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【第1章】                                     リアルチート御一行様、ようこそ異世界へ(実は並行世界)

 4月の終わりにさしかかった夕方の時間帯、つい先ほどまで、とあるファミレスで真面目に話し合いをしていた同じクラスの高校三年生6人(男子3人女子3人)は、突然テーブルの床下を中心として大きな円形の魔方陣が展開され、虹色の壁に閉じこめられてしまった。壁は虹色を帯びた反透明な色をしており、外側は時が止まっているようであるようであった。



 「とりあえず落ち着いて耳を傾けていただけますでしょうか。わたくしはこれからあなたたたちをお送りする世界を担当する女神エリスといいます。エレス、セリス、セレスなどと呼んでいただいてもかまいません」



 彼らはそれぞれに慌ててはいたが、頭上からゆっくりと誠意をもって語りかけてくる声質は、女神と名乗るだけあって想像をはるかに超える慈愛ややさしさに満ちており、非常にやばそうな状況下であるにもかかわらず意外にも早く六人は落ち着きを取り戻すことができた。


 「ありがとうございます。手短にお伝えはしますが、今からあなたたちを別世界にお送りします。あちらの世界には7人の方々が待機していますので、まずは現地の方々の案内に従っていただければと思います。お送りするのに体感で10分ほど時間がかかりますので、そのまま座ってお待ちください。それでは快適な異世界スローライフを」


 彼女がそう言い終えると、壁の色から徐々に透明さが失われ虹色の色彩に変化していった。壁はコンパクトディスクの読み取り面の虹彩色が下から上に向かって直線状に揺らめきながら流れており、耳にグラスハープから発せられる波紋のような広がりをする心地よい複数の音色が円柱の中で共鳴しあい、輪唱歌に包まれているかのように響き渡った。



 「意外と案内がよかったな。これからファーストクラスに乗ってリゾート地に行くみたいだな。リラックス面であれば想像以上だな」


 まず最初に、まとめ役のような男子が口を開いた。彼の名は金沢 礼央かなざわれお、今回の重要な話し合いの発起人でありクラスでのまとめ役でもある。超金持ちの家の環境で育ち、サッカー部のエースストライカーで成績も上位ではあるのだが、誰とでも気軽に接する裏表のない性格と、たまにハメををはずしてしまいちょくちょく何かやらかし笑いの的になってしまう傾向からか、クラス内だけでなく校内外でもかなりの人気者である。実家の国内屈指の企業を継ぐために帝王学を意識したりとか、高校総体に向けて部活動に集中してたりとか、とにかく多忙すぎる日常を過ごしているようである。恋愛に関しては浮いた話は全然なく、むしろ多くの女子からの告白を断るのに頭を悩ませているくらいである。


 「そうですね。話し合いを続ける状況ではなくなりましたね。これが異世界転移というやつですか。色々と気になるところですが、まずは生き残れるかどうかが最優先事項。メドがついたら帰還できるかどうかの情報収集ですね」


 こう口にしたのは興味のないこと以外には比較的口数が控えめで低身長の無感情ヒロイン系のようなショートボブ美少女、白川 真理しらかわまりである。胸はやや小さめの美乳型で、趣味がもふもふ系、BLもの、百合系、逆ハーレム系、コスプレとその衣装作り、ゲーム全般など、一風変わった趣味を数多くもっているのだが、頭脳は明晰でシュミレーションゲーム好きでもあるため分析力も的確であり、さらにおばあちゃん譲りの占いのスキルや神秘学系の知識力にもかなり精通しているため、意外にも同年代からの恋愛相談が多々ある。ちなみに両親は内科医ではあるのだが、本人は今のところ獣医になりたいと思っている。最近はまっているのは、彼女の趣味を全部つき込んだかのようなアニメ【婚約破棄されたもふもふランドのとり族令嬢スワンと呪われた『十二干支えと』族のイケメン貴族達~それイけ女神モモエナと十二聖獣士たち~】である。


 「ともかく転移先とやらで状況判断が先決か。さっきの女神様の説明のおかげで転送直後に即対応する必要もなくなったのは幸いだった。警戒を怠るつもりはないが、すでに転移という魔法を見せられているから、隷属魔法とか・・いずれにしてもまな板の上の鯉か」


 そういい腕組をして両目を閉じたのはバスケ部のエース兼キャプテンの空野 奏多そらのかなたである。6人の中で最も背が高く、180cm強ほどあり体格もがっしりしているのだが、髪型はやや長めのサラサラヘアーであり、中性的な顔立ちで、意外と女装が似合いそうな美丈夫である。趣味が乗り物系などである。早く大人になりたい多感な17歳の男子。家庭は良くも悪くも特筆すべき点はない。


 「これ、どう見ても俺たちのうち何人かが、下手すると6人全員が一か所に集まるのを狙ってやった可能性があるよね。一か所に集まったのは偶然なのか、そうなるように誘導されたのかは考えすぎかもしれないけど。現地の人は何か知ってるのかな。じっちゃんばっちゃんが心配だ」


 複雑な表情をするのは、このグループの中では陰に埋もれがちな星野 ほしのあきらである。今集まっている6名は明らかに現代チート集団なのだが、無自覚なのは彼だけである。というか、それぞれ方向性に違いはあるものの、能力をデータベース化できるとしたら彼が1位の可能性がある。顔は彼らと比べられると際立った特徴はないのだが、客観的に見てもけっこう整っている部類に入っている。また、彼は幼いころに両親を事故で亡くして以来、祖父母が営む定食屋兼弁当屋(営業時は常時、祖父母と従業員4名で店を回している。実は従業員の中には祖父母の料理にほれ込んで弟子入りのようなかたちで働いている人もいる)で3人で生活をしている。料理の練習は小学2年生から始めだし、祖父母の教育方針で小学1年生から現在までスイミングスクールに通っている。好きな食べ物は和食系、特に魚系統で、一度見た魚の名前やさばき方の方法は一回で覚えられるほど。高校入学以降から時間があるときには手伝いをし始める。はたから見れば薄利多売の清掃が隅々まで行き届いている大衆食堂のような店だが、食材はかなり厳選されているのを顔利きなどで安く仕入れ、日替わり定食(弁当)やおまかせ定食でたまに提供される世界各国の料理の長所がふんだんに盛り込まれた祖父母の作った創作料理の味が、有名な高級レストランの追従を許さないレベルだったりする。それゆえ、店はかなり繁盛しているので、一般人からプロ料理人まで遠くから足を運んでくる客が後を絶たない。彼以外の5名は遅かれ早かれ彼らの高すぎる料理の技術に気づき絶句しており、また、彼自身の指先の器用さ、スピードの異次元的な高さ、また、それを可能にする瞬間映像記憶能力、味覚の異常な鋭さが祖父母の料理のクオリティーにひっ迫する料理の再現を可能としている。それゆえに、常に人外といってもいいほどの祖父母がそばにいる環境に浸りすぎてしまった結果、うまく自己評価ができない結果となってしまった。常に驕らず謙虚であり続け、本来の正義感の強さや優しさ、共感力などが相まって無意識のうちに多くの人々をひきつける魅力を持っているがために、普段は全員多忙の中、急遽6名が一同に集うという、放課後以降にはまずありえない事態を引き起こしてしまったのだが。



 「はぁ。これからどうなっちゃうんだろうね。どんなことが起こってもみんなで一緒に戻って来ようね」


 幼少期の出会いから長い年月を経て、中学二年生の夏休みの花火大会のときに、星野 明から告白を受け、ようやく両想いで恋人同士になった天音 美香あまねみかがそう言い切ると、腹をくくったかのように目の前のジュースを一気に飲み干した。体型はやや細目ではあるものの、胸は中サイズ。それでも新体操のリボンの演技では桜吹雪の舞う空間の中で踊る風の精霊のような印象を与えるので、まるで彼女以外の周辺の時間が止まってしまったのではないかと錯覚してしまうほど、観衆は男女問わず息を飲んで見入ってしまい、視覚を超えて魂に直接記憶を残していくような印象を与えるほどである。お互いの家は同じ住所の区画は一緒ではあったものの距離が離れており、幼稚園と互いの最も近い公園が一緒であったのが幸いし、常につかず離れずの関係が続いた末の恋の成就であった。家は音楽家一家であり、父は世界的に有名なヴァイオリン奏者で不在が多く、母はピアノ奏者で間接的に音楽の仕事をしていたが、美香の妊娠、出産を機に家事と子育てに専念することとなる。幼少の頃からの英才教育が功を奏し、絶対音感を習得しピアノは元より、ヴァイオリンとハープも一般人には尊敬されるレベル以上の技術を習得している。カラオケではどんなジャンルでも卒なく歌いこなし、さらには小学5年生の頃からは新体操教室に通いはじめ、中学、高校も新体操をやり続けている。性格は積極的ですごく明るい性格ではあるが決して攻撃的で頑固な性格ではなく、友達のためならば勇気を振り絞って自分の命を投げうってでもでも守り抜く意思の強さも持ち合わせている。西洋の芸術文化系統に興味があるためか、好きな食べ物が洋菓子というかわいい一面も持っている。ただし外見で人や物を判断しないという性格も幼少のころから持ち合わせている。


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 無言で事の成り行きを見守る清川 華澄きよかわかすみは真剣な面持ちであり、普段は柔らかな笑顔を浮かべている彼女ではあったが、話し合いの発端になった張本人だったのに加え、訳の分からない事態が発生しまったのである。無理はない。彼女は父と義母と義妹の4人家族で家族関係は非常に良好である。理由は彼女は小学1年生のころからスイミングスクール(星野 明とは別のところ)に通い始め、さらには小学5年生より『本格的に』アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)も習い始める。現在の義母は彼女のスイミングのコーチだった女性で子持ちのバツ1。元体育大のアーティスティックスイミングの選抜選手であった。現在の義妹とは両親の再婚前から仲が良く、これらの状況がきっかけで現両親が頻繁に顔を合わせるようになり、華澄が中学生になったのを機に再婚するにいたったのである。また義母の影響によりスポーツ学や栄養学などにも興味を持つ。体形は適度な弾力のある綺麗な肉付きをしており、全体的になだらかな曲線を描くような綺麗なフォルムをしている。好きな食べ物はおはぎ。果物やお刺身など素材の味わいをメインにしているものや、シナジー効果(相乗効果。納豆プラスキムチなど)をはじめとした栄養学に基づいた料理を好む。義妹とは百合同士なのではと誤解してしまうくらい、しょちゅう抱き合ってスキンシップをはかっている(正確には義妹が隙を見て抱きついてきて、華澄がそれに愛情を込めて答えているのだが)。華澄以外の5人は高校から一緒になり、華澄は高校1,2年は別の女子高。彼らの高校3年の始業式のときに今の高校に転入してくる。白鳥グッズを好んでつけているためか、意外にも白川 真理とはアニメ【婚約破棄されたもふもふランドの~】の話で盛り上がっている。また、歌声に関してはしっとり系の歌を歌う際には深い慈愛の泉の中で清められ癒される印象を与えるため、初めて聞く人、特に失恋の傷が癒えてない人や大切な人を失った経験のある人はハンカチを用意しておいたほうがベストである。周りの植物の急成長に気をつけなければいけないとふと思ってしまうほどである。


 総括すると彼らは現時点でも十分チート集団で、異世界転生にしろ若返り、リープなどはそれを望む人にしてあげればいいのにね。


 永かったのか短かったのか時間の流れが把握できないままシンフォニックな空間は霞が明けるようにだんだんと静寂に近づき、上方からオーロラが溶けていくように消えてゆき、そこには予想だにしなかった光景が広がっていたので俺たち全員、再起動するまでかなりの時間を要したと思う


 「リアルチート御一行様、ようこそ異世界へ!」



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