ナイトプールでパシャパシャ、(水着着用必須の)混浴温泉でバシャバシャ②
それからは歓迎会は和やかな雰囲気をとなり、先ほどまで餌を食べるのをお預けにされてた犬のようだった他の担当者らの軽い自己紹介も終え、俺たち6人やレイナさんとの会話が弾んだ。各講師陣がそれぞれどのような理由で俺たち6人の講師に選ばれたのか、時々それぞれの会話に耳を傾けると、俺たち6人が気づいていない才能を理論立てて教えてもらったり、今までかじってきたMMORPGや異世界転移、転生ものとエリス界のステータスやスキルの構成などがかなりかけ離れている部分があるのとそれらの理由とか、アルカナ帝国の歴史や文化、一夫多妻制や一妻多夫制が採用されるようになった背景とか、なぜ俺たちがこんなに歓迎されているのか、俺たちに何を期待しているのか、そしてこの世界のキーアイテムとなっているスマホのことなど、ときにユーモアが入り混じりあい、楽しい時間が瞬く間に過ぎていった。ちなみに華澄さんはこのあと、こんにゃくゼリー入りの抹茶あんみつ特盛1杯を注文した。マジかよ。
「おっし、7時を少し回ったんで、みんなこのまま一緒にプール直行でいいかな。途中で気が変わってこのまま担当者と話をしたいとか、風呂入って寝たいとかであれば担当者が色々と案内するけど」
レイナさんが立ち上がりそう説明すると、俺たち6人は各々プールに行きたい旨を伝えた。
「了解。他のみんなの水着はあとで渡すから。来ている服はプールに行ったあとに女給さんたちがその場で、魔法でパパっとクリーニングして寝巻用の着替えと下着を一緒に入れとくね。明日の授業用のジャージはそれぞれの部屋の中に入ってるから。あと、食堂は朝6時から、授業は普段9時から始まるんだけど、今夜は好きなだけ寝てて大丈夫。明日は個人ごとにスマホについて担当者から軽い説明と、ここの施設を散歩がてらに説明するのと、1時間くらい体のマッサージをかねてメディカルチェックをする予定です。みんな一緒で行動したい場合はそれぞれが起きる時間帯によりけりということで。かなり駆け足で説明したけど、ここまでOK?」
レイナさんが説明し終えると、俺たち6人は一斉に手を上げた。
「もしかして起きたらどう知らせればいいのか、一緒にグループ行動したい人とどう合流すればいいのか、そんな感じの感じの質問?」
俺たち一同、ほぼ同時にうなずいた。あぁ、レイナさん、あえてわざと説明しなかったんだな。そう思ったし、皆も同じように思っただろう。レイナさんの説明を十分理解していなければこの質問には辿りつかない。また、俺たちの積極性を再確認したかったのだろう。
「よしよしエラいエラい。まず、あした起きて準備ができたら、どこでもいいから部屋の入り口のドアを触ってね。担当者か他の従業員が迎えに行って食堂に案内するから。また、誰かと一緒に行動したいときには温泉につかりながらわたしや担当者にでも希望を言ってね。起きたい時間の指定があればその時間帯に起こしに行くし、起きない場合は30分ごとに起こしに行くから。先に起きた人は食堂でご飯を食べながら待っててもらって、多少の時間のズレはこっちで調整するけど、まだ眠ってる場合にはそのまま放置し、起きたら講師とのマンツーマンでスマホの使い方と1時間のマッサージ兼メディカルチェックだけは必ず受けてもらうから。理由はエリス界独特スマホの使い方が分からなければ何も始まらないし、マッサージは体内に取り入れられ老廃物の排出と、今後まわりから体内に取り入れられる魔素の循環をよくするため、メディカルチェックは元の世界ですり減らしているかもしれない関節とか背骨の歪みとかを直しておきたいため、以上です。ま、とりあえず明日1日は基本休みなので、睡眠を第一にしてもらっても一通り終わった後に昼寝をしてもらっても全然大丈夫です。むしろ元の世界で頑張りすぎたくらいですから。あとは他に分からないこととかない?」
俺たち6人は互いに顔を合わせ、その後にレイナさんに顔を向けてうなずいた。
「おっし、それじゃみんなでプールに行こうか!担当のみんなも従業員みんなも参加オールオーケーです!裸のちちくり合いやモミュ、じゃなかった、裸のつき合いやコミュニケーションはとっても大事だからね、スキルの成長的にも。担当者やアシスタントさんたちの水着姿を見てもらえれば、これから6人が着てもらう水着が『ホントにこの世界のデフォなんだな』というのが理解してもらえるし。それじゃあ、プール兼混浴温泉の脱衣所までみんなで移動して、あ、アシスタント役のみんなはガイア界6人の身の回りの準備の仕事が終わってからだからね。歓迎会の片づけとか、明日にまわせる仕事とかは後回しでいいから。そこから水着を着たまま混浴温泉に移動。食べたばかりだから30分ほど温泉やサウナ、水風呂に交互に入りながら軽くプールの説明をして、そのあとに、23時まで各自自由に汗を流したり見学したりということで。それではレッツゴーー!」
「それでは、わたしたちもお言葉に甘えて参加させていただきますか。このような機会、2度とないんで」
「ええええええええっ!????この『依頼』に参加できただけでも超ラッキーなのに、異世界人、しかも『日本』から来た6人もの裸も間近で見れるなんて!しかも肌と肌が触れ合うチャンスもあるなんて(キャッキャッ、ウフフ♪)!」
アスタさんが他の講師陣を促し、後ろに控えていた女給さんらが密集して小さな円をつくり、互いに黄色い声を上げて大はしゃぎしている。少なくとも俺は女給さんたちに全裸を晒す気はないからね!ってか、今「6人」っていったよね?女子メンの裸でもいいのか!?あぁ、真理さんの妄想がさらに拡大してしまう。これが対魔王戦中だとしたら俺ら異世界人パーティーのブレインは足を引っ張る存在にまで成り下がってしまう。有能な敵を相手にするより愚かな味方と共に戦うのがリスキーであるのはいうまでもない。おまえの議席数などいらん、とっとと落選して消えてしまえ!さすがにそのような心境までには至らないが、何はともあれ、ハイリスクと引き換えに女風呂を覗きに行くよりも、超薄手の競泳用水着を着た女性との密着が期待できるのはノーリスクミドルリターン、しかもパーソナルスペースが自然と狭くなるので、触覚的にはおいしい機会なのではないか、しかも異世界転移初日からである。ま、俺には関係ない話なのだが、礼央、羽目を外しすぎるんじゃないぞ。どうせ黒歴史のページが追加される結果にしかならないからなw
レイナさんを先頭に水着着用の混浴温泉の男女脱衣所に移動しているのだが、そこまでの距離は以外と短かった。実は女給さんにトイレまで案内してもらった際に色々教えてもらったので、トイレから戻った直後にレイナさんに改めて聞き直し、現在いる場所が施設全体のどの辺にあたるのかを俺たち全員に教えてくれたので、戸惑うことなくレイナさんについていった。
まず、今いる場所は1階で、左手のふすまの奥の壁の向こうには男女兼用の100m8コースの室内プールが広がっており、大広間の天井はプールの観客席になっていること。女性専用の同じタイプのプールと縦一列に繋がっており、東西に伸びていること。ふたつのプールの連結部分の南側が水着着用の混浴温泉になっていること、俺たちが居る大広間を起点にすると、目の前の壁の向こう側が先ほどトイレに向かった際に通った通路で、男女別トイレの並びに男女別更衣室もあり、更衣室の入り口の反対側、つまり東側の出口の先は混浴浴場になっているという構造をしているとのことだった。また、俺たちの目線の右手の角の奥は男女共用プールの南側の玄関口になっており、別の視点から見ると、混浴温泉の中から見て、南西側の角の奥が外からの玄関口であるということ。俺らの座っている大広間の後ろの壁の向こう側は、通路、キッチン、男女別の温泉やトイレなどがあり、もう一つのプールの南側もこちらのプールの南側と対を成す構造になっているとのことだった。また、現在は少数精鋭ということで、俺たちの右手、つまり右側のふすまは全部閉められていたのだが、レイナさんが一通り説明を終えたあと、「みんなで一緒に南側のふすまの奥を見に行こう!びっくりするよ」と提案したので全員でふすまの手前まで移動し、レイナさんが両手でふすまを2枚開くと、それと同時に外に備え付けらてあったいくつかのオブジェから、(原理は分からなかったのだが)下から上に向けてライトアップされ、引き戸ガラスを隔て多くの見覚えのある多くの木々と芝生が目に飛び込んできた。俺たちは引き戸ガラスに吸い付けられるように渡り廊下を歩いてその風景に近づいていった。
「これ、全部桜の木なんだよ。今は季節的には日本と同じくらいの時期で、もう桜の花は散ってしまったんだけど、これは来年以降のお楽しみだね。あと、その頃までのみんなの成長も楽しみだね。それでは更衣室に移動しましょうか」
レイナさんが窓側にある左腕を肩の上で内側にあおって戻るよう促した。単なる数字や比較表現だけでは理解できない、たかが高校3年生6人のために、ここまでやるのにどれだけの期間(実際は約1年なのだが)、膨大な予算と労力が費やされたのか、呆然となった俺たちを(異世界ではあるが)現実に戻す一幕があったのである。