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028 結束


あの時何が起きていたのかは、それぞれが必死でそれどころではなく、状況を正しく把握できている者は三人の中にいない。


野次馬の次に現れた、あの警察は須藤が連れてきてくれていた。

相馬を探し回り、野次馬のその先に目標の人物を見つけた凛。だが明らかに様子が異常だ。

そして手分けして離れた場所にいた須藤に電話をかけ、警察を連れて来てもらった。

相馬が暴走行為をしていても見向きもしない警察が、あの時ばかりは、呼びかけに応えてくれたうえに、即座にパトカーまで出してくれた。


「人だかりができて、事件性があるから警察が来た・・・?しかしその前に野次馬達はなぜ集まって来た・・・?」

「騒ぎの大きさ、ですかね?」

「前回も今回も、騒いだのは相馬とあの男の二人なんだよね。なんなら前回は私がいて、叫んでるから騒がしかったはずなんだけどなぁ」


三人で首を捻るが、これも答えは出ない。


「街を散策しながら色々試してみるしか無いかー」

「そうだね。あ、私もう一つ試したい事があるんだ。この前うち・・・や、この前相馬が言ってた眠りの質と夢の関係ね」

(こいつ今泊まった事言いかけたな・・・)

「お酒飲んだり、睡眠時間が短いと夢は見ないというか、あの世界には入らないんじゃないかって説」

「え、そうなんですか?」

「凛ちゃんこの前オールナイト上映行ってたでしょ。あの日、帰ってから眠ったけど、夢は見てないって言ってたよね。午後から予定があって、そもそも仮眠くらいしかできてないって」

「あ、確かに・・・」

「私も相馬も夢を見なかった日って、夜更かししたのに、次の日もほぼいつも通り起きた日なんだよね。普通の夢とは違って、あの世界ってある程度の時間眠らないと入れないんじゃないかなって」

「俺は酒飲んだ日も見れないんだよ。眠るのは早くなるけど眠りが浅くて」


酒の感覚を凛は共感できないようだったが、三人で話し合った結果、夜更かしを今夜にでも試してみようという事になった。

相馬としてもダメージの残る体で、またあの男と対峙はできないので賛成した。

凛と三人のグループチャットを作り、話を共有しやすいようにしておく。


「これが成功したら、無理にあっち行かなくていい。睡眠不足にはなるかもだけど、あの男はなるべく早く俺が何とするから」

「まーだ、そういう事言う?」

「いやいや、ネガティブな意味じゃなくて!立ち向かうのが正解って訳じゃないだろ。無理にやる必要ない」

「そうですけど・・・やっぱり頑張ってる人がいるって知ってるのに、自分が楽するのは気になっちゃうっていうか。楽しく生きられない気がします」

(まぁそりゃそうか。できれば平和に暮らして欲しかったけどー)

「相馬こそ本当にいいの?リーダーとか調子のいい事言っておいて今更だけど・・・全部を見たわけじゃ無いけど、生き残るだけなら、一人ならなんとかなるんじゃないの?」


確かに一人なら高い確率で逃げ切られるし、明晰夢なんて子供の頃からの事だ、毎日見たって構わない。

しかし、どこかで知った人間が不幸に遭っている。

理由もなく、他人の悪意にさらされている。

そして最悪なことに命まで奪われる。

そんな理不尽な事があるだろうか、許されるわけがない。

ましてや今の自分には、それに対抗できる術がある。やらないわけが無い。


「大きな力には大きな責任が伴うってやつだよ」

「あ、ベンおじさん・・・!」


目を輝かせる凛。映画サークルはさすがに知っていたか。

名言の即ネタバレをくらい格好つかなかったが、気持ちは本物だ。凛も言っていたが、このままでは楽しく生きられる気がしない。

あんなに好きだった夢は地獄に、気の置けない同僚は不幸に、そして同僚の妹まで巻き込まれている。知っている人間には笑って長生きして欲しい。ここで逃げて生き延びたところで、他人の不幸を知った自分だって、長生きできる気がしない。


「とにかく俺達は今日から運命共同体だ。俺が暴走したらぶん殴ってくれて構わない。改めてよろしくな」

「おっけー、頼んだよリーダー」

「よろしくお願いしますね!リーダー!」

「俺も覚悟を決めた!やるぞお前ら!まずは今日、夜更かしだ〜!」

「ふへっ、しまらねえ〜!気合入れて夜更かしって」


須藤のツッコミに三人顔を合わせて笑う。

そこから和やかに談笑が続いた。

あまり空気が重く無いうちに、気になっていた事を聞く。


「そういえば2回見た事になるけど、やっぱり須藤はあいつに覚えは無いのか?」

「無いよ。一度見たら忘れないでしょあんなやつ」


顔をしかめてはいるが、せいぜい馬が合わない同僚の愚痴でも言っている程度のテンションに、安心して話を続ける。


「身に覚え無いとは言ってたけど、気にもならないのか?」

「なるよそりゃあ。でも考えても仕方ないしなぁ。タケさんを殺した時の現場を見られたから。とか?いやそれはないかなぁ・・・」

「敵にとって不都合な情報を知ってしまったから。っていうのはどうですか?玲奈さんって、タケさんって方に教えてもらって色々詳しいじゃないですか。ベタかも知れませんけど、不都合な情報を消すためにとか。映画ではありがちかなって・・・不謹慎ですみません」


焦って何度も頭を下げる凛、それを止めようとする須藤。

相馬はその様子を見てはいるが、視界を素通りして、思考を深める。

凛の言う通りなら、一度目の邂逅の時に逃すはずはない。と思う。


(あいつの速度と力なら、軽い須藤とはいえ、大人一人担いで走る俺に追いついて、殺すなんて出来ないはずがない。警察が怖い?捕まる事を恐れている?いや、それはなんというかイメージが違うような)


次に対峙したら、今度こそ何か分かるのだろうか。

しかしこのダメージを残して、今夜は会うわけにはいかない。

今夜は会わないための対策だ。

夜まではまだ時間がある。部屋には仲間達がいる。

次こそはもっとうまくやれるはずだ、三人でいるとそんな気がした。

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