【閑話】メリークリスマス!
「こんにちわ~礼央で~す。華澄さんをクリスマスパーティーに迎えにきました~」
「あ、礼央さんに美華さんに真理さん、わざわざ迎えに来てくれてありがとうございます。泊りがけのパーティーということで着替えの荷物も準備できてますし、両親からもすんなり許可がおりました」
「よかった。華澄さんのご両親を安心させるために念のためわたしと真理もついてきたんだけど必要なかったみたいね、というより華澄さんの住んでる和風の家を一度見てみたかったのもあるし、あわよくば華澄さんの部屋の匂いを・・・」
「今のわたしの部屋はウェイトトレーニング機器だらけで汗臭いだけで誰かを迎え入れる状況じゃないです。できれば次の機会にお願いします」
「華澄さんの汗の匂いですって!??お、お願い、1分でいいから華澄さんの部屋で深呼吸させて!!!」
「おいおい、絶対音感だけでなく絶対嗅覚を持つ美香さんにとっては華澄フェロモンはたまらないかもしれないが『今回だけは』我慢してくれ(あとは知らんけど)。明や奏風は2日前から料理の仕込みのために放課後に家に寄ってるし、今はうちの会社の食品開発チーム2名と一緒に仕上げにかかってるから早く合流して手伝おうぜ。リムジンも長い間玄関前に止めとくと近所の迷惑になるし」
「「は~~~~い」」
華澄フェロモン・・それは彼女が生まれつき全身から発する独特の甘い薫りで、老若男女、犬猫問わず引き寄せてしまうため、彼女が明たちと再会するはるか以前から巷でそう呼ばれるようになった。余談ではあるが、美華が華澄を忘れずにいた理由の一つは華澄フェロモンであり、また、水泳を始める前までは歩いてる途中に犬や猫がたくさんすり寄ってきて大変だった時期もあったが、朝シャワーと水泳後のシャワーの併用によってだいぶ解消されたという経緯もあった。この華澄フェロモンが異世界で珍事を起こしてしまうのはもう少し先の話w
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「噂には聞いてましたけどすごい豪邸ですね・・それに敷地の広さも・・」
「華澄ちゃんははじめてだったか。ただ、今回のパーティー会場は『離れ』の2階建てのゲストハウスで、母屋はまた別の機会に招待するよ。早く明や奏風と合流しようぜ」
「はい!」
「・・・あれが『離れのゲストハウス』ですか・・わたしの家の数倍の広さですね・・」
「気持ちは分かるけど考えたら負けよ華澄ちゃん。早くみんなと合流しましょ」
「えぇ」
「あ、おかえり礼央、そして華澄さん、ようこそ『離れのゲストハウス』という名の迎賓館へ」
「明、皮肉を込めたつもりかもしれないが母屋のほうが迎賓館に近いんだ。招待するのは外国の要人ではなく日本のお偉いさんが招待客になるんだけど。ここは賓客の付き添いや関係者が休憩したり寝泊りしてもらう場所。それと、全部屋個室、または2人部屋になってるところはゲストハウスらしくはないんだけどね」
「マジか・・礼央、俺が悪かった」
「いいって。それより料理の進捗はどう?」
「礼央お坊ちゃま、それはわたくしの口から。すべての仕込みはほぼ完璧に終わっているので、あとはケーキの到着を待ち、お食事の時間に合わせて料理に火を通すだけです。それまでの間、お坊ちゃまはご友人らとくつろいでくださいませ。いやぁ~会長の業務命令の内容以上に驚きましたよ。あの星野様のお孫さんとはいえ若すぎて心配だったのですが、全てにおいて規格外すぎてうちら社員のほうが勉強になりましたよ。奏風君に関しては、今回のメニューでは存分に実力を発揮できないからということで自分からサポートにまわったのですが、料理の工程や我々の動きなど、全体の流れが読めるというか空間を掌握されているというか、やりやすいと感じると同時に恐怖を感じましたよ。話を聞けば奏風くんの祖父母がわが社の商品の調味料や醸造、燻製などの根幹に深く関わっている方々だったとは。当社の商品に使われている調味料の製造元をかなり当てられただけでなく、それぞれの商品の味付けに到達するまでに試した調味料とかも当てられたりしたので絶句してしまいました。すいません、興奮のあまりつい長々と語ってしまいました」
「いや、気にしなくていい。気持ちは充分にわかるし、短期間で明たちのことを的確に分析している話は聞いてて面白かった。明にしても奏風にしても、彼らの祖父母も2人の才能に舌を巻いているくらいだから。それにしても年末の業務で忙しい中、しかも前倒しで仕上げてくれて本当にありがとう。親父にも伝えておくよ」
「ありがとうございます!それでは今からリビングにお茶とデザートをお持ちします。先ほどより美香さんの視線がデザートを入れてある冷蔵庫に釘づけになっているのですが、もしかして中身が何だか分かったりします?」
「・・・シャインマスカットの匂いには違いないのですが、何と表現すればいいのでしょうか、それぞれ独自進化した、糖度がかなり高い複数のシャインマスカットが混ざってるような感じの匂いがします」
「マジっすか!?失礼、大正解です。弊社が契約している農家から、市場にわずかしか流通していないグリーンシャインマスカットとレッドシャインマスカット、ブラックシャインマスカットが入ってるんです。みなさんを驚かせようと思ったのですが、逆に驚かされてしまいました。みなさん、一体どれだけチートスキル持ってるんですかwわたしにも一つくらいくださいよ・・」
「「「ええーーーー!??シャインマスカットって他にも色があるんですかーーー!??」」」
「・・・えぇ。今ではシャインマスカットといっても、グリーン系、レット系それぞれに複数の種類があるんですよね。ただしブラック系はこの1品種だけです。時間差でドッキリ作戦大成功といいたいところなのですが、女性陣が今のわたくし以上に驚いているのに驚かされているので素直に喜べない心境です」
「・・武井さん、繁忙期のなか無理をいって悪かった。会長には武井さんと佐田さんの有休を増やしておくように進言しておくよ」
「大丈夫です。むしろ美少女と謳われる次期会長夫人に加え、有名人の天音美華さんや清川華澄さんにもお会いできたので。それを他の男性社員に知られたらかなりうらやましがられると思いますので。あと、余った食材は家族分くらいなら持って帰ってもいいといわれているので、業務が終わった後にどう料理してやろうかと妄想、いや、想像するだけでも楽しみです」
「それ以上いうと武井さんには超長期無給休暇を取らせるよう親父に忠告しなきゃいけないから言葉遊びはほどほどにな。それじゃ、武井さんに佐田さん、リビングにデザートの用意をおねしゃす」
「かっ、かしこまりました」
それぞれ多忙な6名のチート達のつかの間の休息、話題はシャインマスカットを歯切りに、葡萄が大好物の美華が『クリスマスはイエス・キリストの誕生日だから早く二十歳になってキリスト様の血を浴びるように味わいたいわ~』とか言いだし、奏風が『ワインかー、日本酒や焼酎を味わい尽くし、酒蔵を見学した後に世界のワインやウイスキーの醸造所や酒蔵を見学しながらその場で試飲して醸造までの時の流れをイメージしてみたいけど寿命がなー』など、馬鹿げた話題から目前に迫る年末年始のサッカーの全国大会へとうつった。
「そういえば礼央さんは年末年始はサッカーの全国大会で東京に行くんですよね。地元から応援してます」
「あ、その話なんだけど、オレだけじゃなくてサッカー部の参謀役の真理や、全国大会限定で明や奏風もスタメンで出場することになって、美華もチアガール部と合流して5人全員で行くことになってるんだ。そんでもって、費用は全部受け持つから、華澄ちゃんにも来てもらって決勝戦でちょっとだけ力を貸してほしいのよ」
「えええ!???理解が追い付かないんですけど!?明くんも奏風も出場するうえに、決勝戦に行くのが、まるでプロの麻雀打ちが『ちょっとあそこの雀荘で財布の中身を補充してくる~』とかいって本当に稼いできてしまうくらい未来が確定しているようにサクッと言うなんて!?しかもわたしに来てほしいとかって・・」
「まずは2人の入部のいきさつについて説明するね。明くんは自由時間は築地巡りで即OK、奏風くんは東京カレーの激戦区巡りができるということで即OKでしたw」
「ふ、ふたりともチョロすぎじゃないですか!??」
「華澄さん、礼央の会社が会員登録しているスポーツクラブのサイトなんだけど、ちょっと見てみて」
「50m6コースのプールで年中無休・・しかも水質管理が塩素を使わない最新の浄水システムを導入し、肌に超やさしくて50m先の壁がくっきり見えるまで透明ですってぇええええええ!??」
「東京に来てくれれば年末年始も無料で泳ぎ放題、疲れ果て放題なんだけどなぁ~」
「い、行きます行きます!!プールの大掃除が終わった後でよければ是非行かせてください!!」
「えぇもちろん。東京には和菓子の名店がたくさんあるから、帰るときにはお土産を買うのを忘れずにね。(チョロい、チョロすぎるw一体どこのレーベルの女優さんなのでしょうかww)」
「しかし真理さんはすごいですね。女性であるにも関わらず、サッカー部のブレインをもこなすなんて」
「あぁ、すごいってもんじゃない。自宅にある3台の自作PCとノートPCを連結して、試合全般の流れから個々の選手のコンディション分析、選手の交代のタイミングとか、ほぼ完璧に分析できてるしな。一度、今年に行われたサッカーワールドカップの実況を監督を含む部員たちの前でしてもらったんだけど、最初は『白川△(さんかっけぇ)』とか言ってたんだけど、後半はあまりにもの的中率に全員凍り付いたかのようにドン引き状態になってしまったわ。それだけじゃない。参謀になりたての頃は何かと反感が多かったんだけど、真理自身が組んだ紅白戦に自ら参戦し、真理に反感を持っている部員を集めた白組を真理ひとりでズタズタにして瞬時にハットトリック決めてたしな。オレは大方予想ついてたから、笑うのをこらえるのが大変だったわ」
「真理さんスゴ・・」
「でだ、真理がサッカー部関係者らに『空野奏風くんと星野明くんはわたしなんかよりはるかに強い。わたしの戦術をベースに彼らが活躍してくれれば全国大会優勝の確率は99%』と進言したおかげですんなり事が運んだわけよ」
「でもそうするとわたしはいらないんじゃ・・」
「いや、ただ勝つだけじゃつまらないでしょ。伝説を作りたいので華澄ちゃんにやってもらいたいことはね・・・・・」
「わかった。ほんの短い時間だけどわたしがんばる!」
「おっし、じゃあ料理もそろったし、メリークリスマス&ブロージット!」
「「「「「メリークリスマス&ブロージット」」」」」
お久しぶりです。次回に【閑話】高校サッカー全国大会編を書いたあとに本編を再開します。




