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一を食して十を知る

 晩ご飯の時間の19時近くになったので食堂に向かったが他の5人はすでに食堂にきており、俺を待っていてくれたのだろうか、誰も食事に箸をつけずに雑談をしていた。礼央が「夕食もできるだけみんなで一緒に食べるようにしようか。ただし今後は個々人のスキル向上や特訓とかに比重が重くなるかもしれないから、そのときは夕食前に誰かに連絡しとくという方向で」と方針を打ち出したのでそんなに待たせてないのではあるが。アシスタントのお姉さんにあらかじめ頼んでおいたオリジナル海鮮丼とサラダと味噌汁を受け取り、5人が待つテーブルに移動した。ちなみに海鮮丼をあらかじめ頼んでおいた理由は、魚介類に関しては種類が多すぎてキッチンには生食可のイワシと牡蠣と本マグロしか常備していないため、普段食べたい魚(特に刺身)は仕入れの関係上早めに教えてほしいとのリクエストがあったために速攻で教えたついでに海鮮丼のトッピングも伝えていたからである。しかしエリス界、ほんと性欲増進、もとい人口対策に関してはとち狂ってるな。合理的ではあるのだが。イワシも牡蠣も男性ホルモンを増進させる亜鉛をたくさん含んでるものじゃないか。今回は珍しく普通に食事を提供してきたのだが、5人の待つテーブルの中央にてんこ盛りに盛られていた牡蠣フライのようなものがその答えであった。ソースの入った器の隣にタルタルソースのようなものが盛られている器もあったのでほぼ間違いないだろう。日本人特有の「もったいない精神」も把握されてるんだろうな。基本、俺たちに食べ残すという選択肢はないし。日本発祥の「牡蠣フライ」を知ってるくらいだからね。ちなみに一説によると、トンカツを考案した銀座の料理人が牡蠣フライも考案したらしい。欧米人もびっくりのメニューを二品(エビフライとメンチカツも含めたら四品)も発明するなんて天才すぎるよね。



 「みんなおまたせー。あと、忘れないうちに伝えておきたいんだけど、美華に華澄さん、食後に大切な話があるから少し時間をもらっていいか?」


 「はーい(はいっ!)」


 「それじゃ、今日は奏風とレイナさんが恋人同士になったので『プロージット(乾杯)』といきますか」


         「「「「「「プロージット!!!!!!」」」」」」



 礼央が乾杯の音頭をとると決まってドイツ語の『プロージット』になるんだよね。礼央が好きな小説のドイツかぶれの好戦的な主人公の影響なんだけど。サッカーの試合直前の景気づけのスポーツドリンクの一気飲みがきっかけでサッカー部員やクラスメイトらに快く受け入れられてきたので身内ではそれがノーマルになってしまったのだが。



 「そういや女性陣は3人とも同じジュースだけど、それ、なんのジュース?」


 「これ、柘榴の炭酸ジュース。女性にとっていい成分がたくさん入ってるからってアシスタントさんたちがしょっちゅう薦めてくるの」


 「男性陣だけじゃなかったんだね。俺たちはイワシや煮干しの味噌汁、あと目の前に置いてある牡蠣フライをはじめとした牡蠣系も今後薦めてくると思うんだけど、柘榴系以外で女性陣に薦めてくるものとかってある?」


 「大豆系とかキャベツ系だね。豆腐を使ったロールキャベツを薦められたときは少し引いちゃったけど。びっくりしたのがキャベツチップスというお菓子が種類が豊富で大量に出回っていて、大豆系のお菓子も種類は豊富なんだけど、ポテト系のお菓子は美味しいけど身体にいいわけではないから若い子は普段はできるだけ食べないようにしてるんだって」


 「マジか・・・」



 これが食のカルチャーショックというやつか。単純比較はできないが、魚介類の中で唯一、牡蠣だけは生食が一番だと思っている欧米人が日本で初めて牡蠣フライを食べたときと、牡蠣フライとタルタルソースの黄金のコンビネーションを体験したときのような衝撃を異世界で体験するとは。



 「はぁ、オレは普通にカツカレーを頼んだはずなのに、この盛り付け、というかこの組み合わせはどうなんだろうか・・・」



 そうげんなりしているのは、今夜の主役であるはずの奏風である。カレールーの上にはトンカツが、ご飯の上には鰻の蒲焼きらしきものが乗っかっており、円形の皿に乗せられたウナカツカレー(?)を囲むように問答無用で牡蠣フライがヒマワリの花びらのように並べられており皿の外周からはみ出していた。配置の効率と芸術性が両立しているね。活力を増進させる食材をふんだんに使ってきちんと料理しているにもかかわらず奏風をげんなりさせているのはある意味前者を上回る才能かもしれないが。牡蠣フライ&タルタルソースの黄金コンビと比肩するトンカツ&カレーの黄金コンビが台無しである。アシスタントのお姉さん、食材で遊ぶのはほどほどにね。


 

 「めでたい席にヒマワリウナカツカキカレーなんて最高じゃないかwもしかしたら今夜はガンバレって意味が含まれてるんだろうなw味は悪くないんだろう?」


 「あぁ。カレールーはトッピングが選べるチェーン店みたいに甘めかつ軽めに抑えられていて、飽きがこないようなコンセプトで作られている感じで鰻の蒲焼きとの衝突も極力抑えられていると思う。けど、やはり別々のほうがよかった」



 奏風にカレーと鰻の蒲焼きを分けてもらい試食してみたのだが、うん。やっぱり別々のほうがいいよね。で、個人的にかなり気になっている牡蠣フライであるが、大きさ的に2種類の牡蠣が使われており、中央の大皿のひと山の牡蠣フライをよく見ると左右で大きいものと小ぶりなもので分けられ、奏風の牡蠣フライも大小交互に並べられていた。


 「牡蠣の種類に関しては解説が必要だね。『すいませーーん、この2種類の牡蠣の名前を教えてくれませんかーーー』」


 「はーーい!大きいほうがガイア界、日本でいう岩牡蠣で、小さいほうが真牡蠣です。両方とも養殖なんですが、真牡蠣はアルカナ大陸の東南の海にある諸島群で養殖されたもので、人魚族が養殖しているものなんです。2つの海流がぶつかる場所で、かつ大昔に海底噴火で隆起し、森林に覆われた島々から流れる河口付近で養殖された牡蠣になりまーーす」


 「ありがとうございまーーす」



 なるほどな。牡蠣フライといい、牡蠣の養殖の知識も持ち合わせているか。これらに関わった日本人については追々調べてみたいな。まずはそれぞれ1個づつ味わってみよう。うん。どちらもうまい。タルタルソースとの相性はやっぱり最高だ。ここがエリス界でなければもっと素直に味わえるのかもしれないが。



 「ねぇ明さん、日本の牡蠣フライと比べて味はどうですか?」


 「牡蠣フライというか、牡蠣自体も日本産と区別がつかないくらいの高レベルだね。岩牡蠣は養殖のほうが味が上だけど、深いところで養殖しなければならないから人魚族というのが色々やっているんだとは思う。問題は真牡蠣のほう。日本列島と環境が似てるっぽい大陸東南の諸島群に元々生息していたのか日本から持ち込まれたかは分からないけどね。余談にはなるんだけど真牡蠣は病気への抵抗力がめっぽう強い。数十年前にフランスの牡蠣が大寒波の影響で病気になって絶滅寸前になったとき、唯一日本から持ち込まれた真牡蠣だけが繁殖できたらしい。この真牡蠣の育てられた環境も味も大きさも三陸地方産の真牡蠣とほぼ変わらないね。あと養殖には河川に溶け出しているミネラルもかなり重要だから、海だけでなく森林の管理もやっていると思う。瀬戸内海産の真牡蠣は海流が穏やかなために大きく育ちやすい傾向にあるらしいけど、海流が穏やかな分、赤潮が発生しやすく細菌が付着しやすいため注意が必要だね。それでも広島産の真牡蠣は生食できるものがけっこう出回っているからかなりの努力をしてると思う。三陸産の真牡蠣に関しては世界三大漁港の気仙沼港ってとこがあるんだけど、寒流と暖流がぶつかってプランクトンが豊富、かつ河口もあるという珍しい場所だから、この牡蠣フライの真牡蠣はエリス界では仕入れ値が高めかもしれない。さらにいうと、みんなも薄々気づいてるかもしれないけど、今までのエリス界での食事を含め、油には米油、それも有害な溶剤を使わない『圧搾抽出法』で抽出されたものが使われてるね。ごめん、色々と話が長くなりすぎちゃって」



 ここで話を止めておかないと米油(圧搾抽出法で摘出されたもの)にスライドしてしまうところであった。米油に関しては思うところがあり、岩牡蠣やブリなどの美味しさがお隣の国にバレて爆買いの危機にある昨今において、個人的にお隣の国に最も見つかってほしくない食材だと思っている。ハイクオリティーの天ぷらや鳥のから揚げを調理するには不可欠な食材の一つであり、しかもヘルシーと名高いオリーブオイルと同じオメガ9系脂肪酸が主成分で現時点においては過剰摂取による弊害が確認されてないため、実家の食堂で提供している揚げ物、炒め物はほとんど米油で調理されたものである。個人的にはニンニクを使わない和風パスタを調理する際にはオリーブオイル代わりに使ったりしている。米油を安値で卸してくれる金沢グループには感謝しかない。

 


 「いいっていいって。明の病気みたいなものだから。華澄さんもそれを覚悟で話をふったフシがあるし。もしオレが明の彼女だったら『ワタシと魚介類と料理、どれが一番大切なの!??』とキレまくるかもしれないけどねw」



 そうなんだよな俺って。そのせいで美華や華澄さんを苦しめてしまった遠因になってしまったんだよな。ってか、美華も華澄さんも、なんで笑いをこらえてるんだ?まぁこれはこれで、礼央なりに食後の俺、美華、華澄さん3人の話が楽になるように気を使ってるのかもしれないな。



 こうして夕食の団らんは楽しく過ぎていった。ちなみに山盛りの牡蠣フライは、全部平らげると翌日以降さらに量が増えて提供される可能性が高いという真理さんの意見があったので、ほどほどに胃袋におさめ、翌日に余ったものを食べるからとアシスタントさんに頭を下げました。結局はアシスタントさん達で食べるからいいって言ってくれたんだけどね。

 





 

 



 



 

ミノタウロス種をタウロス種に変更しました 23/08/14



夏バテと拒食症から回復できたので当分週一ペースで更新する予定です。ポジティブな感想をいただければモチベがあがるのでよろしくお願いします。

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