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満月の夜は誰かが恋しくなる
満月の夜は独りで部屋に閉じこもる
月の光は僕を照らし
醜い姿を闇の中に晒す
苦痛に耐えられず漏れる唸り声は
時に切なさを孕む
逃げているのに
満月は美しく意地の悪い笑顔で僕を追い続ける
今までも月は僕を追いかけて
これからも僕は月から逃げる
そんな生き方をして早幾年
夜空に浮かぶあの美しい月は
嫌でもあの人を思い出させる
今の僕には苦痛な思い出
それは恋に似た
身を切られるような苦痛
「満月の光は僕にとって眩しすぎるんだ」
おどけて言った僕の言葉に
密かに込めたSOS
あの人は気付いてくれた
それでも傍に居てくれた
だから生きることができた
あの時は
手を差し伸べてくれる人がいた
でも今は
いつの間にか誰も居なくなった
また独りきり
時が止まったかの様に
僕だけがここで吠える
届かない祈りを織り交ぜた
彼の地のあの人へ向けた鎮魂歌
満月の夜の狼は小さく泣いている
幾つもの満月をそうやって過ごしてきた
小さな狼の満月の夜