異世界のスマホ、超半端ないって!③
「それでは続きまして、『端末』としてのスマホの使い方を説明いたします。こちらに関してはガイア界のスマホと多くの部分が共通しています。魔法や魔素が存在しないガイア界において、人間の技術力のみで、しかも大量生産でこれだけのものを作り上げるとは未だに信じられません」
「レイナさん、質問なのですが、なぜ、この『端末』のことを俺たちの住むガイア界、しかも日本人が『スマートフォン』を略式で使うときの『スマホ』という名前と同じなのでしょうか」
普段は口数の少ない奏風がそう質問した。普段はあまりしゃべらない人がたまに何かを話すとき、ついつい真剣に耳を傾けてしまうよね。これに関しては俺も少し考えたんだけど、そもそも異世界人の言語を日本語として見聞きし理解できるのは、巷でいう異世界転移者専用のスキル『異世界言語理解』みたいなものが特典としてついてきてるのではないかと思い、質問を後回しにしていたところもあったんだけどね。でもこれは無駄な質問かもしれないけど、現地の言葉が自動翻訳されている仕組みに関して何かヒントみたいなものがわかるかもしれない。ナイス奏風。
「非常にいい質問ですねぇ~。授業の本筋から離れすぎない範囲で、要点だけ説明しましょう。『スマホ』と呼ばれている理由は、今からおよそ300年前、日本から転移してきた1組のカップルを中心としたパーティーが、とある特殊ダンジョンを攻略した際に発見したのがきっかけで日本語の愛称で呼ばれるようになりました。正式名称はゴッドオブクリエイターレアアイテム『女教皇の律法の書、トーラの書』といいます。ちなみにゴッドオブクリエイターは、スキルやアイテムの最高ランクのゴッドレアの略省【GR】との親和性を考慮し、【CGR】が略称となります。発見されたトーラそのものは女神エレナの像がある部屋に安置されているのですが、見た目はスマホを巨大化させたものを分厚くさせて縦に直置きしているだけですし、トーラの権能は独り占めできるものでもないので、無理して時間を作ってまで見に行くものでもないですよ。トーラの他に確認されている【CGR】アイテムは『女帝の生命の王笏、ライフセプター』と呼ばれています。これはダンジョンを生み出すためのアイテムなのですが、使うためには莫大なコストがかかるため、今は気にしなくても大丈夫です。また、今から5、60年くらい前に日本から転移してきた1人の天才科学者がおりまして、この方の知識は、ガイア界の日本以外からの転移者たちと比較にならないほど、エリス界の技術の発展に多大な功績を残したといわれています。今回、みなさんが歓迎されているのは、通常は1人か2人の転移、それも予告なしで突然やってくるケースがほとんど今回はエリス様から直々に依頼があったのと、日本出身の方が6人も転移してくるのに加え、6人全員がスマホをもたらしてくださったお二方の転移時の基本ステータスを大幅に上回るとなれば、関係者の誰しもが興奮を抑えきれない状況までなってしまったんです。しかも2年後はちょうどエリス歴300年、この世界にスマホがもたらされたと同時に、女神エリス様が人類史史上初めて人類にお声をかけられ、地上に降臨した年がエリス歴元年となってますので、もしみなさんがその時までエリス界に残っていただけるのであれば、エリス歴300年のアニバーサリー祭が想像以上のものになるでしょう。すいません。わたくし自身が脱線してしまいましたね。コホン、続けて説明いたします」
想定外の情報も聞き出せてラッキーだと思ったのだが、同時に教師って大変な職業だなぁとも思った。本来はスケジュール通りに別の授業で教えるつもりであったろうに。俺たちを含め、男の子は好奇心が強い傾向にあると個人的に思うから、スケジュールを乱される質問とか、義務教育課程に関係がない質問とか、奥に突っ込むような質問を敬遠する『超マイペース型の教師』、悪い言い方をすれば『教科書の決められたページまで授業をし、何が何でもノルマを達成する』ということに重きを置きすぎる教師だったら嫌われるかもしれないと思った。ま、レイナさんをはじめとしたエリス界の関係者たちが俺たちに対して好意的な理由をより深く確認できたし、専属の講師もついてるし、分からないことはメモにでも書いておいて、そういやペンとかノートがなかったな。あとで聞いておこう。それと俺たちの不明点、疑問点とかを仲間内で共有しておくのもいいな。
「まず、登録されている相手に限りますが、離れている相手との会話や文字でのコミュニケーション、静止画や動画の撮影、音声の記録、時計にアラーム機能、ここまでよろしいでしょうか」
俺たち一同うなずく。
「それではスマホに、そうそう、タブレットという言い方は今後、授業中だけ省略しますね。それではスマホに向かって『オン』と口にする、もしくは頭の中でイメージしてみてください。できましたか~」
「ありがとうございます。まず、今のスマホのオンの状態は、皆さまがガイア界でお使いになっていたスマホがベースとなっています。エリス界での通話や文字でのコミュニケーションは、ガイア界でご利用されてたそれぞれの専用アプリに統合されてますので、ほとんど違和感なく使うことができると思います。ただし、ガイア界の時間は止まってますので現在は利用できなくなってますが、みなさんがお互いに連絡を取り合う場合、引き続きその電話番号やメールアドレスは利用できますので安心してくださいね。ちなみにわたくしや講師陣、アシスタントさんたちの電話番号はすでに登録済みです。わたしたちのスマホにもみなさんの連絡先を登録させていただきましたが、私用でかけることはないので安心してくださいね。また、みなさんのスマホの横についていたボタン類は、エリス界のスマホの横にタッチパネル式でついてますので、これも声掛けやイメージ、指でタップ、スライドなどでイメージしながら動かしていただければ大丈夫です。ここまで何か質問や不明点はないでしょうか?」
「特にないようなのでこのまま続けますね。あと、分からないことがあったら、放課後から夜の10時までの間に各担当の講師陣にスマホで連絡してくださいね~。もちろん、緊急時には時間外でも、誰でも構いませんから連絡をお願いします。続きまして、動画の閲覧についてご説明いたします。まず、エリス界の動画は日本にいたときと同じように見れます。街の中の様子とか冒険者の活動などを見てもらえれば、ガイア人から見て露出度が高い方がけっこういるのがわかります。ただし、外に出たり魔素をたっぷり含んだモンスターの肉などを食べたりハーレムを作るのは、みなさんが魔素100%に慣れ、パワーレベリングでHPに余裕ができるまで我慢してください。これだけはお願いします。そうそう、有料コンテンツも利用できますし、もしそれが学習に必要なコンテンツということであればのちほど料金分が補填されます。また、ガイア界のホームページや動画などは、みなさんが召喚される直前のものであれば見れるらしいです。また、ガイア界のスマホの画面の中の絵や物を動かして遊ぶゲームに関しては、個人やその場にいるみなさんだけで遊べるものですでに購入したものなどは専用のアプリに入れられているそうです、これはわたしにはよく分からないのですが、ガイア界でスマホやそれに似たもので、有料コンテンツとして買えるゲームというものはエリス界の通貨でも購入ができるそうです。また、異世界転移者特典として、スマホがでている状態で「キーボード」、「マウス」、「コントローラー」と唱えるかイメージすればそれが出てくるそうです」
「マジか!?」「え、ほんとに!」「やったあああああ!」
これはうれしいサプライズである。暇つぶしとして動画閲覧やTVゲーム類は現代の日本の若者にとっては欠かせないものである。俺個人としてはまだ閲覧していない料理人のお薦め料理法とか、未知の食材の料理法とかまだまだ学ぶことが多くて心残りであったし。
「コホン、喜んでいるところ申し訳ないのですが、注意点だけ申し上げます。ガイア界では『のぞき見防止』の不思議な布が売っているらしいのですが、エリス界のスマホは基本設定では本人以外見れないようになってます。閲覧可能にする時には、みなさん6人の間では特に問題はないのですが、わたくしたちエリス界の人間は、たとえ皆さんが許可していただいたとしても見ることができませんし音楽を聴くこともできません。ステータス、趣味、特技、好きなもの、嫌いなものなど、教育に必要なもの以外の個人情報も見れません。自動的に『モザイク』と名付けられたものや『ピー』という音声が自動的に入ったりします。一般人との会話はさらに制限がかかり、当分の間、ガイア界特有の文化や技術のことを話した場合、エリス様の能力で会話に支障をきたさない文言に自動的に塗り替えられますし、当分の間、ガイア界から来たことも伝えることができません。あと、これはお願いなのですが、わたくしたちはガイア界の文化やトレンドに直接ふれることはできないのですが、みなさんが動画などを見て音楽とか宇宙を舞台とした演劇とか、漫画のキャラクターが着るような服装とか、再現してくれたものであればそれに触れることが可能なんです。ちなみに『科学』という、自然現象や法則を精密な範囲で模倣、利用し、日常生活や道具の部品とかそれを作るのに役立てる技術をかみ砕いた表現で伝えてくれると助かる人も中にはいるのですが、みなさんがまだ高校生であるというのと、今から5,60年前に来た日本人の天才科学者はガイア歴、西暦のことですね、その視点からみると、みなさんが召喚されたときと20年ぐらいしか違わないらしいので、しつこく聞かれることはないと思います、相手がしつこい時には大人の権力を使って排除しますので心配しないでくださいね。かなり長くなってしまいましたが、わたしたちのお願いは余裕ができたときでかまいませんので、とりあえず頭の片隅に入れてもらえればいいかなぁ~って思います。最後は余談ばっかりになっちゃいましたが、これにて異世界転移後初のスマホの授業を終わります」
俺たちみんなでレイナさんに拍手を送った。こうして教師の立場を考えながら授業をすると、良くも悪くも一癖二癖もある複数人を相手に同時に授業するのはホント難しいよね。レイナさん、お疲れ様でした。時間に余裕ができたら何か作ってご馳走するね!




