家と家族と別れ
「やっぱり英雄のパーティは優秀ねぇ〜」
ソフィアさんは俺抱きしめ胸を顔に押し当てる
リンの目が本当に恐ろしい、深淵を覗いているんじゃ
ないかってくらい黒い目をしている
なぜこんな状況になっているかと言うと、国王に貰ったお金の使い道について困っていたからだ
朝から皆で相談していたが、やはり新米冒険者、お金の使い道がよくわからない
同じ冒険者で仲の良い人がいるわけでもなく、カムンさんはしばらく王城に残るらしく、ギルドには居なかった
あと信頼出来そうなのはジグさんとソフィアさんしかいなかったため2人を訪ねてきた訳だ
詳細は省いて大金を得たが使い道に悩んでいると相談した所抱きしめられた、と言う訳だ
「ジン君どいて!そいつ殺せない!」
「落ち着けリン、あと無理だ!」
「あんたが振り解けば良いだけじゃない」
「胸ですか!?胸なんですね!?」
「違う!振り解くのが困難なんだ!」
ソフィアさんが怪力とかそう言うことじゃない、押し返そうにも顔が胸に埋まっているから前が見えない、ピンポイントで肩を掴みたいが、もしズレて胸でも触ろうものなら血の雨が降る可能性がある
「もういいです!【ヒュプノスリープ】」
それだ!それを待っていたんだ!
「残念だけど精神魔法は効かないわよ〜エルフには耐性があるのよ〜」
効かないのかよ!俺も耐性が欲しい!じゃなくてどうやって離れてもらおうか…
「なら物理だな」
ジグさんが頭を棍棒で軽く叩くと顔から床に倒れた
力こそ正義…
解放されてようやく一息つけると思ったが、リンが杖を振りかぶっている
「待てリン!」
俺はリンの胸をうしろから鷲掴みにした
「きゃ」
「俺はリンの胸の方が好きだから、ほら、ソフィアさんの胸には触らなかっただろ?」
むにむに
「てん今日一日ずっと掴んでくれてなきゃ嫌です」
むにむに
「夜、夜ずっと触るから、今は機嫌を直してくれ」
「…分かりました、今回だけですよ」
リンは杖を下ろしてソフィアさんの頭を軽く叩く
なんとかなった…
「ワシからもこのバカにはよーく言っとく、すまんかったな」
「コントに見えますけどリンは本気で命を狙うと思いますよ、ジンにベタ惚れなので」
「…肝に銘じておく」
お前だってラメラが他の男に胸を揉まれたら本気で殺しに行くだろ
思っても言わないことにする
「さて、金の使い道だったな、普通はいい武器や防具、スクロールやポーションを買うもんだがこれだけの金貨だと買い揃えても2割も減らん」
「武器や防具を買ってもですか?」
「金で買える武器は性能があまり良くなくてな、分かりやすく言うとEランクの武器を買うためにはE+の素材と金貨、E+の武器を買うにはDランクの素材と金貨が必要になることが多い」
「素材が必要なんですね」
「素材屋に売るより職人に売ったほうが高いからな、お前さん達に持ちかけた話も素材をくれれば作ってやると言っただろ、高ランクの素材を使う仕事は金より価値があるからな」
さすが職人、粋な計らいだ
「お前さん達の装備は殆ど修理で大丈夫だが、ボウズの剣、あれだけは使い物にならねえな、何か素材はないねえのか?」
「1番良さそうなのでフォレストベアの素材ですかね」
「それを貸せ、ちょっと待ってろ」
素材と壊れたショードソードを持って工房へ行ったと思ったらすぐに戻ってきた
「出来たぞ、フォレストベアの牙を素材に作ったベアファルシオンだ、少し重いがボウズなら問題ないだろ」
トイレに行って戻ってきたくらいの速さで作れる物なのか、恐ろしい…
「助かります」
「おう…あぁ金の使い道だったな、家を買うってのはどうだ?4人で住める家を買って家具を買ってギルドが斡旋しているメイドと契約するってのはどうだ?、家のことは全部やってもらえばいい」
家を買う、それは盲点だった
確かにずっと宿を借りるのも金がかかるし、掛け捨てにするのは勿体無い気もする
「悪くないんじゃない?お金が全部なくなる訳じゃないし」
「残った金貨は4人で割ればいいだろ、家かぁもう手に入るとはなぁ…」
「リンはどうだ?」
「賛成です、契約メイドであれば心配なさそうです」
「じゃあジグさん、オススメの不動産屋を紹介していただけませんか?」
「紹介して良いのか?ワシがマージンを貰うことになるぞ?」
「構いません、相談に乗って頂いたお礼です」
「はっはっは、しばらくは酒に困ることはなさそうだな、店番頼むぞ」
床に転がるソフィアさんをおいて俺たちは不動産屋へ向かう
「ついたぞ」
隣の店じゃねえか!
突っ込みたい気持ちを抑えつつ、みんなの顔を見る
みんな俺と同じ気持ちみたいだ、良かった
「おーいガルム、いるかー」
奥の部屋から真面目そうなお兄さんが出てきた
「ジグさん、なんの様ですか?」
「家を探してる客を連れてきた、マージンくれ」
「売れたらお渡ししますよ、初めましてガルムと言います」
俺たちは挨拶をして早速本題に入る
「4人で住める住宅をお探しですか、ご予算はどのくらいになりますか?」
「金貨500枚くらいか?」
「そうね、半分って言ったらそんなものかしら」
ガルムとジグは目が点になっている
なんだ、どうしたんだ?
「お前さんらいくら貰ったんだ…ああいや、聞くことじゃねえな、忘れてくれ」
「えっとですね…一般的な4人で住む家は大体金貨100枚で購入出来るのですよ、一人暮らしだと金貨10枚が相場ですね」
ってことは俺たちが貰った金は一生働かずに生きていけるだけの金をもらったって事みたいだ
「…どうする?」
「別に金が欲しい訳じゃないし豪華な家でもいいんじゃないか?」
「そうね、大きいお風呂なんかあったら良いわね」
「ガルム、金銭感覚はおかしいが冒険者としては優秀なんだ、冷やかしじゃないから安心してくれ」
「どんなお客様でも要望にお応えするのが私の仕事です、皆さんの希望をどんどん仰ってください」
俺たちは希望をまとめて伝えた
大きな寝室が2つ
大きなお風呂
住み込みでも働けるように従業員用の部屋が欲しい
トイレは綺麗
庭がある
門がある
…キリがなかった
「ガルム…なんかとんでもない客を連れてきちまったな、わりぃ」
「何を言いますかジグさん、私にはこれだ!と言う物件がありますよ」
「なにぃ!本当か!?」
「早速内見に行きましょう、ついてきてください」
俺たちは店を出て居住区に向かった
この街は大きく5つに分かれている
いろいろなお店が並ぶ商業区、街の北東
ジグさんやガルムさんのお店、俺たちの宿はここにある
外からの荷物を受け入れる交易区、街の南東
ギルドや神殿のある専門区、街の南西
一般住民が住まう居住区、街の北西
貴族達が住まう貴族特区、街の中央からやや北
貴族特区は狭いが平民は立ち入ることができないエリアになっている
許可を取って中に入るのは商人くらいだろう
俺たちが向かった先は貴族特区に近い居住区
「こちらの住宅になります」
「住宅…っていうか屋敷じゃないか?」
「素敵です…」
「物語に出てくる家みたいだな…」
「何人住めるのよこれ…」
両隣も同じようなサイズのでかい屋敷が立っている
俺が想像していた家の5倍はある
「皆さんの要望に応えたこちらの屋敷は元々貴族が妾を住まわせていた屋敷になります、では中へ行きましょう」
門を開け入り口には庭が広がり、草木が綺麗にカットされている
そのまま中を案内されたが、俺たちが贅沢だと思って伝えた要望は全て叶えられていた、貴族の妾でこの規模か、貴族って贅沢だな
「すぐに住めるように家具は全て新品、庭の整備などもされているため金額は金貨700枚になります」
家具も揃っているなら悪くない
みんなの反応もいい
「この屋敷買いましょ!」
「賛成だ、使用人はどうする?」
「差し出がましい様ですがこのサイズの屋敷ですと3人は必要になるかと思います、1年契約で1人金貨30枚が相場になりますね」
「私たち貴族じゃないし完璧な使用人じゃなくてもいいわよ、もっと値段は下がらないのかしら」
「でしたら見習いを2人と経験者を1人雇うのはどうでしょうか、金貨50まいで済みますし」
「それで行きましょう」
「時間は…丁度いいですね、使用人を派遣している商会を知っているのでそちらに行きましょう」
馬車を前に用意してくれていたのであっという間に商会に着いた
購入することが決まっていたみたいな手際の良さ、出来る人は違うなぁ
「いらっしゃいませ、本日はどの様なご用件で」
「こちらのお客様が使用人を3名お探しです、1人は経験者、2人は見習い希望です」
「こちらでお待ちください」
案内されたのは大広間
6人分の椅子が用意され座って待つ
「お待たせしました、お客様には選考をしていただきます、まずは経験者からお願いします」
俺たちは名前が書かれた紙とペンを渡される
総勢11名のメイド&執事が入ってきて、1人ずつ自己紹介と得意な事を言っていく
「ミランダです、以前メイド長をしていたことがあります、見習いメイドの世話も経験がありますので、教育もできます」
「サイラスです、執事として貴族に使えていたことがあります、身の回りの世話や書類管理などお任せください」
その後も自己紹介が続き最後の1人になった
「ロイドンと申します、冒険者を引退し執事を務めて8年になります、皆様が在宅の時も留守の時も管理はお任せください」
「何か質問はありますか?」
「はい」
質問をしたのはラメラ
「ロイドンさんは冒険者を何年勤めていましたか?」
「12年です、ランクFから始まり最後はランクC、引退した理由はランクが上がらなくなったためです」
最初は上がりやすいランクもだんだん上がりにくくなっていく、何をしてもランクが上がらないと悟った時、冒険者は引退するらしい
「私からもいいですか?」
次の質問はリン、今までの人にしていた質問と同じ質問をする
「見習いがお皿を割ってしまいました、あなたの対応を教えてください」
この質問に大体の人は
「割らないための教育をする」
とか
「別に人にさせる、もしくは自分がする」
という回答が多かった
さてこの人は…?
「あなた方は若い冒険者だと思いますが、合っていますか?」
「はい」
「あなた方は魔物と戦う際に絶対に無傷でいられる保証はありますか?」
「無理だな」
「保証は出来ないわね」
「俺も無理だな」
「私は後衛ですから比較的無傷ですけど、いずれは怪我をする方もあると思います」
「いつかは攻撃をくらってしまうように、お皿もいずれ割れてしまう物です、怒ったり注意をすると作業のパフォーマンスが落ちます、話はしますが自分自身で反省するのを待ちます」
「お皿は私達のお金で購入した物です、割らないように教育をなさるべきでは?それもあなたの仕事になると思いますが」
「私の仕事ではありますが、あなた達は契約金を抑えるために見習いを雇おうとしているのでは?やることはやりますが新人を雇う以上お互いにリスクは背負うべきだと思いますが」
「そこまで、相手は雇い主です、失礼な発言は控えるように」
「失礼しました」
「わざと挑発するように言いましたので、構いません、素直な意見を感謝します」
「では皆さんで話し合って決めてください」
話し合うって言っても…
「ロイドンさんだよな」
「一択ね」
「彼が1番だと思います」
満場一致なんだよなぁ
冒険者の時の話も聞きたいし、はっきりと言ってくれる人の方がいい
俺たちは貴族じゃない、冒険者だからな
「じゃあ決まりだな、ロイドンさんを雇いたいと思います」
「ありがとうございます、先程は失礼しました」
「他のものは部屋を出るように」
他の候補の人たちは部屋を出る
「続いて見習いを連れてきますので少々お待ちください」
商会の人が出て行ってからロイドンが、質問をする
「改めて先程は失礼しました」
「いえ、遠慮せずに言ってくださって助かりました、満場一致でしたよ」
「収まる鞘に収まったといったところですかね…あと新人ですが贔屓なしで私の姪でになると思いますよ」
ノックの音がして見習いを連れた商会の人が入ってくる
「私に任せてもらえませんか?」
「リンに任せるわよ」
「お二人もいいですか?」
「「もちろん」」
「皆さんの自己紹介は結構です、目を瞑って話を聞いてください」
メイド見習い、執事見習いは少しざわついたがすぐに目を瞑った
「私たちは貴族ではありません冒険者です、しかも新人冒険者です、あなた達より年下だと思います、ですが全力で尽くしてもらいます、女性の契約の中には夜の奉仕が含まれています、男性の契約の中には休憩がありません、それでもいいと言う方のみ手を挙げてください」
見習い達はいろいろ考えただろう、手をあげない人、恐る恐るあげる手を上げた人、内心は嫌なのだろう
そんな中で手を挙げてくださいの瞬間に手を挙げた新人が2人
「決まりました、左から4番目と5番目の人にします」
誰も手を上げなかったらどうするつもりだったのだろう…
「面白い選び方をするのですね」
「こんなの直感ですよ、できると言ったことが出来なかったり出来ないと言った方がすぐ身についたりするんですから雇ってみないと分かりません、だとしたらやる気でしか選べません」
貴族ではない、つまり妾になるチャンスはない
新米冒険者、仕えるに値するか
夜の奉仕、そんな物は契約に含まれていない
リンは見習い達を試し、篩にかけたつもり…だった
「やっぱり彼女達になりましたか」
「もしかして姪ですか?」
「そのもしかして、です」
ロイドンの思惑どうりになった、念の為に理由を聞いてみよう
「何で手を上げたの?」
「「叔父さんがいたから、です」」
篩にかけたが関係なかったみたいだ
商会の人に金貨を渡し、彼は手数料を引いた分を3人に渡した
その後契約書を確認し契約魔法をかけてもらい、手続きは終了
表に待たせていた馬車に乗って屋敷に向かっていた
長くなっちゃったので一回切ります、更新が遅くなるー




