シンクロ(アーティスティックスイミングデュエット)のシンクロ率がやばすぎる④
「よくわかんないけど、華澄ちゃんと初めて会ったとき、他人ではないような気がしてたんだけど、そうかぁ、わたしはガイア界で亡くなった華澄ちゃんのお母さんの生まれ変わりだったんだねぇ~。今夜はわたしと華澄ちゃんら4人でおねんねしたかったんだけど、それは別の機会にして、今夜は華澄ちゃんと2人だけでおねんねしょ。どぉ、華澄ちゃん」
「喜んで!」
「おっし。それじゃあ次は、美華さんと真理さんに見てもらいたい新体操のリボンの演技があるから、ステージのの準備と再度プールサイドの中央まで移動をお願いねぇ~!」
レイナさんがジャグジーを出て、プールの中央まで泳ぎ始めると機械音がプール内から聞こえはじめ、プール中央に1つのステージが浮き上がってきた。俺たちはすでに先ほどの場所へと移動し、アシスタントの1人がレイナさんがステージの上に立ったのを確認し終えるのと同時に新体操のリボン2本をレイナさんに向けて投擲した。
「それでは新体操の演技をご覧ください。演技曲は、ガイア界のドビュッシー作曲の『アラベスク』です」
そう宣言すると、どこからともなく音楽が流れ始め、レイナさんがリボンを両手に踊り始めた。『アラベスク』はピアノソロの曲で、アラブ様式のデザインに頻繁にみられる唐草模様をイメージした曲である。ピアノソロ曲であるのと時間帯がすでに夜であるのとが相まって、まるで数本の月見草が一か所から上に伸びて唐草模様を形成していくようなイメージを想起させ、レイナさんの雰囲気も歓迎会時の破天荒ぶりと打って変わって、水面で戯れる月の妖精のように曲に合わせて踊っていた。水をモチーフとした演技ではあるが、これに関しては華澄さんより美華や真理さんに合っているような気がするな。今まで水に関しては華澄さんが絶対的ともいえる親和性のようなものを持っていると思っていたのだが、こういう芸術性のようなものも存在するのか。そう意味合いを含めてのレイナさんから美華と真理さんへのメッセージかもしれないな。そう思いながらレイナさんの演技に見入っていた。
レイナさんの演技が終わると同時に拍手が沸き起こった。拍手がおさまったあとレイナさんがリボンを投げ返し、プールサイドまで泳いで戻ってきた。
「はぁ、はぁ。それじゃあ明日の予定を説明するね。みんな一緒に授業を受けたいということなので、朝の8時に担当者が起こしに行きます。今日だけは希望者に『スリープ(すいみん)』の魔法をかけるのと、バフがついているベッドなので疲れや眠気を翌日に持ち越すことはないと思います。起きない場合は『アウェイク(目覚め)」の魔法で、起きなければ無理にでも起こしてほしいとのことなので、今夜だけは施錠しないようお願いします。あと、プールから上がったら今日だけは水着着用の混浴温泉で体を洗ってください。お風呂上りにはお約束の瓶入りのコーヒー牛乳とフルーツミックス牛乳、その他ドリンク、ビールの他にノーアルコールのビールも用意してあります。それじゃあ解散!」
その後、男性陣はプールで適度に体を動かしたり泳いだりし、女性陣は、レイナさんを取り巻き、黒いタブレットのようなものを持ち、それを華澄さんらと見つめて色々話し合ったあとにそれぞれ泳いだり踊ったり混浴温泉に向かい始めた。それにしても講師陣といいアシスタントさんたちといい、少なくともスイミングスクールの選抜クラス以上のの泳力と技術は持ってるんだな。俺の担当者のアスタさんの指摘やアドバイスも的確だし、華澄さんもフィーネさんから色々教わっているようだし。なお、先ほどレイナさんの持っていたものはタブレットに近いもののようで、明日まとめて説明を受けたほうがいいとのことだった。
急激な環境の変化で気づかないところで疲れが溜まっているかもしれないということで、プールでの運動は適度におさえて俺たち男性陣3人は男性講師陣3人と一緒に水着着用の混浴温泉へと向かった。プールを見渡すと、中に残っているのはレイナさんと華澄さんとフィーネさんのみで、レイナさんと華澄さんはまるで水を得た魚、もしくはイルカの親子のように元気にバタフライで泳いでおり、ディーネさんがプールの中央で両手を上げ、何かを両手で持ち上げて立ち泳ぎの練習をしているようだった。両手を上げての立ち泳ぎだけでもかなりつらいから一瞬おもりの重さが気になったのではあるが、それにしてもレイナさんと華澄さん、休憩なしで少なくとも1時間以上バタフライで泳いでないか?しかも疲れを感じさせず、泳げば泳ぐほど活力が増してきているように見えるのだが。ま、疲れ果てても華澄さんは今夜、レイナさんと一緒に寝るだろうから寝坊はしないだろうし、ま、いいか。
温泉やサウナでひと汗かいたあとに俺たちが案内された場所は、今まで泳いでいたプールの真西にある3階建てのアパートのような建物の2階だった。1階は食堂とトレーニングルームやレクリエーションルームとなっており、2、3階がそれぞれ個室になっており、今後はここに宿泊してほしいとのことだった。ちなみにこの建物の北と南にも同じタイプの宿営所がいくつかあり、今日使われなかった女性専用のプールの東側にも同じタイプの宿営所がいくつもあった。部屋の中のつくりはかなり広いフローリングの個室で、日本風に説明すると約16畳ほどの広さだと教えてもらった。また、希望があれば和室にしたり2部屋に分割できるとのこと。ほとんどの建物の部屋は、恋人同士が一晩なに不自由なく過ごせるというコンセプトで作られており、風呂場やベッドもかなり大きめであり、おまけに一人暮らしサイズのキッチンや冷蔵庫のようなものまでもついてあった。「それにしても部屋が広すぎるのではないか」と質問したら、「今日はまだ設置されてませんが、何のためのスペースなのかは時期に分かります」とだけ答えた。そのあと、明日に向けて必要なものを確認し、アスタさんに『スリープ』の魔法をかけてもらい眠りにつくのだった。




