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Last Chapter

「結局、『宝福』を使用した影響ってどうなったの?」


 あの事件から一週間が経過し、次元観測装置が受信する膨大なデータと睨み合いを続けていた私は、ふと気になった事を尋ねていた。

 私の言葉を皮切りに、作業に疲弊していた仲間達がここぞとばかりに話を広げていく。


「やっぱり、新たな世界線が生まれたとかですかね?」

「けど、それはまだ観測出来てないし……」

「量が多過ぎてまだ受信出来てないだけかもしれないな」


 などと、それぞれが持論を展開していく様を眺めながら、私は今回の原因となった別の世界線の私へと思いを馳せた。

 技術班の話では『宝福』には別の私にも祝福が届くように設定が為されていたようだが、無事に届いたのか気掛かりだった。

 過去の自分を消し去ろうとしたくらいだ。こちらの祝福が届いたところで、すげなく突き返されてもおかしくはない。

 だが、あれ以降次元観測装置が危険を知らせるような事はなかったし、向こう側の状況を具体的に観測出来なくなってしまったのだ。それについては推測の域を出ないが、今回の件でこちらと向こうの関連性だか類似性が薄れたのかもしれないとの事だが、はっきりとした事はまだ分かっていない。だが、きっと向こう側も良い結果に辿り着いたのだと、勝手に信じる事にする。

 技術班は解析に力を入れてくれているが、このまま分からないままでも良いと思っている。

 前世の私を助けた事にもどんな影響があったのか不明のままだが、それを含めて全てを詳らかにするよりも、想像の余地があった方が良いように感じたからだ。


 —―これを言ったら、凄い詰められそうだけど……


 まぁ、頑張っている仲間に水を差すつもりはないので、こちらの思いは胸の内に留めておこう。


 そう言えば、2025年の私についても観測が難しくなってきているとの報告を受けていた。

 こちらについても『宝福』の影響で、こことは違う未来へと歩みだした影響だろうという見解だった。

 今はまだ辛うじて観測出来ているが、そう遠くない未来には全く違う世界線になるのだろう。

 そう思うと、つい郷愁が顔を覗かせてくる。

 皆が議論に花を咲かせている傍らでコンソールを操作し、モニターに過去の私を映し出す。

 丁度配信中のようで、懐かしい画面の中で楽しそうにしている。


『—―痛っ!? ちょ、なんで!!?』


 かつての私が苦悶の悲鳴を上げている。

 どうやら電流が流れるギフトを投げられて、リアルに苦しめられているようだった。

 それが聞こえたのか、仲間達が一斉にモニターを覗き込んでくる。


「懐かしいですね」

「いやぁ、よく投げたなぁこのギフト」

「その節はドーモ」


 非難を込めた視線を向けると乾いた笑みが返ってくる。

 今となっては笑い話かもしれないが、あの時は本当に大変だったんだからね?


『もぉ~、なにこれ? バグなの?』

「あはは、そう言えば謎のおかわりがあったよね」

「あれって結局誤作動だったんですか?」

「ん~、たぶんそうだと思うけど……」


 記憶を呼び起こしてみるけど、結局原因は分からず仕舞いだったような……


「あれ? このログ……」


 突然声を上げた一人に視線が集まる。

 どうしたのかと問い掛けると、


「いや、折角だから観測データと照会してたんだけど――さっきのおかわり電流と『宝福』の欠片がその時間軸に到達したタイミングが一致してて……」

「それって、もしかして……」


 皆で顔を見合わせる。

 コンソールを操作して、次に『宝福』の欠片が到達する予測時間を確認する。都合よく残り10秒後という事で、彼の推測が正しいものなのかを固唾を飲んで見守る。

 果たして――


『——ッ!!? ほんっと無理なんだけどーー!!』


 結果は見事に一致。

 偶然も二度続けば必然である。

 皆の中で同じ結論に至った瞬間、


「ちょ! マジかよ!!」

「そんなことある!?」


 一斉に笑い声が弾け飛んだ。

 あぁ、なんという事だろう。

 まさか、あの時の謎がこのタイミングで解き明かされるとは思ってもみなかった。

 かつてを守ろうとして、その結果の影響で、昔の自分にささやかな危害を加える形になろうとは。

 だが、あの時の面白さが思い返され、皆が一様に腹を抱えて笑っている。

 その光景を見て、どんな世界になったとしても仲間達がいればきっと大丈夫だと、そう思えたのだ。

 だから、


「がんばれ」


 ふと呟いたはずの言葉だったが、この場に居合わせた全員とハモってしまい、それにまた笑い合うのだった。





『未来からのほうふく(報復/宝福/抱腹)』 END

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