対談
俺たちは翌日ギルドに昨日の報告に行った
受付にはメルルとカムンがセットでいた
「お疲れ様です、探索の報告に来ました」
「ありがとうございます、ギルドカードを拝見させてください」
4人のギルドカードを渡し、探索の記録を確認してもらう
カムンは驚きを隠せずこっちを見た
「ダンジョンコアを破壊できたのですか!?」
「ええ、魔族が居てどうなるかと思いましたが何とか」
「魔族!?」
驚いてはいるが声は抑えている
他の冒険者に聞かれたくないのだろう
「詳しくお話ししたいので場所を変えていただけると…」
「分かりました、こちらへ」
先日の部屋に通され昨日のことを細かく伝えた
「よく生きて帰ってくださいました、これからお時間はございますか?」
「ええ、装備を新調したいと思ってはいますが急いではいません、なあ?」
「少し休憩したいとも思っていたしね」
「急ではありますが今日一日、この老耄に時間を割いてはいただけませんか」
「ええ、構いませんけど…」
【ゲート】
「私が先に入りますので続いて入ってきてください
」
人が入れる楕円状のモヤが現れ、カムンはその中へ入って行った、心配はないだろうが一体なんの魔法だろうか
「俺たちなんかまずいことしたのか?」
「対応は間違っていなかったと思うけど…どうかしら」
「とりあえず行ってみましょうか」
俺たちは後に続いてモヤの中を通る
出た先は城の入り口
「な、なんだよここ!」
「お城!?なんで!?」
「失礼、これはゲートという魔法で任意の位置に移動できる魔法です」
「カ、カムンさん、ここは?」
「ここはトリステイン王国の城前です」
さっきまでいたのはトリステイン王国、アラド領の首都タルマ、辺境伯の納める土地だ
今いるのはトリステイン王国、トリステイン領の首都クラッド、国王が収める土地だ
そしてそのかなりの距離を一瞬で移動したのだ
何者なんだこのじいさん…
「止まれ!何者だ!」
城前の兵士が立ち塞がる
「久しいのぉダミアン、ノルンとは上手くやっとるか?」
「カ、カムン様!失礼致しました!」
ダミアンとか言う兵士は跪く
ほんとに何者なんだこの爺さん
「悪いが事は急を要するんじゃ、この手紙をギルバートに渡してくれんか、大至急じゃ」
「畏まりました!」
兵士は全力で城の中に走って行った
「礼儀作法は気にせんでいい、お主たちはありのままで大丈夫じゃ」
「は、はぁ」
イールとリンはいつもの様子だしラメラはガチガチに緊張している、
「なんか大事になったな」
「悪いことをしたわけじゃありませんし大丈夫ですよ」
「あんたたちどんな神経してるのよ…」
「こう言う事はジンに任せておけば大丈夫だって」
「任されても困るけど、まあ上手くやってみるさ」
「さすが、頼りになるぜリーダー」
リーダーはお前だ、雑用をやらないから俺とラメラがやってるだけだ
まあ性格を知っているから自分たちでやった方が楽だと思ってしているだけではある
「直ぐにお会いになるそうです、こちらへどうぞ」
戻ってきた兵士が俺たちを城内へ案内する
城は豪華な作りだが煌びやかな感じではない
兵士たちが至る所に立っていて圧を感じる
少し歩いて巨大な門の前まで来た
「開けてくれ」
カムンがそう言うと門の両サイドにいる、おそらく魔術師だろう、彼らが何かの魔法を唱え門が開く
玉座に座る国王まで赤いカーペットがのび、その左右に人だかり、おそらく貴族だろう、全員が膝を降り頭を下げている、これは夢か?
カムンはカーペットを進み国王を見上げる
「お久しゅうございます、陛下」
「久しいなカムンよ、4年振りか」
「もうそんなに立ちますか、陛下に引き止められた日を昨日のように思い出しますとも」
「お主が隠居するから宮廷筆頭魔術師を辞めると言い出した時は本当に困ったものだ」
2人は声高らかに笑い合っている
いや、笑えないが
「ギルバートからは魔族の目撃があったと聞いているが、後ろの4人が目撃者か?」
「その通りでございます、左からイール、ジン、ラメラ、リンの4人の冒険者でございます」
「十数年振りの魔族の目撃情報、更には魔族から情報も得ていると聞いている、さぞかし優秀な冒険者なのだろうな」
「それが先日冒険者になった者達なのです、才能は保証致しますよ」
「我が国にこのような人材がいる方に感謝せねばな、さて…これより異端審問を行う!」
「「はぁ!?」」
俺とイールは思わず声を出してしまう
ラメラはへなへなと腰を落とし、リンは…あ、まずい、目が死んでる、絶対キレてるやつだ
貴族が一斉に立ち上がり俺たちを見る
なんだこの状況は
「父上、悪ふざけはお止め下さい!」
1人の女性が間に割って入る
「冒険者の方々、不満にさせてしまい申し訳ありません」
「え、どういうことですか…?」
「異端審問は嘘です、父なりの緊張の解し方なのです」
ふざけんなくそじじいが
マジで人生終わったと思ったわ
ジジイって言うほど老いてはいないけど…
女性はラメラの手を取り起こし、小さな声で「ごめんなさいね」といい国王の隣に立つ
「…昨日の出来事をお話しします」
俺はダンジョンコアを見つけてから帰還までの出来事を全て話した
「…ギルバート」
「陛下この者は嘘をついてはおりません」
「魔王の復活に備えて魔族が…報告を感謝する」
「勿体なきお言葉」
内心はこのくそじじいって思ってるよ?うん
なーにが緊張をほぐすだ、本気でびびったわ
「ビーストテイマーにこのような能力があったとはな、悪目立ちするばかりで信用がなかったから意外ではある」
「短時間でも魔族を服従させることができるのはよほどの才能かと」
「ふむ、その方、ランクはいくつだ」
「ランクCです」
一瞬貴族達からざわめきが聞こえた
「英雄の類か、ならば納得、わしの娘と婚姻せぬか?」
「お言葉ですが、私はパーティの僧侶リンを伴侶とすると幼き頃より誓っておりますので、そのお誘いに乗る事はできません」
また、貴族からざわめきが聞こえる
なんだよそんなにおかしなことか?
「良い青年だ、はっきりと意見が言える、貴族達にも見習ってほしい所ではあるな」
「陛下、今日の予定は全て白紙でよろしいでしょうか」
「うむ…皆の者!数千年前に根絶やしにされたと思われていた魔族が水面下で活動していた!我らを脅かす存在については箝口令を敷く!今後ダンジョンコアの破壊には報酬を増やすなどして冒険者の意欲を煽れ!国の平和ために動くのだ!」
「「「はっ!!!」」」
貴族達は一斉に部屋を出て行った
「さて、お主達の今後について話をせねばな」
「と、いいますと?」
「実力であれ運であれお主達の功績は大きい、見合った報酬を与えねばならん、爵位を授ける」
俺たちは顔を見合わせて言った
「「「「お断りします」」」」
「ふむ…しかしこれは王命でな、断ることはできん、これからは王国直下の指示で動いてもらう、異論は認められんのだ」
「王命か、であれば神命には逆らえまい」
頭上にカムンのゲートと同じ楕円のモヤが生まれそこから白い狼が降りてきた
「フェンリル様!」
と、言ったのはカムン
面識があったのか?
「久しいなカムン、ゲートはしっかりと使いこなせているようだな」
「カムン、説明せよ」
「我が直接説明しよう、我が名はフェンリル、神の使い聖獣フェンリルである」
「陛下、まさしく聖獣様でございます」
「フェンリル…様…」
この場にいる俺以外の全員が跪く
俺も跪いたほうがいいのか?
「世界の争いに口を出すつもりはない、だがこの者には我らの子供を預けている、使命もある、故に爵位を与えこの国に縛る事は許さん」
「我らの子供…といいますと?」
「獣神フェンリル、龍神リヴァイアサン、不死鳥フェニックス、聖獣ユニコーン、我ら四神の子ども達だ」
あぁ、言っちゃった
「人の王よ、ビーストテイマーはなぜ人に嫌われている」
「人を支配する力を持っているからです」
「ではなぜお前は嫌われていないのだ、先ほど王命だと言って支配しようとしたな?」
「私は国、民のためになるならば何でもしましょう」
「本質は同じだと言うのに言葉巧みに印象を操作する、だから人間は好かんのだ」
「それが人間の生きる知恵なのです」
「…」
俺は庇われているのか?
確かに国王が支配しようとする事は、俺のテイムスキルと似ているのかもしれない
「…一つ昔話をしてやろう、ある国の小さな村に1人の青年がいた、青年にはビーストテイマーの才能があり人々を守る冒険者に憧れていた、青年がビーストテイマーとして冒険者になる時、我々は先代の獣神によって青年に預けられた、そして彼の元で世界を見て回った、酷い扱いだった」
フェンリルは目を細め遠い日のことを語り続ける
「村がゴブリンの被害になっていると聞き助けに行けば弱った村を支配しにきた悪魔だと石を投げられ、ギルドでカードを見せるとビーストテイマーだと言うだけで罵られ、報酬を削られ、青年は少しずつ疲弊して行った、才能もあった、力もあった、しかし人間は彼の善行を一切認めようとはしなかった、1人を除いて」
「両親は他界していたが彼には妹がいた、彼は妹を養うために、辛くとも冒険者を続けた、目を輝かせて「お兄ちゃんすごい!」という唯一無二の無垢な妹のために」
「そしてあの日が来た、彼はいつものように蔑まれながらも依頼をこなし帰宅した、しかし人の気配がなかった、滅多に外には出ない妹が外に?そう思いながら寝室へ入ると、そこには無惨な姿に成り果てた少女がいた、服は破られ、嬲られ、胸に刺さったナイフにより絶命していた、青年は我らに尋ねた、俺は何か間違ったことをしたのか?どうしてこんな酷い仕打ちを受けなければならない、俺は人のために生きてきたのに、と」
「それから彼は魔物を集めて支配し、村や国を潰して回った、我らには「もうそばにいてやれないから天界に帰ってくれ」と言った、我らはずっと彼を見ていた、人々は魔物を操る彼をこう読んだ、「魔王」だと」
「これでわかっただろう、貴様ら人間が人魔大戦などと読んでいるものは迫害した人間と迫害された人間の戦争だ、人間とは愚かで悲しい生き物よ」
気がつけば俺は泣いていた
その青年の気持ちが少しだが分かるからだ
俺がもし1人だったらと思うと怖くなる
イールも、ラメラも、リンも皆がフェンリルの話を聞いて泣いていた
「昔話は以上だ人間の王よ、貴様が先手を打とうとしたことを間違っているとは思わん」
「…」
「しかし忘れるな、何もしていないビーストテイマーを勝手に恐れ迫害し、被害者ヅラを決め込んだのは加害者側だ、あまりあの者達の恨みを買わないほうがいいと思うがな」
「フェンリル様、あの者はそれほどの才能を?」
「うむ、極めれば全人類言いなりにすることぐらい容易であろう」
なんか聞こえるけど聞こえないフリしておこう
「お前には子供達に世界を見せてやってもらわねば困るからな」
「そのために出てきてくださったのですか?」
「きな臭い空気だったからな、そろそろ子供達が産まれそうでな、気になって天界から見ていたらいても立ってもいられなくてな」
「感謝します」
「リンとラメラと言ったな、2人にはちょっとしたプレゼントをしてある、後でスキルを確認しておけ、ではな」
フェンリルは、一瞬でいなくなった
国王も話し始める
「今後はお主たちの自由にすると良い、都合の良い話ではあるが、また情報を提供してくれたりしてくれると助かる」
「分かりました、何か困ったことがあれば連絡してください、きっと力になれます」
「感謝する、ギルバート」
「はっ」
「この者達の功と情報に報酬を」
「畏まりました」
カムンさんに送られて俺たちは街に戻ってきた
去り際に後日またギルドに来て欲しいと言われた
そして手元には大量の金貨
とりあえず収納した
「…これからどうする?」
「関係ねえよ、俺たちは未知の世界を楽しむだけさ」
こう言う時のイールは頼り甲斐がある
「私はジン君と一緒ならどこへでも行きますよ?」
「私もイールがいるならどこへでも行くわよ」
「ラメラがそんなこと言うのは珍しいな」
「城内で私が不安になるたびに手をぎゅってしてくれて…安心させてくれたし…」
イールはラメラを抱き抱える
またこのパターンか
「ちょっと下ろしてよ、まだ夕方よ」
「明日また話そう、おやすみ」
ラメラは攫われた
「リン、俺たちも戻ろうか」
「はいっ」
俺たちは手を繋いで宿に向かった
隣の部屋からベッドの軋む音と女性の声が聞こえてきたのでリンに頼んでサイレントをかけてもらった
リンはベットに座って膝をポンポンと叩いた
俺は吸い込まれるようにリンの膝に頭を乗せる、柔らかい
「ジン君」
呼ばれて上を見る
胸で顔が見えない
「これからも頑張りましょうね」
「ああ」
しばらくの間俺たちは何もせずぼーっとしていた




