表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/52

11.出来ない約束

***********

「紗綾、お姉ちゃん!」


呼ぶ声に、顔を上げると永夜が暗い森の中から飛び出してきた。二人を認めると、一瞬、今にも泣き出しそうな、ひどく安堵したような複雑な表情を浮かべた。

そういえば永夜はあの廃神社に一人置いてきていたのだった。

目が覚めてあんな所に一人だったら、美沙緒でも泣くだろう。


「わざわざ、追いかけてきたの?」


それなのに、子供相手であっても紗綾は手心というものがないらしい。腕を組んで呆れたように尋ねる彼女に、押し黙る永夜の姿を目にした美沙緒の方が焦ってしまう。


「一人にしてごめんね、怖かったよね」


屈んで視線を合わせれば、永夜は押し黙ったまま小さく頷いた。相当怖い思いをしたようで、ギュッと美沙緒の服の裾を掴んでくる。


「あらあら。随分懐かれたようね」


よしよしと頭を撫でていると、紗綾が言葉を重ねる。

彼女はちょっと…いや、だいぶ無神経なんじゃないだろうか。いちいち人の神経を逆撫でるような物言いをする。


「紗綾…もう知希の事は大丈夫だから、神社に戻ろう」

「え?」


この場を早く切り上げようとした美沙緒の言葉に、永夜が反応した。


「お姉ちゃんの花、見つかったの?」

「…」


見たかったと言うか、見つからなかったと言うか。

答えあぐねた美沙緒の代わりに紗綾が口を開いた。


「見つかったわよ。一番面倒な状態で」


…だから!言い方!

思わず非難めいた視線を紗綾に寄越すが、彼女はどこ吹く風だ。


「だいたい何が大丈夫なのよ。あんなモノを森に野放しにしておいて、大丈夫なわけがないでしょう。さっさと回収してきなさいよ」


「今!?」

冗談でしょ!?と声を上げれば、冷たい視線が寄越された。どうやら冗談ではないらしい。


「さすがにもう今日は…どうして良いかもわからないし…」


モゴモゴと反論する美沙緒の手を、それまで黙って聞いていた永夜がギュッと掴んだ。その手が微かに震えているような気がして、永夜を見やる。


「…帰らないで」

懇願するような呟きに、確かに感じる手の震えに、永夜の孤独をひしひしと感じる。

そもそも現時点では帰れるのかもわからないが、出来もしない約束は安易に出来ない。

答えの代わりに頭を撫でようとした美沙緒の手を、紗綾が止めた。


「馬鹿言わないで。美沙緒は花をもう見つけたわ。それを連れて、帰るの」


(…あの、知希を連れて…)

果たして出来るのだろうか。

自信はない。

紗綾に断言されながらも、内心怖じ気づくが、そんな美沙緒の胸中など紗綾は知ったことではないのだろう。子供相手にも容赦ない。


「自分の寂しさに人を巻き込むのは止めなさい」


(…だから、言い方が…)

さすがに口を挟まないと永夜が可哀想だ。

けれど美沙緒が口を開くよりも先に、絞り出すような嗚咽が聞こえた。


「…嫌い」


美沙緒の手を強く握りしめたまま、永夜が叫ぶ。


「ーーーサーヤなんか、嫌い!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ