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004 月曜日・出社

月曜日、相馬はいつも通り出社していた。

同僚を妄想じみた夢に巻き込んだ嫌悪感とは土日をかけてなんとか折り合いをつけ、気持ちを引き締めて家を出た。

思い出しては、何度となく悶絶する休日を過ごすハメになったが、過ぎた事は仕方がない。


会社に入る寸前、前方に見慣れた姿を見たので一応声をかける。


「おはよう石上(いしがみ)


「おう、おはよう相馬。今日の訪問件数やばいわ、1日24時間じゃ足りない」


「俺の分けてやろうか?代わりに新規の案件くれ」


「馬鹿なことを」と言わんばかりに相馬の言葉に鼻で笑って応えた男の名は石上湊(いしがみみなと)

彼もまた同期の1人であり、同じ営業課の人間だ。

細身で高い身長、後ろ姿だけでも十分に特徴的である。

入社して間もない頃、新人らしく得意先への挨拶回りに行くとその先々で容姿を賞賛され、芸能事務所に紹介したいなんて言い出す社長も現れた。

そしてその話は、石上の教育係としてその場に居合わせた先輩によって瞬く間に会社に知れ渡り、伝説となった。

女性社員からの人気も高かったが、彼女と同棲しているという噂が流れたせいで、告白するような強者は現れなかった。

正確には、彼女ではなく妹らしいのだが、未確認なのでその真偽は分からない。


「あんまじろじろ見るなよ。惚れたのか?」


考え事をしていたら無意識にずっと顔を見ていたらしい。

その言葉が夢で見た須藤と重なりフラッシュバックする。


「んなわけあるかっ!」

(くそっ、せっかく落ち着いたってのにこいつは!)

「げ、なんかそのマジっぽいリアクションやめろよ。・・・なんか顔も赤くないか?ちょ、マジかよ。ぇえー」


「違う!マジで違う!そういうのじゃない!」


これ以上は更に墓穴だと判断して石上を無視して足早に会社に入る。

あの手の話を間に受けるような男ではない。

きっと今頃様子のおかしい相馬の様子に、笑っていることだろう。



廊下を何歩か進んだところで壁に手をつき、目を瞑り長く息を吐き出して、動揺を落ち着かせようと試みる。

しかして災難は続く。


「あ・・・」


目を瞑って3秒も経っただろうか、落ち着く隙も無く目の前から女性の短い声。

心臓が飛び跳ねるとほぼ同時に目を見開き、声の主と目が合う。


「須藤ぉ!おは、おはよぉ」


声が裏返った。

気持ちを切り替えて会社に来たつもりだったが、こうなると何の意味もなかった。


(やばい絶対顔に出てる終わった終わった終わった)


「お、おはよう相馬。今日も頑張ろうね」


あからさまに目を逸らし、くるりと背を向けて足早に去って行く。


「え、ぁあ、またなー?」


背中にかけた声が届いているかは分からなかった。


(どういうことだ?一瞬で分からなかったけどなんか様子おかしくなかったか!?俺が妄想変態野郎ってバレてる!?いや誰が妄想変態野郎だ!あれは夢だってばバレるはずがないって)


「お前何やってんの、なんか今度は顔青くなってね?次は黄色か?」


いつの間にか追いついて来た石上が顔を覗き込むように隣に立っていた。


「何って何やってんだろうな。わかんねえよ、どうしたらいいんだよ」

「んー、とりあえず働け?」

「確かにな。とりあえず仕事して現実逃避するわ」

「仕事こそ現実だよばーか」


軽口を叩きながら2人で営業課の部屋に入って行く。

今日もいつも通りの1日がはじまろうとしていた。


「こんなに疲れてるのにまだ朝かよ・・・」

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