表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/43

029 裏話〜二人〜


相馬が二人に黙って集合的無意識の世界に入り、コートの男と戦う事になった日の夜。

須藤は眠りにつく準備を済ませて待っていたが、いつまで経ってもメッセージが来ない。

手に取ったスマホの画面の明かりが、暗い部屋を薄く照らしては、暗闇に戻る。そんなことを、何度も繰り返している。

嫌な予感がするが、メッセージを忘れただけかも知れない。最近は頼りになると思っていたが、基本的にはあのやる気が無くて、仕事の要領も良くはなさそうな同僚なのだ。

凛にはベッドに入った事をメッセージで送ってしまったので、もうあまり待つ事もできない。


今日は忙しかった。相馬も忙しかったのか一度も姿を見ていない。

最後に見たのは夢の中。ひどく落ち込んでいたようだったが、同時に悔しそうでもあり、あの不気味な大男に対して怒っているように見えた。

少し危うくも感じたが、心は折れていないようで、信じる事にした。

相馬にも信じて欲しい。あんなにすごい動きはできないけれど、きっと何かできることがあるはずだ。

必要ならば囮にだってなってやるとさえ考えている。

怖くないわけはない、でもそれ以上に覚悟を決めたのだ。


(まずい、眠れない)


寝付きは良い方だ。しかし嫌な予感が大きくなるばかりで、考える程に眠りは遠くなる。

諦めて起き上がり、念のためにと用意していた睡眠導入剤を飲む。

間も無く眠気がやって来る。


(よし、これならいける。相馬のことも気になるけど、そもそも眠ってないのかも知れない。とりあえず凛ちゃんと合流しよう・・・)



夢の中で目を覚ます。電車の中だった。

隣には凛がいる。どうやら凛の肩を借りて眠っていたということらしい。

周りの景色や、案内に目を凝らして確認すると、次がいつもの駅。


「起きて、凛ちゃん」

「あっ、おはようございます・・・夢です?」

「そう、夢。そろそろ降りるよ」


眠そうな足取りの凛を支えて、駅に降りる。

どこから乗っていたのかなんて覚えがない。

真っ直ぐに駅から出て夜の街を見回す。

スマホを取り出し相馬にコールするが反応は無い。


「相馬さん来てるんですかね?待ち合わせしてます?」

「ううん、してない。今日は会社でも会ってないし」

「・・・二手に分かれて探しましょうか」


凛も昨日の様子に、ただならぬものを感じていたようで、決定は早かった。

二人で別方向に走り出す。

須藤は会社へ、凛は繁華街へ。この二つの距離は大して離れてはいないが、やはり一番可能性が高い場所であり

、真っ先に探した方がいいと思った。



須藤は会社に到着したが、すでに施錠されて中には入れない。会社の周りをぐるりと周り、灯りのついた部屋がないか、物音はしないか確認していく。


「いない?どこ、相馬・・・」


スマホを確認するが連絡は無かった。




凛も繁華街へ到着。アーケードの前に立つが、予想外に人が多く、週末の夜のようだ。


「え、なんで?平日だよね。夢だから?」


焦りが加速する。

この中から相馬を探す?できるだろうか。そもそもいるのだろうか。

しかし嫌な予感がする。昨日の様子は普通ではなかった。とりあえず左右を見ながら、アーケードの端まで真っ直ぐ走る。

本当はひとつひとつの店まで、しらみ潰しに探したかったが、そんな事をしていたら、時間がいくらあっても足りない。外からその姿が見える事を祈る。

だが見つけられない。

次にアーケードの隣の道を探してみる。

アーケードの半分くらい走っただろうか、明るく賑やかな店が軒を連ねる通りとは、反対に歩いていく人達が何人もいる。

足を止めて、人々が向かっていく方向に顔を向けると、耳慣れない音がした。


「工事・・・?」


先に歩いていく人達を追い抜き、音の正体を確かめに行く。公園が見えて来ると、その入り口に人だかり。

そして公園の中心に人影のようなものが二つ。


「いた!・・・えっ」


暗い公園の中で何度も交差する影達。

たまに電灯が相馬の姿を照らし出す。傷だらけで、血だらけだった。

そしてその動きに、思わず息を呑む。

話には聞いていたが、ここまでなんて。

人間にこんな動きができるのだろうか。

そして対峙している大きな男は、なぜ人にこんなに酷いことができるのだのうか。

我に返り須藤に電話をかけ、震える声で状況と場所を説明した。

自分でも何を喋っているかよく分からないほど狼狽していたが、須藤は状況を汲んでくれて、すぐ来てくれるという。


「相馬さん・・・!」

「君!危ないぞ!」


駆け寄ろうとしたところを、スーツの男性に腕を掴まれ止められる。

力がかなり強く、腕を振るが、凛の力では振り払えない。


「でも!でも!あのままじゃ死んじゃう!」

「ほら、今警察が来るから!」


言われて気付くと、サイレンの音。それも近付いてきている。


そして間も無くして到着。

ドアの開閉の音が響き、警察が公園の中へ走って行く。須藤の姿も見えた。

安心して腰が抜けたように座り込むと、野次馬達は用が済んだと言わんばかりに、凛だけをその場に残して散って行く。

少し距離はあるが、警察と、須藤の背中と、倒れている相馬が見える。コートの男の姿はいつの間にか無い。

段々と視界が暗くなっていき、そこで意識が途絶えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ