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風と走る金の矢
走れ走れ
一矢の如く
あの子の許へと
翔ぶように
僕の自慢の駆け足で
夕焼け見えたらすぐ走れ
いつものあの子が待っている
ホラ吹きキツネと馬鹿にされ
恨まれ僻まれ疎外され
命からがら逃げ出して
此処であの子に会いました
僕達だけの秘密事
日が傾いたら会いましょう
誰にも言わずにふたりだけ
日が沈むまで遊びましょ
今日もいつものあの場所へ
走って着いたはいいけれど
なぜかあの子は泣いていた
「この、小汚いヤツめ!」
ぱん と乾いた音がして
自慢の足に刺す痛み
あの子の隣に大男
あの子はやめてと叫んでた
何だよ
痛いじゃないか
誰だよ
あの子にこんな顔させたのは
ごめんね最後のお願いよ
あの子は泣いて僕に言う
君が言うならなんなりと
いつもみたいに走ってみせて
ほら、あそこ目指してかけっこよ
あの子の示した矢の先は
とても遠くを指していた
あそこへ行けばいいんだね?
あの子の放った金の矢は
一目散に飛び出した
風よりも一矢より早く
世界の果てまで駆け抜けろ
あの子の笑顔のためならば
二度と会えなくと構わない