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21.探索

特に根拠のない、直感のようなもの。

それでも、おそらく正しいのだろうと思えてしまった。


救う方法が無ければ。

花に戻せないのならば。

その先に揺らぐ答えを、知希も感じているのだろうか。

(私が生んだのなら、私が消さないといけない…?)


それが、向き合うということなのだろうか。

わからない。

なにが、正しくて。何が、正解で。どうすれば良いのか。まだ何一つ、わからないけれど。


その時、ぷーと間抜けな音が響いて、驚きに思考が中断される。振り返ると、永夜が何やら笛を口にあてて、吹いていた。ぴろぴろと、気の抜ける音が辺りに響く。


「…なにしてるの、永夜」


自分以外に危機感というものを持ち合わせている人間がいない気がして、逆に自分が心配し過ぎなのかと自信がなくなってくる。


「笛が落ちてた」


よくよく見れば、それはオカリナだった。

汚れて少し欠けてもいるが、まだ十分に音は出るらしい。


「なんかここ、色々落ちてるよなぁ。えっ、あれめちゃくちゃ高いギターじゃん。ストリートやってる友達が欲しいって言ってたやつ」


永夜の笛の音に好奇心を刺激されたらしい秋人が、岩の上から戻って来ては、辺りに散乱する物に目を輝かせている。なんだか秘密基地でも見つけてはしゃぐ子供みたいだ。


「弾けるの?」


「うーん、親友がやってて、まぁ、暇な時に弾くくらいは。センスはあるって言われるけど、俺こっちにはあんま興味ねーしな」


そう言いながらも、どう見ても壊れてるようにしか見えないギターを弄りだす。なんだか長閑にさえなってきた状況に、美沙緒は頭が痛くなってきた。


「ここでは弾かないでね?」

「えー、良いじゃん別に、減るもんじゃないし」


確実に神経は擦り減る。

よくこんな場所で弾く気になるなと呆れながら、ふと、美沙緒の目に留まったものがあった。


(…スケッチブック)


開いてみると、拙いものから秀麗なものまで、ページを捲るごとに変化する絵が現れた。誰のものだろう。描いて描いて、その感情ごと描き込まれたような生き生きとしたイラストの数々。

ああ、楽しんで描いているとわかる絵だ。


(このスケッチブックの持ち主も、諦めちゃったのかな)


眺めながら、思う。

この場所に捨てられているものは、そういう物たちだろう。だれかから、もう不要とされた物の数々。


「…こんなに素敵な絵なのに」

もったいない、と心から思う。

荒削りでも、細部が整っていなくても、バランスが少々崩れていても。目を引く。頭の片隅に残る。もっと見たくなる。そんな絵だ。

続けたらいいのにと、他人に思う事はどうしてこんなに簡単なんだろう。この絵が世にでないまま終わるなんて勿体ないと、私はこの絵が好きだと、他人のものになら素直に思える。

でも、自分ではそうは思えなくなる事、簡単ではないこともよく知っている。

ピロピロ、ピロピロ間抜けな音が続いている。

それにようやく音の出る様になったらしい秋人のギターが伴奏をしだして、さすがに感傷に浸る気分も失せた。慌てて2人の元へと戻ろうとして、ふと、手にしたスケッチブックを見つめる。

近くを探せば、ペンも転がっていた。


(…描いてみたい)


久しぶりに感じた欲求。

美沙緒はスケッチブックとペンを手に取ると、秋人と永夜の下へと駆け寄った。

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