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約束を守る私と約束を破る君の好きの意味

私が書く小説は二作品目です!

『中学生になったら結婚しよう!』


いつか交わした約束。

子どもの口約束。

いつか忘れられてしまう約束。

その約束を忘れることなんてできない。

覚えていたとしても、私は勝手に破ることはしない。

そう思ってるのは相手も同じだ。

そう思っていた。

あの言葉を聞くまでは。


『莉緒との約束?』


唯斗がクラスメイトと教室で話しているのを、私は偶然通りかかってしまった。

盗み聞きするつもりはなかったけど、自分の名前が聞こえてしまったから、気になってしまった。


『犬飼と小さい頃した約束の噂、聞いたことないのか?』

『何でそんな噂が流れてんだよ。莉緒との約束……。……あぁ、あの約束の話か。あれは……』


遠くから聞こえる目覚ましの音。

私は今にも閉じてしまいそうな目を、無理やり開けた。


「あれ……。目覚まし……」


私は手探りで目覚ましを探した。

止まらない目覚ましの音。

手の端に、何かが触れた。

と思ったら、頭の上に重たい何かが降ってきた。


「いった!」

「ちょっと!お姉ちゃんうるさい!……何しとんの?」


妹の澪が部屋に入ってきた。

部屋が隣同士だから起こしてしまったのだろう。


「あ……。頭に……。目覚ましが……」

「もう、そういうの良いから早く起きて!」


澪は私の布団を剥ぎ取った。

私は仕方なく体を起こした。

ベッドから降りて、一階のリビングに梓と向かった。


「全く、まだ起きなくていい私まで起こさないでよ」

「小学生は良いよねぇ、朝が早くなくて」

「お姉ちゃんのせいで早くなったわ」

「中学生の予行練習」

「誰が好き好んでするか」

「おはよう二人共」


キッチンに居るお母さんが、私たちに笑いかけてきた。

澪はすがるようにお母さんのところに行った。


「お母さん。聞いてよぉ」

「澪、お皿運んで」


お母さんは澪の話を聞かずに笑いながら言った。


「そんなことより聞いてよぉ」

「澪?」

「……はい」


あれ。

なんだろう。

お母さんの顔は笑ってるのに、なんか怖い。


「莉緒は顔洗って来なさい」

「分かった」


私は洗面台に向かって、冷たい水で顔を洗った。

顔を上げて、そこにいるのは鏡に写った自分だ。


『……あぁ、あの約束の話か。あれは……。多分果たされないだろうな』


頭を殴られたような感覚になった。

今まで何度も何度も思い出してきた。

なれることのない感覚。


「はぁ」


私はリビングに戻った。

お母さんたちはもう朝食の準備を終えていて、私を待っていた。

私は少し急いで自分の椅子に座った。


「おはよう、莉緒」

「おはよう、お父さん」


お父さん、今日は会社に行くの遅いなぁ。


「「「「いただきます」」」」


我が家はみんなで朝ご飯を食べる。

お父さんはたまにいないけど、大体みんな揃ってから食べ始める。


「そうだ、莉緒。三者面談の日程だが、七月十二日は予定が入っちゃったんだ。先生に伝えておいてくれるか?」

「分かった」


私はご飯を食べ終えて、私は自室に行って制服に着替えた。

彼と同じ学校の制服。


「今日こそ振り向かせてみせるから」


カバンを持って私は一階に降りて、玄関で靴を履いた。


「はい、莉緒。お弁当」

「ありがとう」

「行ってらっしゃい」

「いってきます」


玄関を開けたら、眩しい朝日が目を刺激してきた。

家の前には人の影があった。


「おはよ、莉緒。学校行こうぜ」


私に笑いかけている男の人が、岡本唯斗。

私が好きな人。


「おはよう、唯斗」

「行くぞ」


私は家の門を開けて、庭から出た。

唯斗と一緒に学校に行くのはいつものことだ。

うーん、今日はどうしようかな。

私はしばらく悩んでいた。

悩む私を見かねてか、私の額にデコピンをした。


「いった!」

「うおぉ……。そんな?」


デコピン自体はそんなに痛くなかったけど、目覚ましが落ちてきたところに丁度あたったから、五倍くらいの痛みになってしまったのだ。


「寝ぼけて目覚まし止めたら、なんか落ちてきたんだよね。そこに丁度あたったの」

「それはすまん。まぁ、目覚ましがちゃんと仕事してくれてよかったな」

私は唯斗にジトッとした目を向けた。

「ねぇ、それどういう意味?」

「あ……」

「絶対失礼な事考えながら言ったでしょ」


私は唯斗を小突いた。

ツボに入るようにしたから、多少痛いだろう。


「落ち着けって。そういうところも好きって事だよ」


顔が熱くなった。

簡単に好きなんて言わないで欲しい。


「お、何だ。好きって言われただけで赤くなってんの?」


唯斗はニヤニヤしながら、私にそう言った。

私はムカついたから、唯斗の足を思いっきり踏んでやった。


「いった!何すんだよ!」

「うっさい!死ね!」

「酷っ!」


唯斗が悪いんだ。

私の()()は、恋愛感情がある()()

でも唯斗の()()は、ただの幼馴染としての()()だ。


「なぁ、ごめんって」


唯斗は、私の顔色をうかがいながら謝ってきた。


「怒ってないし」

「絶対嘘」

「り〜お〜!」


私に誰かが思いっきり抱きつてきた。


「おはよう!」

「舞菜!おはよう!」


この子は私の親友の、三井舞菜。

舞菜は私に頬ずりしながらニコニコしている。


「おい三井。俺の莉緒から離れろ?」


舞菜は唯斗の低く冷めた声に反応して、私を離してくれた。

俺の莉緒って。

私はいつからお前の所有物になったんだよ。


「お前の莉緒?いやぁ、意気地無しが何を言うか。私の莉緒だよ?」

「んだとおら」

「あぁ?」


私は二人を無視しながら歩いた。


◇◆◇


「私の莉緒だって言ってるでょ!」

「だから、小学生の時からの関係のやつがほざくな」


まだやってんのかコイツら。


「「莉緒!どっちの方が好き?」」

ついに私に話し振ってきたよ。

どっちが好き……か。


「俺が選ばれるに決まってる。俺はと両思いだ」

「私もなんですけどぉ?惚気けないでもらっていい?」


両思いね……。

幼馴染と恋愛感情は両思いにはなれないよ、唯斗。


「「ねぇ、どっち?」」


こういうときだけ息ぴったりだなぁ、この二人。

私は椅子に座った。

悩ましい。

うーん……。

考え込む私の肩に、誰かが手をおいた。


「俺だよね?莉緒?」

「結城じゃん、おはよ」


南川結城、私のクラスメイトだ。

この三人が揃ったら、かなりめんどい。


「おい南川。莉緒から離れろ」

「汚らわしい。私の莉緒に触れないで」


私だけだろうか、この三人の間で火花がバチバチしてるように見えるのは。

チャイムが鳴って、言い合いは終わった。


◇◆◇


お昼になって、私は舞菜と二人でお弁当を食べていた。


「舞菜、なんで演技してまで唯斗と張り合おうとするの?」

「……バレてたか」


そう、さっきの舞菜の行動は演技だ。

さっきだけじゃない。

舞菜が唯斗の前で取る行動は、半分以上演技だ。


「だって、舞菜は男子が嫌いでしょ?」

「莉緒のためだよ。唯斗が先に莉緒を傷つけたんだ。私が莉緒を独占して唯斗を傷つけても許されるよ?」

「……ありがたいけど、いいの?」


舞菜にそう聞くと、舞菜は優しく笑った。


「大丈夫!」

「……無理しないでよ?」


舞菜は笑って頷いた。


「唯斗は好きでもない人に好きって言ってるのかな?」

「う〜ん」


自分でも、独占欲が強いと自覚している。


「はぁ、今日も振り向かせる作戦思い浮かばなかったな。なかなか強者(つわもの)だなぁ」

「……」

「舞菜?」

「いや、何でもない」


舞菜はそう言ったけど、すごく複雑な表情をしていた。

どうしたんだろう。

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