(幕間)このままだとヤバイよヤバイよ~(美華 視点)
小学5年生への進級を控え、ようやく明君と同じクラスになれることに浮かれていた美華であったが、お母さんが告げたとある一言で状況が一変してしまった。「スパルタで有名なスイミングスクールに、美華と同い年の恐ろしい女の子がいる」と。わたしは幼い頃からずっと好きである明君と結婚できれば他はどうでもいいと思っているのだが、お母さんが「恐ろしい女の子」とまで表現したのに興味を持ったので詳しく聞いてみると、今まで頭の片隅に追いやっていた唯一の不安要素を呼び覚ますこととなった。「名前は清川 華澄。ダイエットのため小学1年生のころから水泳をはじめ、さらにはアーティスティックスイミングの特訓も追加し、すでにダイエットには成功しているものの、現在もそれらを続けているとのこと。ママ友経由でそれを耳にし、アーティスティックスイミングに興味があったので見学しにいったら美華に匹敵するくらいの美人な女の子であったのと、疲労がたまりボロボロになった身体にさらに鞭を打ち、綺麗な顔を苦しみで歪めながら拷問に近い訓練を何時間も受けていた」とのことだった。
『かすみ』という名前に加え、明君と同じ時期にスイミングを始めていること、きっかけがダイエットで、それを達成している今でも訓練を続けていること。まさか、あのときのかすみちゃんでは― 明君がわたしにも見せたことがない「恋に落ちた少年のような表情」を唯一浮かべさせた女の子では― 願わくば別人であってほしかったのだが、お母さんに無理をいって頼み込み見学に連れて行ってもらった。あぁ、間違いない。あの時の女の子だ。それに加え、あんなにスリムになって美人に成長しているのにまだ拷問のようなトレーニングを毎日積んでいるなんて・・・お母さんに事情を説明し、わたしもスイミングスクールに通いたいことを伝えたがあっさり断られた。「かすみちゃんと同じ土俵で争っちゃダメ。かすみちゃんには水に愛される素質があるけど、美華には日差しや大気に愛される素質がある。だからそっちを伸ばしたほうがいい」といわれ、新体操を勧めてきた。さすがお母さん、わたしのことをよく見てる。実際、アーティスティックスイミングより新体操のほうがずっと興味あったし。
しかしかすみちゃんの練習、ほんとすごかったな。見ててわたしが泣きそうになってしまった。しかも小学2年生の時にお母さんを亡くされているなんて。それに比べ、わたしはどれだけ恵まれているんだろう。幼い頃からスリムで蝶よ花よともてはやされ、お母さんや大好きな明君がそばにいて。でも昭君はわたしたくない。かすみちゃんに負けないくらい努力して、誰からみても明君によりふさわしい女性にならないと意味がない!
こうして1人の無自覚チート野郎のために、修羅の道へ足を踏み込む犠牲者がまた1人増えたのであった




