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社長令嬢の私と巻き込まれた君の脱出劇

「それ相応だとは失礼だな」


寒いどこかの倉庫に、クソ教師の声が響く。

私は嫌いな人に対してはだいぶ態度が悪くなってしまう。

そこは許していただきたい。


「とりあえず、私はいいんでもう一人を開放してもらえます?」

「それは無理だ」

「無関係な人まで巻き込んで何をする気?」

「情報が漏れるのを防ぐだけさ」


私が聞くと、クソ教師は不気味な笑顔を見せた。

背筋が凍るような笑顔と言葉にはどういう意味が込められているのかすぐに分かった。


「唯斗を殺す気か!?」

「その通りだ。殺せば情報は外に漏れないだろう?」

「安心してくれ。君は対象外だ」


自分が対象外だから、「はい、そうですか」で唯斗を殺させるわけがない。

誘拐をしたら、他のどんな犯罪もチャラになると思っているのだろうか。

狂ってる。

コイツらは本当に狂ってる。


「殺人にも手を出すつもり?」

「誘拐も殺人も同じだろう?」

「同じ時に重罪を犯した方が、罪は軽くなると思わないかい?」


あー、もう駄目だよこのクソ共。

クソすぎる。

他人の命を一切大切にしようとしていない。


「しばらくそこで待っていろ。息子も連れてきたと言ったが、仕事が入ってしばらく戻って来なくなった」

「一生戻って来なくていいです。あわよくば死にさらせ」

「言い過ぎやろ」


老害とクソ教師のが部屋から出ていこうとした。

私はそれを止めて、ある相談をしようとした。


「待て」

「何だ」

「手足の縄をほどいてくれない?窮屈でならないの。それとも、手足に傷をつけるつもり?」

「……」


彼らは素直に私の縄をほどいてくれた。

それだけで、この場所から出るのは難しいと分かった。

解き終わったら、老害とクソ教師は出て行った。

唯斗はまだ眠っている。

早く起こさないと。

私は唯斗の手足の縄をほどきながら唯斗に声をかけた。


「唯斗、唯斗。起きて」

「何だよ母ちゃん……」

「悪いけど、唯斗のお母さんになる気はないよ。早く起きて」


何度もそう呼びかけているのに、全く起きる気がない唯斗に私の中の何かがブチ切れた。


「……起きないと、告白の返事しないよ?」

「起きます」

「……」


本当にコイツは何なんだろうか。


「なぁ、どうするんだ?こんな場所じゃ時間も分からねぇぞ?」

「巻き込んでごめんね。唯斗だけでも外に出すから」

「は?お前は?」

「私は……。ここに残る」


早くしないと唯斗は殺される。

それだけは避けたい。

私は殺されることはないから大丈夫。


「何でだよ!一緒に出るぞ!」

「できない。唯斗はここにいたら殺される。私は殺されないから、安心して逃げて」

「でも!」

「死んでもいいの?」

「……っ」

「私まで逃げたら、きっとすぐ追いつかれる。だから、唯斗だけでも先に逃げてほしい」


唯斗は迷ったような顔をした。

彼がもし「死んでもいい」と言ったとしても、私は死なせる気なんてない。

もちろん、自分も死ぬ気はない。

私は唯斗を安心させるために、唯斗に笑顔を向けた。


「これ、お父さんの電話番号。ここには前も連れてこられたことがある。だから、近くに公衆電話があるはず。私はお父さんを待つ。私は絶対に死なない。約束するから」


唯斗は不安そうな顔をやめない。

きっと、不安なんだろう。


「大丈夫、ここに居場所を伝えられるのは唯斗しかいない。私は君を信じている。だから君も私を信じて助けを呼んでほしいの」

「……」

「無事に出られたら、私の気持ちをちゃんと伝える。告白にちゃんと返事をする。だから……」

「……分かった、約束だ。絶対無事でいてくれよ」


唯斗は真っ直ぐな瞳で言った。

アイツらはまだしばらく来ないはず。


「でも、どうやって出るんだ」


私は倉庫の壁に近づいた。

壁の僅かな凹みを探した。


「あった」


私は凹みに指を引っ掛けて、壁をめくった。

レンガが積み上げられていた。


「おい、それをどうする気だ?」

「レンガを引き抜いて外に出るの。アイツらは安易だから、釈放された時にまた私を誘拐するとしたらここだと思ってた。だから、お父さんたちがあらかじめ脱出ルートを確保しててくれたの」

「親父さんすげーな」


感心している唯斗と共にレンガをどけて通路を作った。

唯斗はその通路を通って外に出た。

これで安心できる。


「莉緒、すぐに戻って来るから無事でいろよ」

「分かってる」


私はレンガを元の位置に戻して、壁を塞いだ。

遠くから老害共の声が聞こえたから、私は地面に寝転がって、寝たフリをした。


「ほら、ちゃんといるだろう?」

「本当だ」

「待ってください。岡山唯斗の姿がありません」


老害共は私を起こすために近くによってきた。

体を揺すられ、私は寝起きだと言わんばかりの演技をした。


「なんですか?老害共」

「男をどこへやった?」

「え?あれ?唯斗?唯斗!どこ!?」


私は唯斗の居場所を知っている。

でも、私が逃がしたなんて知られれば唯斗は、この老害ジジイの息子に何をされるかわからない。


「自分の身が可愛かったか」

「愚かな男だ」

「莉緒ちゃん、僕を選びなよ。世の中の男は酷いやつばかりだよ」


私に自分を選べとうながしてくるこのクソニートだって自分勝手で酷いやつだ。


「自分勝手はお前らだよ!クソジジイが!」


私はクソニートをぶん殴って無理やり離れさせた。

それを見ていたクソ教師と老害は私に飛びついてきた。

流石に護身術を習っていても、二人の男には勝てなかった。

迂闊だった。


「クソ教師、お前……。借金返済の依頼はもう引き受けただろう!それ以上、何が望みなんだ!」

「一生遊んで暮らせる金だ」

「ほんっとうにクソだね。公務員なだけでも収入は良いだろうに」

「知らなかったか?公務員の給料が全員高いわけじゃないんだ」


私は逃げ出すために藻掻いた。

しかし、そんな努力も無意味でびくともしない。


「すぐに警察が来るよ。こんな状況じゃどちらが悪者かな?」


クソ教師の力が少し弱くなった。

その隙を狙って私は拘束から逃れられた。


「何をしている!?」

「すみません!」


すぐに追いつかれて、頭から地面に叩きつけられた。


「ぐっ……」


視界がぼやけていく。

これマジでやばいやつ……。

意識が飛びそうになる。


「お、おい。血が……」

「気にするな。これくらいなんてことない。それとも、生徒に情が湧いたか?」


遠くからサイレンの音が聞こえる。

どんどん近づいて来る。

唯斗が呼んでくれたんだ……。

サイレンがすぐ近くまで来たところで、私の意識は薄れ始めた。


「莉緒!莉緒!」


唯斗が走ってきてくれている。

でも、もうこれ以上は耐えられない。


「莉緒!」

「唯斗……。約束守ってくれて……。ありがとう……」

「莉緒!!」


◇◆◇


――五年後


「次の授業はテストだって〜」

「嫌だなぁ」

「莉緒、終わったらクレープ食べに行かない?」

「いきなりだね。いいよ」


私は大学生になった。

高校は地元を離れて、都会に出て少し良いところに入った。

舞菜も一緒だ。

あの事件……。

中学生の時の事件の後、なんだか大切なことを忘れている気がする。

なんだろう。

忘れたらいけない何かが……。


「莉緒?」

「舞菜、質問」

「どうぞ」

「私、何かを忘れている気がするの」


舞菜は首を傾げた。

何かとは詳しく分からない。

でも、私の心にぽっかり穴が空いていることだけは分かる。

寂しいような、悲しいような、愛おしいような……。


――……分かった、約束だ。絶対無事でいてくれよ。


「約束をした人……」

「……」


舞菜は切なげな表情をして、スマホを取り出した。

そして、「先に行く」と言ってどこかへ行ってしまった。

どうしたんだろう。

なにか気分を害すようなことしたかな?


◇◆◇


うーん、どうしたんだろう。


「わぁ!」


考えすぎて、誰かとぶつかってしまった。

カバンが空いていたらしく、物が散乱してしまった。


「すみません!お怪我……は……」


ぶつかった人の顔を見たとき、心にぽっかり空いた穴が塞がっていくような感覚がした。

私はぶつかった人に抱きついた。

思い出した。

何で忘れていたんだろう。

忘れちゃ……。

いけなかったのに……。


「ごめんね、好きだよ。愛してる。唯斗」


私の頬に温かい水が流れた。

私の涙と……。

君の涙だ。

みなさんこんにちは!春咲〜菜花です!今回は誘拐された二人が脱出するお話でした!怖いけれど立ち向かう莉緒に、作者ながらかっこいいと思いました!さて、次回は最終回にする予定です!今までのエピソードにはギチギチに情報を詰めてきました!しかし、最終回はスカスカになるかもしれません!ご容赦ください!では、おそらく最終回の次回の展開をお楽しみに!またね〜!

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