愛してるを伝えられた私達の歩む道
「やっと……。やっと言えた……。約束を……。守れた……」
「莉緒……。まだ約束は残ってるぞ」
「え?」
唯斗の顔が近づいてきた。
彼の顔しか見えなくなったところで、自分の唇に暖かくて柔らかいものが触れた。
大学の廊下で……。
唯斗と……。
き、キスを……。
してしまった……。
唯斗の顔が離れていったことに、悲しさを感じてしまう自分がいた。
唯斗は不敵に笑った。
「結婚、するんだろ?」
「っ……!」
きっと私の顔は真っ赤だろう。
泣いているせいだからか、キスをされたからか分からない。
でも、いきなりキスされてそんな、赤くならないなんておかしい。
満足そうに笑う唯斗は、私が唯斗を忘れていたことをなんとも思っていないようだった。
唯斗は満足そうに笑っていた顔を急に深刻そうな顔にして、私を抱きしめた。
「良かった。もう二度と、思い出してもらえないんじゃないかって。良かった。本当に……良かった」
「唯斗ぉ……」
私達はお互いを抱きしめながら、気が済むまで泣いた。
泣いて泣いて、何度も「愛してる」を伝えた。
その「愛してる」は、中学生の時にした愛してるゲームとは違う。
お互いの「愛してる」がちゃんと込められていた。
遊びなんかじゃい。
本気の気持ちを、私達は二人で繰り返し綴った。
◇◆◇
「え?お父さんが私が思い出すまで近づくなって言ったの?」
「あぁ。舞菜が近くでお前の様子を見てくれていたから、思い出しそうだったら連絡してくれって伝えておいたんだ。そしたらさっき連絡があって」
だから唯斗がうちの大学にいたんだ。
私達は泣き止んでからカフェに入った。
唯斗の大学は私達と違う。
だから、なぜ私達のいる大学にいるのか気になっていたんだ。
そしたらまさか舞菜が連絡して呼び出していたなんて。
「舞菜のところに行く途中でお前に会ったから、まぁ良かったっていうのかな?」
「舞菜もそのうち来るんじゃないかな?」
外からバタバタと足音が聞こえた。
噂をすればというのかな?
舞菜が私達の席に速歩きでやってきた。
「おい唯斗。何で僕をほったらかして莉緒とイチャついてるんだ?ああん?」
「人相悪っ!さっきまでの舞菜はどうしたの!?中身だけ別人になった!?」
「これがこいつの本性だ」
「嘘だろぉ!?」
舞菜の本性を初めて知った。
まさかこんな人相が悪かったなんて。
あんなにいい子の舞菜は一体どこへ!?
というか一人称が「僕」になってる!?
「舞菜〜?良いのか?莉緒の前だけど」
「もう良いよ。猫をかぶるのも疲れるからな。それより、僕をほったらかして莉緒とイチャついてた君を今すぐぶん殴ってやりたい気分」
「良いぞ」
「おうおう、表出ろやごるぁあ」
舞菜の印象が変わりすぎて怖いんだけど。
その後、飲み物を飲み終わった私達は外に出て、唯斗は舞菜にぶん殴れていた。
中学生のときのような関係に戻れて、私はすごく嬉しかった。
◇◆◇
「よっしゃぁ!仕留めるぞぉ!」
「それさぁ、その服着て言っちゃ駄目なセリフじゃないか?今から真っ白なドレスを血で真っ赤に染め上げる気かと思ったわ」
「サイコパス思考の舞菜とは違うんですぅ」
私は控室でお化粧をしてもらって、真っ白でおしゃれなドレスを着ている。
これが最後の勝負だろう。
まだ終わってない。
完全に落とす。
落として浮気なんてさせないようにする。
「莉緒、入っていいか?」
外から唯斗の声が聞こえた。
よっしゃぁ!
これで唯斗を仕留めるぞ!
「いいよ」
唯斗が部屋に入ってきた。
今の私、正直かわいい。
だから絶対落ちるだろう。
「唯斗!見……て……」
唯斗にドレスを見せびらかそうと思って、声をかけようとしたけど……。
唯斗がかっこよすぎる。
フィルターがかかってるよ!
なにこれ!
私の目を潰しに来てる!?
白いスーツを着ている唯斗の髪型がいつもと違うのが攻撃力を増している。
舞菜は私を可哀想なものを見るような目で見てくる。
その視線が痛いけど、こんなイケメンを見て平常心でいれる!?
無理だろ!
「いや、いけるだろ」
「心読んだ!?」
舞菜が私が心の中で叫んでいたことに返事してくれたことに驚いた。
読心能力でもあるのかな?
「おい、新郎を差し置いて何をしているんだ?」
「うるさいクソバカ」
「さっさと出ていけ」
「横暴なやつ」
舞菜はそう言って控室を出て行った。
確かに参列者はそろそろ会場にいないとだもんね。
「莉緒」
「なに?」
「約束、ちゃんと果たせたな」
そう言って笑う唯斗の目は、ひどく優しかった。
くすぐったいような、恥ずかしいような。
唯斗の心の底からの笑顔が愛おしい。
「唯斗、私は案外嫉妬深いんだよ?」
「知ってる」
「浮気とかも絶対に許さないよ?」
「する気もない」
「後悔しても知らないよ?」
「後悔なんてするわけない。俺が俺の意思でお前を好きになった。それを後悔なんてしない。もちろんお前にもさせない。自身がないのかもしれないけど、俺を信じてほしい。お前のことが大好きな俺のことをな」
何度も見ている唯斗の真っ直ぐな瞳は、いつもに増して真剣だった。
私も少し微笑んで頷いた。
「お二人共、そろそろ会場に」
「「はい」」
私達は二人で会場に行った。
歩幅を合わせてゆっくりと。
私達はこれからもすれ違いがあるかもしれない。
それを、乗り越えたい。
中学生のときのようなことにはなりたくない。
大丈夫、二人で歩幅を合わせればきっと、どんな困難にも乗り越えていけるはずだから。
「あ、莉緒。なにか勘違いしてないか?」
「え?」
扉の前で唯斗が不意にそう言った。
勘違いなんてしてないけど……。
「俺はとっくの昔にお前に落ちてるぞ」
「聞いてたの!?」
私達は進んでいく。
どんなに辛いことがあっても、二人で幸せになる未来を掴むために。
人生のゴールまで、唯斗と一緒に歩いてみせる。
これは絶対振り向かせたい私と絶対振り向かない君の、すれ違いのお話。
みなさんこんにちは!春咲菜花です!最!終!会!ついに「絶対振り向かせたい私と絶対振り向かない君」が完結しました!やり遂げました!年越しに間に合ってよかったです!次シリーズはどうしようか迷う一方で、お正月に何しようかという気持ちがあります。次は異世界転生系にしようかなぁと思っています。今年また新シリーズを始められるかはわかりませんが、とりあえずお楽しみに!ここまで付き合ってくださりありがとうございました!またお会いしましょう!




