テイム練習
「お目覚めでしょうか、ご主人様」
ノックの音で目が覚めた
この声は…マリか、もう働いているのか?
「ああ…起きているよ」
「失礼します」
マリは俺の着替えを持って部屋に入って来た
「こちらお召し物になります」
「ありがとう、言葉遣いは簡単に直りそうにない?」
「ううん、ちょっとからかっただけ、もうお昼だよ」
「そんなに寝ていたのか、すぐ行くよ」
マリは部屋の前で俺の着替えを待ち、2人で広間へ向かった
全員席に座っていてあとは俺とマリだけだった
「ごめん、待たせちゃったね」
「気にしないでください、昨日はお疲れだったのでしょう」
「じゃあ、頂きます!」
「「いただきます」」
俺たちは食事をとった
初めてみんなで食事をとる日だがあまり味がわからなかった
原因はハッキリしている、イールの件だ
ラメラは昨日とはうって変わってプリプリ怒っている様に見える
リンと目が合うと軽く頷かれた
これは多分ヒュプノスリープが関係してそうだな
「午前中のうちに御三方には屋敷の管理についてお話ししました、今後は任せて大丈夫です」
「ありがとう、じゃあ大丈夫だね」
「本当はあのバカの役目だったのに」
ラメラはイールが出て行った本当の理由を知らない、忘れていると言ったほうがいいのかもしれない
俺はボロが出ない様にするだけか
「ジン君、イールは帰って来ませんでした」
「そうか…」
「なーにが好きな人が出来たからパーティ抜ける、なのよ、娼館で抱いた女がそんなに良かったのかしらねぇ」
「それだけ、運命的な出会いだったんですかね?」
目を輝かせるマリアは空気が読めない子らしい
「っは!相手はお金もらってるのよ?仕事よ仕事、それに本気になってどうすんのよ」
「でもラメラさんはそれに負けたってことなのでは」
「そうよ!だから怒ってるのよ!あのバカ本当にもおー!」
「後で今後の話をしましょう」
「そうだな」
俺は苦笑いでその場を誤魔化し、片付けを頼んで部屋に行く
少し遅れてリンが来た
「ジン君、ラメラから本当の理由を聞いています」
「俺もイールの手紙で全貌は知ってる」
「そうだったんですか、ラメラにはイールが自分の意志で出て行ったと改変して、ラメラがイールを傷つけたことは隠してます」
「耐えられなかったか」
「ずっと後悔していたみたいです、忘れさせてあげる方がラメラのためだと思います」
「そうだな」
「それとジン君、ラメラも恋人にしてあげてくれませんか?」
「リンはそれでいいのか?」
「ラメラはずっとジン君の事が好きだったんです、それにラメラなら良いかなって」
リンもラメラのことは信用しているんだな、そこに独占欲は関係ないらしい
「でも私が1番ですよ?」
訂正しよう、独占欲は関係あるらしい
もし、逆の立場だったら俺には無理だなあ
「イールじゃないけど複数の女性からアプローチされるのは嬉しいからな」
「男の子はしょうがないですよ」
「でも二股なんてラメラが遠慮しそうだけど」
「大丈夫ですよ、私がなんとかしますので」
ならリンに任せるとしよう、俺から行動を移すと下手を打ちそうだし
「あーいたいた、話はここでするのね?」
「ああ、イールが居なくなったけど新しくパーティを募集するつもりはあるか?」
「「ない(わね)(ですね)」」」
「そうなると俺が前衛か、少しきついかもしれないなぁ」
「もともと今日テイムをする予定だったし前をはれそうなのテイムできたらいいわね、出来なかったらまたその時考えましょ」
「それでいいと思います、どこに行きましょうか」
「まずはテイムがどのくらい大変か試してみたい」
「じゃあ街の外で適当に試してみましょ」
俺たちは街の外へやってきた
街の近くは結界が張ってあるらしく、魔物は寄り付かないらしい
少し離れて小さな池のそばに来た
この辺ならスライムくらいはいるだろ
「あ、スライムです」
「おっけー、手は出さないでくれよ?【調教】」
俺は【調教】スキルを使ってスライムを棒で突っついてみた、スライムは破裂した
「…倒しちゃった?」
「…みたいですね」
気を取り直して2回目、今度はラメラが棒で突っついてみた
俺が倒してしまうのなら他の人にやってもらおう
スライムはぴょんぴょん跳ねながら逃げて行く
「待ちなさい!」
ラメラがもう一度棒で突っつくとスライムは破裂した
弱すぎて無理ってことなのか?
「もう少し別の魔物で試してみますか」
別の魔物を探し、見つけたのはモールモール、モグラの魔物だ
急に足元に出てきて転ばせるくらいしかしてこない悪戯好きな魔物だ
「これならどうだ」
突っついたモグラは破裂した
…攻撃以外で屈服させるとしよう
精神的に追い込めば屈服させられるのではないか思いストレスを与えることにした
「よし、これでどうだろう」
捕まえたモールモールとスライムを縄で縛り、木に引っ掛けて見た、どっちも反応がない
「ダメみたいですね…」
「これは時間がかかるな…」
「ビーストテイマーがあまり魔物を使役していない理由はテイムの難易度なのかもしれないわね…」
「ジン君なら大丈夫な気もしますけどね…」
こんなにテイムが大変だとは思ってもみなかった
なんの成果も得られていないまま3時間が経った
アイテムや食材を目の前に差し出したり、群れの魔物を1匹だけ残して倒し、諦めさせようともした
「テイムするのがこんなに大変だとは思っていなかったわ…」
「今まで調教スキルが上手く行った時のことを思い返して見ませんか?」
「そんなに使ったことないからなぁ、リンと魔族のやつだけじゃないかな?」
「…あんたリンに使ったの?」
「まぁ…多少」
「調教スキルには状態があって、調教、服従、テイムの3種類があるんですよね」
「そう、誰にでもかけられるのが調教、相手を屈服させると服従になる、服従状態が3段階あって1は質問ができる程度、2は簡単な操作ができる程度、3になると割となんでもできるってのと、俺の任意でテイムができる様になる」
「この前の魔族は1だったのね?」
「ああ、相手が本気では無かったにしろ「参った」と少しでも俺を認めた発言をした時点で服従状態の1になったみたいだった」
「それ「やるな!」とか「さすがだな!」とかでも服従させられるんじゃないの?」
「多分可能だ、でもあらかじめ調教スキルを使ってないといけないし複数まとめてかけることはできない、調教→服従→別個体に調教→服従はできそうだ、今試して見たから間違いない」
「ちょっと今って私たちしかいないじゃない!」
「リンは調教スキルを使った瞬間に服従状態3になるからな」
「スキルを使われた感覚がないって怖いわね…解きなさいよ!」
「私はテイムしてもらってもいいのですが…」
2人に使ったスキルを解除して話に戻る
「要は相手に負けを認めさせなきゃいけないのよね、だから攻撃したり、ストレスを与えたりしてたんでしょ?」
「うん、だから物を与えて懐かせられないかなとか、試して見たんだけど、上手く行ってないんだよね」
「もしかしてですけど、人や魔族には感情がありますけど魔物には感情がない、なんてことはないですか?」
「感情かぁ」
「魔物が恐れをなして逃げた話とか聞いたことありませんし、実際戦っていて腕がなくなっても足が無くなっても死ぬまで襲ってくるじゃないですか、もしかしたらそういう生物として作られているのかなって」
「でもこの前街でアクアバードをテイムしている人を見たわよ?」
「アクアバードは召喚獣で生息している魔物はブルーバードですね、見た目が似ていますが別個体のはずです」
「じゃあ魔物のテイムはできないってことか?」
「仮説が正しければ意志のある魔物でないとできないと思います、かなり特殊個体になると思いますが…」
個人的には仮説は間違っていると思う、意志がなければ群れで動いている理由が説明できない
ゴーレムのように主人の指示があって活動しているならともかく…
ん、ゴーレム?
「もしかしたら…魔物を使役している誰かがいるんじゃないのか?」
2人は首を傾げる
「感情がなければ複数で群れを組んで動くことはないと思うんだ、指示を受けたゴーレムみたいに機械的な動きになるんじゃないか?」
「つまり他に主人がいるから新しく俺が主人だ、ってできないってことね?」
「人のもの取ったら泥棒!ってことだね」
「それなら辻褄が合いますね、そうするとダンジョンの魔物はテイム出来なくて、フィールドの魔物は…もしかして誰かが生み出している?」
「多分、だからテイム出来ないんじゃないかな」
「何がビーストテイマーよ、そんなの家畜テイマーじゃない!」
別の仕事につく事があれば酪農家で決まりかな
「他のパーティにビーストテイマーがいないのは魔物のテイムができないからですかね?」
「難しいじゃなくて、出来ないだと役に立たないもんなぁそれで人をテイムしてれば、そりゃ嫌われるよ」
「一度ギルドに行って詳しい話を聞けないかしら」
「その方が良さそうだね」
俺たちは街に戻り、ギルドでビーストテイマーについてわかる範囲のことを聞いた
中には魔物をテイム出来た例もあるという
冒険者がフィールドで魔物の巣を発見し、殲滅した際にその場にあった魔物の卵を持ち帰り、生まれてすぐにテイムに成功した話
スライム好きの冒険者がスライムをぼーっと眺めているとその場で分裂したらしく、驚いてその2匹を捕まえてギルドに持って行き、特殊個体じゃないかとテイムを試すと片方はテイムに成功した話
単体で歩いているゴブリンになんとなくスキルを使って棍棒で殴ったらテイムできた話
最後のはゴブリンの子供が馴染めず1人でいた所をたまたまテイムできた、そう考えればおかしな話ではない
「ジン君の仮説が当たってそうですね」
「2人が推測してくれたおかげだよ、ありがとう」
「どういたしまして」
「ご飯奢りなさいよ!」
「作って待っててくれるんだからまた今度な」
屋敷に戻るとマリアとマリが出迎えてくれた
お風呂もご飯も準備ができているらしく、先にご飯を食べて俺はお風呂に向かった
ラメラとリンは後で入るらしい
「ふー」
これが貴族のお風呂
広い、単に広い!
獅子の口からお湯が出るなんて、おしゃれすぎる
両手を広げられるし足も伸ばせる、宿屋のお風呂はでかい桶に湯を張るレベルだったし、リンと2人で入った時は狭すぎてそれっきりだった
体が密着して良かったけど
「これだけ広いならリンと入るのが楽しみだなぁ」
「エッチなジン君の心の声が漏れてますよ」
驚いて後ろを振り返るとタオルを巻いたリンとラメラがいた
「なんで2人とも!?」
「私たちは後で入るって言ったじゃないですか」
「言ったけど俺が上がった後だと思ってたよ!?」
何よりラメラがいることに驚いた
「いいじゃないですか、子供の時はよくみんなで入った仲ですし」
「もう俺たち大人だよ!」
驚きを隠せない俺に対してリンはニコニコしながら、ラメラは少し照れた表情で湯船に浸かる
そりゃ恥ずかしいだろ、なんで入ってきたんだ
「私たちからジン君に相談があります」
「相談?」
リンが「ほら、ラメラ」とラメラをつっつく
「あー…えっと…わた、私もジンの恋人にして欲しいの!」
「…へ?」
「私もジンのことが好きなの!」
知ってはいるが知らないフリをしないといけない、笑顔のリンからは「わかってますよね?」というオーラを感じる
「でもイールと付き合ってて別れたばかりだろ?気の迷いとかじゃないのか?」
「私は昔からジンのことが好きなの!イールはリンのことが好きで…もしかしたらチャンスがあるかもって少し期待しながらイールと話をして付き合ったフリをしてたの…でもあのバカがハーレムを作るって出て行ったからリンに正直に話したの、そしたら…」
「ラメラならジン君の寵愛を受けるに相応しいと思ったので告白する許可を出しました」
言い方よ
「あとはジン君が承諾するだけですよ?」
リンが言っていた大丈夫ってこういうことか「ラメラ!ジン君と付き合うのよ!」って話になるのかと思っていたけどラメラから来るのは予想外だった
「わかった、俺もラメラのことは好きだし付き合うよ」
「ラメラよかったですね」
「もー長かったわよ…ジンとリンの2人の仲を壊さずに同じ輪に入る方法がリンに認めてもらうことなんて難易度が高すぎるのよ…」
そりゃリンは怖いし
「じゃあ今日から3人で寝るか」
「いいですね」
「はぁ…恥ずかしい…」
お風呂では見えそうで見えないもどかしさを堪能した
今日の夜は色々と話をして2人を堪能するか
「絶対エッチなこと考えてるわよね」
「ジン君は分かりやすいですから」
う、うるさいやい!




