兄ちゃん」
「なんだ?」
そして、一拍空いて。
「ありがとね、露出狂の面倒見てもらっちゃって」
「自分で露出狂って言ったなお前」
「これでお兄ちゃん、もれなく犯罪援助って事になったね」
「露出が犯罪って解ってる時点でお前は露出を止めるべきなんだッ!」
「……お兄ちゃん」
「何だよ、もう次は助けるどころか警察に……」
「本当にありがと」
「……っ!」
……調子こきやがって。
風邪引いてる中、無理して笑顔なんか作らなくてもいいんだよ。
……露出は犯罪だ。
露出狂はレッツゴーポリスだ。
そして俺はそんな変態犯罪者の……家族だ。
俺は決めた。
絶対コイツを犯罪の道から外してやる……と。
「……お兄ちゃん」
「……何だよ」
「今度お兄ちゃんも一緒にレッツ脱ぎ脱ぎしない?」
「しねぇよ!」