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(幕間)導かれし現代チートたち(礼央 視点)

 中学3年生になったオレと真理は当時、市民総合プールに来ていた。このプールは幾度と国際大会に使われているだけあって観客席や敷地面積がかなり広い施設であった。プール内では中総体の予選が行われていたが、ほとんどの中学校は基本、サッカーや野球などの団体競技の応援を優先していたため、観客席はまばらであった。オレは当時、明が所属する水泳部の部員と共におり、真理は奏風と共に華澄が所属する水泳部の部員と共にいた。



 オレと真理が明たちの身辺調査をしてから、およそ2年の月日が経過していた。まず、真理の仲介で奏風と顔見知りになることができた。奏風の祖父母には金沢グループの創業以来、かなりお世話になっているのでその話題を振ってみると、奏風のほうから明についての話題を振ってきた。身辺調査の内容通り、近所で有名な「星野食堂」にも昔から食品を卸しているとのことだった。オレと明は仲がいいので、今度星野食堂でメシでも、という流れで星野食堂に行き、明と奏風、そして明の祖父母も交え話がはずみ、明と奏風も知り合い同士となった。しかし、この頃にはすでに明と美華さんは両想いでつき合っており、真理経由で奏風にもそれとなく伝えていたのだが、その日は華澄さんの話題にふれることはなかった。


 後日、奏風から「大事な話がある」とメールがきたので指定の場所に赴くと、華澄さんを明に会わせてあげたいという相談だった。理由は華澄さんが幼稚園児のころ、おじいちゃんに連れられて星野食堂に遊びに行き、そこで知り合った明と美華さんと一緒に公園に遊びに行った先に幼稚園のいじめっ子とその兄達に遭遇したこと、明と美華さんが体を張って彼らと戦ってくれたこと、そのあとに明の祖父母に太りにくい「発酵小豆でつくったおはぎ」をご馳走になり、当時太っていた華澄さんがダイエットを始めるきっかけとなったこと、すでに亡くなっている華澄さんのお母さんが娘のために奏風の祖父母の店に国産小豆を買いに来たのがきっかけで、たまたま遊びに来ていた奏風と知り合ったこと、のちに明と同じようにスイミングスクールに通うようになったこと、そして明と美華さんのことは知っているが、それでも華澄さんを明と再会させてあげたいとのことだった。確認を込めて、なぜ奏風はそこまでこだわるのか、奏風は華澄さんのことを好きなのかと問い詰めたら、初恋の相手だった華澄さんのお母さんの最期の願いだったので陰ながら見守っていることを打ち明けてくれた。マジだったのかあの調査結果。真理側の調査員、マジで優秀、っていうか怖え・・・



 というわけで、オレと奏風、そして真理を交えて色々検討した結果、中総体の水泳の予選で再会させてみましょう、てことになった。これで明が覚えていない、もしくは過去を思い出したとしても反応が薄ければ華澄さんも奏風も過去の呪縛から解放されるだろうと思っていたのだが、(お、おい、明、美華さんという誰もが羨む才色兼備の幼馴染の超絶ヒロインポジの彼女がいながら何ていう表情をしてるんだ!?明らかに一目見て一瞬で恋に落ちてしまいましたって顔してるじゃねぇか!?しかも、再起動したあとに「君、もしかして小さい頃に一緒に公園に行ったり、そのあとに『発酵小豆のおはぎ』を一緒に食べた子じゃない?」とかって言い出しやがって。そういや明は『瞬間映像記憶保持者』というチート野郎だった。名前は憶えてなくても顔は憶えている可能性はあったか。これ、ヘタすると脈あるぞ。奏風も真理も華澄さんも豆鉄砲を食らったような顔してるし。幸いなのはこの場に美華さんがいな・・あ、美華さんも来てた・・ってか、いま来たか・・タイミングよす、じゃなかった悪すぎ!!!しかも、「もしかしてかすみちゃん?」とか言い出すし。あのとき華澄さんが「ええーーー!!もしかしてあきらくんとみかちゃん!???」って大声出さなかったら、相当やばかったぞおまえ!!!)・・・今思えば、美華さんは華澄さんを以前から警戒していたフシがあったから、ついさっきのように明が華澄さんに再会したときの表情、もしくは恋に落ちた男の子が他の女の子に見せる素振りを見たことがあったのかもしれないな。でも、明そっちのけで想定以上に美華さんと華澄さんが2人で盛り上がって仲良くなっちゃってるしメアドまで交換し始めて。ただ、それと同時に明と美華が交際してるのも知ってしまったしな。できれば6人で同じ高校に行きたかったんだけど、華澄さんは女子高へ行ってしまったか。



 高校に進学し、高校生活初の夏休みをひかえたある日、美華さんから相談があるとのメールが来た。珍しいな、もしかして明と恋人同士になってみたあとに精神的な余裕ができて、超金持ちの息子にしてサッカー部の期待の1年でイケメン陽キャのオレの魅力に気づいてしまったか?明とのすれ違いをダシにしてオレと蜜月の仲になりたいという非常に遠回しのアプローチかも。そんなことをしたら全力で明と華澄さんの仲を取り持つけどね。念のため会話を録音しておいたほうがいいかな。ってなわけで真理には事情を説明し、美華さんと2人きりで会うことになったのだが、結論からいうと、今まで死にもの狂いで努力してきた華澄さんには彼女と対等の立場になってもらったうえで明に告白してもらいたいとのことだった。理由を聞くと、明自身は覚えていないかもしれないし、中3の時に再会したときに思い出した可能性もあるが、明の初恋は華澄さんで、しかもお互いに一目惚れのようだったという様子を美華さんは鮮明に覚えていること、小5のときにお母さん経由で華澄さんの情報を仕入れており、華澄さんの家庭環境や明と同じタイミングでスイミングスクールに通い始めたこと、痩せるために地獄のようなトレーニングを積んでいることを教えてもらっていたので、恋敵とはいえ、このままでは華澄さんがあまりにも不憫すぎるから、自分と明が別れるのを覚悟の上で華澄さんに告白する機会を作ってあげたいとのことだった。


 美華さんすまん、あんたのことを誤解してた。華澄さんに負けず劣らずいい女じゃねぇか。美華さんに万が一のことがあったら真理が認める範囲で全力で支えるからそれで許してくれ。というわけでで高1の夏休みを機に6人で遊ぶ機会が増えたんだよな。ま、皆それぞれ部活が忙しくて6人全員がそろうことは珍しかったんだけどね。その後、好きな音楽の話題になり、オレが中学時代からギターをかじってることと、真理と美華さんは幼少の頃からピアノを練習してること、奏風は家でドラムを叩きまくったり一人カラオケでロック系ばかり歌ってストレスを発散しているのと、華澄さんは歌がうますぎて女子高の合唱部でソロパートを頼まれてると言っていたので思い出にコピーバンドを作ろうかって話になったんだよな。動画にアップしたり、高2のときの文化祭のときには華澄さんがボーカルの助っ人として来てくれたり、そのときに超大物ゲストが赤や白い薔薇の雨のあとに自衛隊のヘリの護衛を引き連れて、ドローンに支えられた透明のステージの上でピアノを弾きながら校庭に降りてきたときはさすがにビビったわ。グループで遊ぶのも楽しかったけど、美華さん、明を独占したいのを相当我慢してたよな。さすがに華澄さんも気づくよな。この時にはすでに2人は親友同士、共に他人の心の痛みを理解できる非の打ち所がない女性なのに、なにゆえ同じ時期、同じ地域に生を受け、同じ男性を愛してしまったのだろうか?例えていえば、一子相伝の拳法をどっちに継承させようかと迷っているうちに、2人の継承候補が、歴代の継承者のほとんどが成し得ることができなかった『究極奥義』を習得してしまった状況だよね。



 ってなわけで、明以外の4人で華澄さんを説得し、彼女の背中を押して高3になるタイミングに合わせてうちらの高校へと転入、偶然にも6人が同じクラスになり(絶対にこのことを小耳に挟んだ俺たち6人の親族の権力が働いたと思う)、新学期が落ち着いた4月下旬に明に状況を説明し、改めてこの2人に後日にでも心境を伝えてほしいと伝えている最中に異世界に転送されたんだけど理解が追い付かないよな。



 でもオレと真理はまだマシか。明、ここは多夫多妻制の世界だから「第3の選択肢」も元居た世界よりも気兼ねなくいけるんじゃないのか?そして奏風の恋の行方も。ま、とりあえずみんな頑張れ。でも頑張りすぎるなよ。身心が持たなくなるからな。特におまえ達の場合はな。



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