元の世界への帰還時のおみやげ特典と、レイナさんの実力と最強装備①
エレナさんが着ていた衣装、衣装と呼べるものだろうか・・女子メンバー3人も俺たち3人の異変に気付き、エレナさんの衣装に目を奪われてしまった。レイナさんが今にも個人用の受け皿に、さらに手前の厚切りローストビーフを積み重ねようとしたときに他全員の視線に気づいたようで「あっ」と声を上げて箸を止め、意外にも真剣な顔で話し始めた。
「あ、ごめん。ここにきたばかりの6人は初めて見るんだったね。今着ているのはね、わたし専用の最強装備のトレーニング用の水着なの。この水着は日本人から見ればかなり露出度が高い水着だと思うけど、この世界では「ちょっと露出度が高いかな」と思われる程度のもので、これと同じ型の水着みたいなものを着て歩いてる女の子はちらほらいるの。まずはこの水着の全体像を見てみて」
彼女は立ち上がると、その場でゆっくりと1回転し、ふたたび座布団の上に座り直した。
ビキニというかハイレグ競泳用水着というか・・ベースは女性のハイレグ競泳水着で、中央を可能な限りトランプの「ダイア」を膨らませた感じに布をくりぬかれており、縦は心臓辺りから下は大事なところが見えるか見えないかギリギリのところまで、下の角は鋭角にくりぬかれ、横は腹筋の部分がきれいに見えるよう大きくかつ上下が切れないようできるだけ残すように布がくりぬかれている。水着の色はコンパクトディスクの読み取り部分の虹彩色にロゼ系のピンクが混ざったような感じで、オーロラを思わせるような色であった。また、後ろはTバックで驚いたのだが、さらに驚かせたのは「胸の突出した先端部分の根本部分」が、大きめの宝石の指輪の周辺を飾る複数の小さい宝石のリングで囲まれており、水着の色が虹彩色のため、両胸の先端が、複数の小さなダイヤに囲まれた「ピンクパール」の指輪に見えるようにも驚いた。全体像は華澄さんに勝るとも劣らない、いや、胸の大きさは華澄さんより一回り大きいか。しかも美乳。優劣ではなく別の美の体系といったほうが正しいのだが、熟成されたエロティックさと神々しい生命の息吹や豊潤さや胸部に蓄積されたエネルギーが、今にもビックバンを起こして莫大な生命エネルギーを放出しそうな印象を受けた。長年水泳をやってきた俺にとっては女性のハイレグ競泳水着は見慣れたものではあるが、水着姿に心を奪われたことは華澄さんと美華、そしてやや小さめの美乳ではあるが、黙っていればクリスタルを思わせる限りない透明感を持つ真理さんくらいしかなかったので、彼女ら以外の女性の姿に驚いたてしまった自分にも驚いた。
「申し訳ないけど先に元の世界へ帰る方法だけ説明するね。これ以上脱線すると今後の授業のスケジュールが目茶苦茶になるから。まずは改めて説明するけど、普通にこのまま1年が過ぎれば何の問題もなくいつでも時間が止まっている時間帯に帰れるの。問題は何を持ち帰れるかなの。一番残念なのは『何も持ち帰れずここの記憶を消される』で、あとはここでの生活の頑張りによっては、この世界の記憶に加え、どれくらいの経験やスキルを持ち帰れるか、特にスキルの『不老不死みたいなもの』とか『異世界を自由に行き来できる』スキルは重要。この2つのスキルの取得はこの世界の人たちも習得を目標にしてるの。ここまで理解できた?」
エレナさんは説明すると、俺たち一同は、ほぼ同時に真面目にうなずいた。
「さ、だいぶ脱線して時間をとっちゃったんで、まずはごはんをいただきましょう!おなか好きすぎちゃったし、できればこのあと華澄ちゃんと仲良くなって全身の筋肉が鉛のように動かなくなるまボロボロにして、心臓も破裂寸前になるまで水泳と筋トレを休みなしで交互に運動したいの。みんなが召喚された時間帯とこの世界の時間帯の時差は20分くらいだって教えてもらってるから。わたしの水着の説明とかは、自己紹介をかねて、アスタさん中心に説明してもらいたいの。よろしく~」
今、この人なんて言った?普通なら「そんな無茶苦茶なトレーニングをする上に、華澄さんを道連れにするつもりか!?」と思うところであるが、今の俺らは華澄さんの幼いころから現在までの壮絶を絶するトレーニングの内容とその動機を知っている。俺らの個人情報まで把握しているのか?事と次第では、そう言い放ったレイナさんや他の方々を異世界人であろうが戦闘集団の脳筋星に住む猿軍団であろうがタダじゃ置かない。
「み、みなさん落ち着いてください!!わたくしたち全員、皆さんのプライベートな内容までは全く知らないんです!!!わたくしたちが知っているのは、みなさんの高校生のクラスメイトが知りえる表面的な情報と、主なステータスのみですからぁーー!!!」
俺らの怒りを肌で感じたのか、俺の向かいに座っている男性が、両手を突き出し非常に慌てた様子で大声を出して、俺たち全員を静止させるようなジェスチャーをして、レイナさんは箸を止め俺らを真剣な顔で見つめ、他の5人の異世界人達は、しばしの緊張のあと、その男性に目を向けた。
男性は息を切らしながら呼吸を整え、再度語り始めた。
「まずは事情を聴いてください。これには深いわけがあるんです。あなたたちがこの世界に来る数日前に、ゲームでいう、あなたたちの基本ステータスの数値や現時点で持ってるスキル、担当者にとって最低限必要なあなたたちの趣味や特技、それと先ほども言いましたように、みなさんのクラスメイトが知っている程度の情報しか知らないんです!特にみなさんの知られたくない情報なんかは、絶対に知ることができないんです!今から説明します」
俺たちはいったんこみ上げてくる怒りを胸の内に封じ込め、彼の話に耳を傾けた。
「今から事情を説明します。あなたたちが来るという情報を事前に受け取った数日後、今回の華澄さんの担当になったフィーネさんが号泣してたんです。正確には、また思い出し泣きしていたのですが。あらかた予想はついてたのですが話を聞くと、『アスタさんも分かってるでしょ、今度異世界召喚される方達のわたくしの担当の華澄さんという方のステータスとスキル。一体どんな人生を送ってきたらこんなステータスになるの?こんなにも心も体もズタズタにして自分自身を苦しめて。そのたびに何度も這い上がってまたそれ以上のことを繰り返さないとこんな異常な数字にならないわよ。ガイア界ではスキルの恩恵がほとんど得られないとはいえ、ゴッドレアスキル【GR】大聖女がなかったら、この子、何十回も何百回も死んでてもおかしくないわよ。どうしてなの?こんなにも慈愛の女神の生まれ変わりともいえるくらい心も身体も美しく、誰よりも強く深く人を愛せる女の子なのに、なんでこんなにも自殺行為としか思えないトレーニングを続けてきたの?』ということがあったんです。わたくし達6名は同じタイミングでみなさま方の基本情報を受け取ったのですが、男性陣たちは絶句、女性陣たちは涙が止まらなかったと聞いています。特にフィーネさんは泣き上戸なので」
「みんなごめんね。なんか華澄ちゃんが浮かない顔してたから。わたしも水泳やってるからわかるんだけど、泳げない日があるのが我慢できないのとか、いやなことを体力や汗と一緒に放出したあとに疲れ果てた身体を水が癒してくれて、生きる喜びや人を愛する喜びを与えてくれるのを全身で感じることができる子だからと思ったの。あと、みんなの水着や普段着あらかじめ用意してあるの。華澄ちゃんは水着の素材も気になるでしょ?アスタさん、この子達優秀だから話をすすめて。特に料理がからむと明くんがとてつもなくヤバイから」
「わかりました。それではお手数ですが、明くんは美香さんと華澄さんの間に移動していただいて、真理さんと美香さんは左にひとつずれていただけないでしょうか。明くんが納得するまで誰も刺身に箸をつけないと思いますから。あと、実は歓迎会の最後に、みなさまに全員に、今手元に置いてある箸置きの『箸置き6個入りセット』をお土産として用意してるんです。この世界での記憶を維持して元の世界に帰れる場合に限るのですが。これは日本でも簡単に手に入れられる素材なので、レイナさんがわざわざ最高責任者を通して女神さまに許可を取ってもらったんです。あと、箸置きを含め、今日の料理の企画、デザインは全部レイナさんなんです。料理人はアシスタントさん達ですが。あと飲み物は日本でも定番の果物の100%ジュース、炭酸入り作れますから遠慮なくいってください。『コーラ』という飲み物はさすがにご用意できなかったのですが、これは後日、明さんにレシピ解析のお力添えをいただきところです。また、味噌汁はご希望があれば、しじみやあさり、海老やカニ入りのもの、海老やカニやキノコ類などが入った茶わん蒸し、デザートにはあっさりしたフルーツポンチ、ご希望であれば角切りにした寒天やゼリー、こんにゃくゼリーに杏仁豆腐にナタデココ、あと、白玉やあんこ、抹茶味のあんこなどをトッピング用にご用意しております、あと、汁の部分を炭酸にしてみたりしてみるのもいいと思います。ただ、ご用意するまで多少のお時間がかかるので、早めに言っていただけると助かります」
アスタさんがそう言い切ると、礼央が俺目を向け、ただ一言「明」と声をかけた。
―明、もう十分だろ― そんな意味合いを含め、俺に最終決定権を委ねてきた。あえて先に用意してくださった料理のコンセプトの話をするが、今の俺の視点では、これ以上ないくらい完璧だった。定食屋兼弁当屋、和食の固定概念にとらわれていた俺は、目の前に出された料理や調味用に目をとらわれすぎていた。フランス料理の形式のように一皿づつ出されるという『縦の時間軸』の視点が完全に頭になかった。しかも、気がかりだった海老やカニ、加えて見落としていたキノコ類や日本人にとってなじみが深い卵、そしてデザートには「食後は胃をやすめるデザートを」という中華料理の思想体系で締めくくっている。味噌汁や茶わん蒸しやフルーツポンチの具の自由度、杏仁豆腐こんにゃくゼリーとか杏仁豆腐、白玉や抹茶味のあんこだとか、華澄さんの嗜好を意識してはいるだろうが、かつて日本が各国から取り入れた料理の魔改造能力とか想像力とか・・・もう十分理解した。せっかく考えうる中での最高の形で仕上げた『歓迎会フルコース』の流れの順番を状況に応じていとも簡単に破壊し、『コーラ』の件で俺をたてることによって、それを壊してしまった俺たちに『気にしなくていいですよ』というメッセージを示唆してくれているとは・・・万が一騙されたとしても悔いはない。俺たちは心の底から歓迎されている。たとえ俺が在日大使館の料理長だったとしても、「日本人の賓客」たいし、これだけの献立を思いつくことはできない。これで俺たちが歩み寄らなかったら、俺がこの料理の責任者だったら完全にブチきれていることだろう。
「ごめんごめん。つい料理人の悪い癖が出てしまって。それじゃあ、『特盛り海鮮丼を作ってみたいから、とりあえずご飯超大盛と、あ、美華や華澄さんには刺身の盛り合わせに見とれているところ申し訳ないんだけど、刺身の並べ方は覚えたから機会があれば作ってみるね。あと、生食用の海老とカニがあれば小皿で持ってきてほしいです。茶わん蒸しはおすすめのキノコを、もしあれば銀杏をいれてほしいです。味噌汁は普通のネギと豆腐入り、ワカメははいってるかな。ご飯と海老、カニ以外は急いでないからとりあえずそれでお願いします」
奥にいる女給さんにそう頼むと、ふすまの奥からはあらかじめスタンバイしていたであろう6人の20代前半の女性が笑顔で出てきて、先頭と最後尾の女性は炊き立てのご飯が入っているであろうかなり大きめの炊飯器(なぜこの世界に炊飯器が、と思ったがひとまず棚上げしておく)を両手で抱きかかえており、それぞれ俺たち6人の後ろに立ち並んだ。
「それじゃ、真理さんに美華、申し訳ないけど」
そう頼み彼女らがうなずくと、それぞれ席を移動し、対面の担当者も俺たちに合わせて移動した。
俺たちが移動し終えると、奥に正座で控えていた女給の一人が立ち上がり声を張り上げ、
「それではみなさまが落ち着いたところで、ジャンジャン注文してくださいね。料理のおかわりはたくさんありますので。明様が注文した『超』特盛り海鮮丼はこちらで生海老、生のカニもぶち込んで丼ごとお持ちしますので少々お待ちください。肉料理はあえて『タウロス、オーク、バード系の魔物』を控え、『畜産用の牛、豚、鶏』を使用しました。ローストビーフは一般日本人男性のロマンを基準として『薄めにスライス』させていただきましたが、箸で食べやすいよう、さらに縦切りにカットして皆様にお渡しすることもできます。その他ご希望がありましたら遠慮なく言ってくださいね~」
「よくできました。ご褒美にあとでみんなにわたしのおっぱいの先っちょを『ツンツン、コロコロ』させてあげるね」
「ええええっ!!!オリンピックの『美の女神ヴィーナス』の称号を持つレジェンドのレイナ様の敏感なところを『ツンツンコロコロレロレロレロレロ』ですってぇえーーーー!???みんな、どんどん注文を受け付けて!お腹が破裂するまでどんどん仕事してねーーーー!」
・・・・・・だ、だめだ・・『ツンツンコロコロレロレロレロ』が頭から離れない・・・日本での魅了耐性がトップクラスであろう男性陣はおろか、女性陣やアスタさんたちまでもレイナさんの先っぽを凝視している。『オリンピック』にレイナさんが『ビーナスの称号』持ちのレジェンド・・『超大盛』とか言ってないし・・あと何だっけ・・・・・
「・・・わたしも『ツンツンコロコロレロレロモミモミパフパフ』してみたい・・」
大魔王を前にしても常にクールブレインをキープできそうな真理までもが思考を手放してしまった。無理はない。たとえ今体験しているのが「邪眼使いの幻」だったとしても、俺たち6人パーティーは、こんな内容の幻覚を見せれる相手にはまず勝てないだろう。そんなこんなで他の5人や対面の方たちも各々頼み始めた。