Chapter1
甜飴といきさんとそのリスナーの方々に捧げます
昏く澱んだ感情が身体の奥底で煮えたぎっている。
かつての輝かしい日々が、今の自分の醜さを露呈し、抗いようのない怒りが身を焦がしていく。
許せない。
この未来に行き着いた事が、自らの選択の結果だと言い聞かせて、無理矢理納得させようとしていた。
けど、駄目だった。
どんな運命の巡り合わせか、私の手にあるソレに映し出された姿が網膜に焼き付けられると、厳重に封をしていた蓋がボロボロになって、閉じ込めていた黒い感情へと飲み込まれていく。
許せない。
許せない。
許せない。
待ち受ける惨め過ぎる未来を予測する事もなく、危機感を抱かず、ただ楽しげに笑っていた過去の自分が許せない。
何がいけなかったのか。
一つ一つの選択は些細な結果にしか繋がっていなかったはずだ。
しかし、それらが積み重なり、気付いた時には取り返しのつかないところにまで来てしまっていた。
馬鹿な自分を呪う日々もあったが、そんな事をしても現状が好転する訳がなく……だから、気持ちを切り替えて、今の自分に出来る事をやっていこうと、そう決めたのに――
「なんで、今更……」
こんな物が手元にあるのだろう。
過去を映し出す手鏡。
いつの間にか握りしめていたそれを認識した時には、既にどういった力を有しているのかを理解していた。
過ぎ去りし日々を映す――だけでなく、時間という不可逆の概念をもねじ曲げて干渉を可能とする超常現象の塊。
そんな馬鹿なと、誰かから聞かされたなら一笑に付していただろう。
だが、それが事実なのだと確信している自分がいる。
「ふ、ふふ……」
吊り上った口角から短く息が漏れる。
あぁ、なんという僥倖だろうか。
後悔に塗れた人生だったが、ここに来て払拭出来る機会が得られるとは思いもしなかった。
転がり込んで来た奇跡を無駄にしないためにも、為すべき事に思考を巡らせる。
「知らしめないと……」
私が歩む道は間違いだらけだと。
夢を見るなど烏滸がましいと。
けれど、あの時の自分が生半可な事で揺らぐ事はないと、よく知っている。
壁が立ち塞がれば力尽くで乗り越え、逆境が押し寄せて来れば前へと進む活力とするだろう。
その果てが、今の自分へと至る事など想像もせずに……
「――だったら」
自分のものではないような、酷く冷淡な声が聴覚を刺激する。
決定的な一線を踏み越えようとする自分を、止める者など存在しない。
だから、唯一残された救済の術を、自らに宣言するかのように言葉を紡ぐ。
「あの日の自分を――消し去ってしまえば良いんだ」




