落ち込んだままの翌日
翌朝目が覚めるとすぐに洗面所に向かった。案の定目が腫れている。
タオルを濡らして腫れた目に当てる。
泣いた後のまだ熱い瞼がひんやりとして気持ちいい。
しばらくそうしていると今日は非番のはずの父親が洗面所のドアを開けてそんな状態の春菜を鏡越しに見たのか
「早いな。春菜居たのか?目、どうしたんだ?」
「うん、ちょっと腫れてるから冷やしてる」
タオルを目に当てたままそう答えた。
「そっか」
それ以上は何も聞かず洗面所を出て行った。
父は母と違いあまり深くは追及してこない。
聞きたい事は多分色々あるはずなのだろうがここ最近は気を使っているのか素っ気ない態度が多い。
父の事だから春菜に関しては母にあれこれ質問して母に勘ぐりを入れさせているのだろう。
春菜としては直接父にあれこれ聞かれるよりその方がいい。
父を嫌っているわけではないが思春期独特の(あんまり深く近づかないでオーラ)
を発しているのは自分でも悪いと思っているがわかってほしいとも思う。
顔を洗って学校の準備に取りかかった。
いつものように後ろの出入り口から教室に入る。
席に着くと斜め前の席の冬哉がペン回しをしながら席に着いていた。
すぐに視線を背けて席に着いた。
それから休憩時間になると何度か冬哉の視線がチラチラと感じられたが気が付かないふりをした。
そうして何事もなく午前中の授業を終え昼休みを迎えた。
落ちこぼれ組三人だけの食事中。
「春菜、昨夜はごめんねってどうしたの?目腫れてない?」
葵がメガネの奥の目を大きく見開いて聞いてきた。
「うん、何でもないよ。寝た姿勢が悪かったみたい」
そう言って弁当の包みを机の上に置いた。
「?。あれ?」
やけに弁当が重い。朝はボウっとしていて気がつかなかった。
急いで包んでいたハンカチをほどくと三段重ねになった弁当箱が出てきた。
ご飯とおかずの弁当以外にデザート用の箱が二つ入っていたのだ。
思わず箸を折りそうになった。
「くそーあのババァ」
「春菜?どうしたの?」
少しぽっちゃり風の平口茜がフルフルと震える春菜の顔をのぞき込んできた。