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021 合宿のように


交代でシャワーを浴び、眠りに入る挨拶を交わしたらそれぞれ枕に頭を沈める。

いつも通りの軽口で「先にシャワー浴びて来いよ」とでもかましてやろうかとも思ったが、ついさっきまで気まずかった相手と、このシチュエーションに自分の方が耐えられないと思って止めた。


使い慣れないジャンプーや、ボディソープはやけに良い匂いに感じた。

部屋着は須藤の兄が置いて行ったというスウェットを借りる。袖も裾も少し余る。割と小柄な須藤だが、兄はそうでも無いのかも知れない。

服も枕も布団も慣れない匂いで、どっちを向いてもすぐ近くに須藤がいる気分になる。

ベッドと高低差はあるとはいえ、実際に近いのだが。

会社では仲の良い同期とはいえ、こんなことに巻き込まれるまで、プライベートでの干渉なんてほとんど無かった。

相馬は緊張している自分を意外に思ったが、あまり意識するのもおかしいかと思い、大人しく瞼を閉じる。

電気を消してしばらく沈黙が続いていたのだが、ふいに暗闇に声が響く。


「ねぇ、本当に今日はごめんね」

「もういいって、俺もすまなかったよ。正解なんて後にならないと分からないし。でもとりあえず凛に会ったら、詳しく話を聞いて、少しでもあの夢を理解できるようにしよう」

「本当にすごいね、常に先のこと考えてる。ちょっと怖いくらい」

「ビビってんだよ。よくない想像ばっかりしてしまう。だから何もせず立ち止まるのが怖い」

「ううん、助かるよ。私はなかなか踏み出せないからさ。このまま何もしなかったら、追い詰められてどっかで行き止まりにぶつかると思ってたのにさ」

「俺も行き止まりに向かって猛突進してるだけかも知れないけどな」

「でも相馬なら行き止まりの壁も壊して進んじゃいそう。ふっ」


何やら滑稽な妄想に使われているような気がするが、期待されていることには違いないだろう。


「ね、今日から相馬が私達のリーダーね」

「はあ〜?なんでだよ」

「やっぱりリーダーに必要なのは冷静な判断力と、実行力じゃん。いけるよ相馬なら、私がまた暴走したらよろしくね」

「め、めんどくせえ・・・!それにどう考えても須藤の方が備わってるだろその能力。ボーナス査定見比べてみるか?」


会社からボーナスと共に渡される社内評価。成績はもちろん、勤務態度や社交性にまで点数が付けられる。初めて見た時は社会人になってまでこんな通信簿のようなものがあるのかと眉間に深い皺を寄せた。


「まぁそうだね。見なくてもそこは私の方が優秀で評価されてるのが分かるよね」


「おい」と抗議の声をあげるとベッドからはくすくすと笑い声がした。


「でもそういうんじゃないよ。分かってるでしょ」

「まあ・・・おい、もう寝ろよ。そろそろ丑の刻参りの人達も動き出すぞ」

「いいじゃんどうせ休みなんだから。なんか予定あるの?」

「今日できなかった買い物をするつもりなんだけどお!?」

「ごめんて・・・」


改めて眠りに入る宣言をして体の力を抜く。

眠るのは得意だ、1分もかからない。

先程までの緊張もいつの間にか無くなったので、これで一瞬で眠りに入れる。


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